第780話 でもその前にお昼を食べさせて。的なお話

喧嘩する馬鹿は運が良いことに現れることはなかった。

やはり日頃の行いがいいおかげかな!

……いやまあ、2列にして並ぶ時間が半分になったからだろうけど。

30分並ぶのと15分並ぶのじゃ大分違うからな。

後は……いつの間にか噂になっていたらしい鉄壁の嫁バカがいたからか。

誰が鉄壁か!

嫁に手を出すものは誰であろうと容赦しないしそこはもう少し硬い物にしてくれ!

あ、そうじゃない?

うん、分かってる。

前の時に喧嘩した馬鹿どもを黙らせた事が知られたみたいでそれがそう呼ばれる原因っぽい。

嫁バカというのは認める。

それはもう、胸を張ってな。


そうして、そろそろ休める時間になる……筈なのに、なんでまだ列が出来てんだろうね?

列が出来ている以上は整列をするけどさ、前回はこのくらいの時間にはお昼食べられてたんだよ?

なのになんでまだ働いてんだか……。


「って、お前、2回目だろ!」


なんで?

という答えはすぐに判明した。

レヴィ、イリスペアがまた並んでいたから。

多分だけど他にもまた並んだ奴らがいる。

そのせいで俺は未だ仕事に縛られお昼を食べられていないでいる。


「いやだって……折角セフィアちゃんの手料理が食べられるのだもん。」


もんって……お前そんなキャラじゃないだろうに……そこまで食いたいか。


「えと、それに2回並んじゃダメって言われてませんので……。」


何故か恥ずかしがるイリスさん。

多分食い意地張ってると思われたくないのだろうが、そう思うのなら並ばなければいいだろ。

言ってることは間違ってないけどさ。

アデラードさんも2回並ぶなって言ってないからやっちゃダメとは言えない。

何故ならルールにないから。


そしてそのしわ寄せがやって来る。


「レント! 食材出して! もう材料無くなっちゃって今出来てるのが無くなったら供給出来なくなっちゃうの!」

「分かった。今行く。そういう訳だからしばらくの間ここ任せた。」

「分かったわ。」


アカネに任せてセフィアについて行く。

本来ならば人の列がある以上はまだ追加の料理を作っているはずのそこでは、出来ているものをよそう人と配膳する人以外は手持ち無沙汰の状態。


「あ、レント! ごめんね、備蓄を出させちゃって。」

「いえ、気にしてませんから。でも、十分な量を用意していたんじゃないんですか?」

「その筈だったんだけどね。前回使った量を踏まえて想定し、その量の1.5倍用意してたんだけど……予想が外れちゃった。」

「あー、誰も2回並ぶ人がいるなんて思わないし仕方ないですよ。」

「え、2回!?」

「はい。それに前回の時の料理が上手いって噂があって、それで前回よりも人が多く並んだみたいです。」

「うーわー。こりゃ次はもっと用意しないとダメだね。」

「そうですね。それで、何をどのくらい出せばいいですか? セフィアの方が理解していると思うけど。」


むしろ俺の方が分かってないかも。

野菜何個がどのくらいの量、重さになるのとかよく分かんないんだから、その点いつも買うセフィアなら数も、そして料理をしているからどのくらいの量、重さになるのか分かるはずだ。


「今何人くらい並んでる?」

「えっと……多分20人はいると思います。」

「20人か……後本部の人みんなまだ食べてないから……大体60人分くらいかな。だから……。」


何が必要か、それをセフィアに伝え、あるものは俺に伝え、無い物、足りない物はセフィアがシャットアウト。

俺は伝えられた物をキロ単位でドサドサとストレージから出していく。

そうしている間も列は進み、ついに料理が完全に無くなってしまった。

料理が無くなり、今作っていることを伝えて待ってもらう事を伝えている。

文句が出るが無いものはないのだからしょうがない。

その辺はアカネ達に宥めてもらおう。

俺も食材を出したら助けに行こう。

こっちのがランクが上だからウチのメンバーに手を出そうとする奴はいないと思うけど、そっちの不手際だから時間つぶしに付き合えとか言い出す馬鹿がいるかもしれない。

いるとは思わない。

でも可能性はゼロじゃない。

そういうのがお呪いの餌食になりかねないし、抑えない方が面倒になるから。



食材足りないトラブルがあったりしたが、ようやく一息つける。


「ごめんねー。手間かけちゃって。」

「まだ2回目だし想定外が起きるのもしょうがないですよ。」

「そうなんだけどね。レント、後少しだからよろしく頼むね。」

「任せてください。」


残り3時間に満たないし、後少しだ。

頑張ろう。

でもその前にお昼を食べさせて。

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