第783話 消し飛ばしてあげるわ。的なお話

ズンズンと歩を進めるアカネ。

俺を追い抜く時に僅かに見えた横顔は感情の色が抜け落ちた完全なる真顔だった。

声も平坦だったけど、雰囲気は間違いなく怒ってる。

ちょっと怖い。


〜アカネ視点〜


本当にもう、いい加減にして欲しい。

これで何回目よ?

今度こそ、ジェイル家との縁を断ち切ってやる!


「ジェイル家に仕えてしまった自分の運命を恨みなさい。」

「ユーーースティアァァァァァァァァァァァ!!!」


私の声に反応したのか、アンデット……見た目からして多分デスナイトね。

デスナイトが飛び出してきた。


「疾っ!」


デスナイトの袈裟斬りに合わせて私も袈裟斬りで対抗する。

私の武器は細剣だけど、普通の細剣ではなく神であるアリシアさんが打ちだした物。

当然その強度も段違いだ。

だからこうして敵の剣を真正面から受け止める事が出来る。

普通のだと力負けするだろうし。


「ハァッ!」


一息の内に突きの3連撃。

しかし鎧が闇の瘴気によって強化されているのか全て防がれてしまった。

ただ幸いなのはデスナイトは完全に骨と鎧だけなので臭くはないのよね。

ゾンビ系だと腐肉があるから臭いのよ。


「ユーーースティアァァァァァ!!」


ーーゴウッ!


闇の波動による衝撃波。

私はそれを受け軽く吹き飛ばされる。


「アカネ!」

「大丈夫! ちょっと飛ばされただけよ!」


自然と笑みが漏れる。

レントが……好きな人が心配してくれるのがすごく嬉しい。

私には心配してくれて、大切に思ってくれる人がいる。

だから、私は今度こそジェイル家との縁を断ち切ってみせる!


「閃空砕牙!」


風の奔流が闇の瘴気を吹き飛ばす。

でもそれは一時的なもの。

私は閃空砕牙を放つとすぐに駆け出す。


「ハァァァァァッ!」


一歩、二歩、三歩!

一歩目で左に薙、右に、もう一度左に。

二歩目で右に左に、そして回転しての三撃目。

三歩目で斬り上げ、振り下ろし、そして締めの右への薙。

三歩合わせて九連斬を浴びせかける。

スキルのアーツというわけではないけど、それでも名前をつけるとするなら……三連九斬……なんか違うわね。

ま、別にいいか。


「グウゥゥゥゥ、ユースティア……。」

「まだよ!」


蹴りを入れて距離を取り剣を構える。

元々私は親の教育もあって冒険者になる前からCランク相当の実力があった。

でもそれは相当というだけで経験値が足りてなかったし、何より技術も拙かった。

その時の技を今の技術で繰り出す新たな技。


「ハァァァァァ……烈風龍牙!」


元の技の名前は疾風砕牙。

閃空砕牙の飛ばす風を纏って攻撃する突撃技。

魔力操作の訓練とレベルアップによるステータス上昇、そして日々の訓練による身体能力の向上。

その全てをつぎ込んでの切り札。

決め技と言っていいだろう。

その一撃はデスナイトの骨も鎧も等しく粉微塵に変え胴体に大穴……いや、穴っていうか肋骨あたりから骨盤付近までの骨を全て消し飛ばして鎖骨から上と骨盤から下に分けちゃってるけど。

まあ、それだけの効果を発揮した。

いくらアンデットでもここまで損壊が酷いと流石に動くことは出来ないようで、顎が外れんばかりに口を開けた状態で絶命(?)した。


「お疲れ。ほいタオル。」

「ありがとう。」

「にしても最後の技、凄いな。あれって前に使っていた奴だろ? かなり威力上がってるじゃん。」

「あれから大分強くなってるからね。もう別物っていうか、進化技?」

「確かにそんな感じだったな。……ようやく、ジェイル家との因縁も終わりってところか?」

「多分ね。流石にもうないでしょ。」

「でもまだアンデット化した奴残ってたりして。」

「やめてよ。縁起でもない。」


でももし本当に出たら……骨1つ残さず消し飛ばしてあげるわ。

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