第779話 気のせいだったか? 的なお話

剣についた血を振り払い、鞘に納める。

そして倒したくまさんはひとまずストレージにしまっておく。

多分これは俺の取り分ってことでいいよな。

だって倒したの俺だし。


走り疲れた様子の3人を仲間に任せたルーカスさんがこっちにやってくる。

なんだろ?


「お疲れ。どうもあの3人はさっきのクリムゾンベアが狙ってた獲物を取っちまったみてえだわ。ま、そんな事すればそうなるのも仕方ねーわな。」


クリムゾンベアの獲物を、ね。

普通はそんなことしない。

いくらちょっと残念なラックスが混ざってるとはいえそんな短慮なことはするはずがないし、何か理由があるはずだ。

ちょっと俺からも聞いてみよう。


「えっと、クリムゾンベアに気づかなくて、Dランクの魔物がいて、それで……。」


はい、短慮でした。

他に仲間がいないか確認するだろ、普通は。


とりあえず3人にはお昼を食べて落ち着いてもらおう。

黒狼さん達にも何人か残して貰ってさっさと食べてもらおう。

黒狼さん達は半分残して半分が食べるようだ。

そして、黒狼さんの次は天装。

こっちの方は魔物に追われている人とかと遭遇する事なく普通にすんだ。

天装さんも半分残してた。


黒狼と天装に知らせたら再び列の整理に。

くまさんとの戦闘にかかった時間はほんのわずかだが、その間にも人が来ていたようでさっきよりも列が伸びている。

食事中の人も増えているんだけどなぁ……。

食材、大丈夫かな?


「食事を受け取る人は2列になって並んでくださーい! 受け取ったら横に捌けて速やかに次の人へ場所を譲ってあげてください!」


どうしよう。

セフィアに作ってもらった名前の分からないアレが足りない。

2列にしなければもう少し伸ばせられたけどもそれだと受け取るのが1人ずつになって効率が悪い。

スペース的に受け渡しの人が2人になってもまだ余裕があるのに1列にしたら絶対滞る。

そんで短気な冒険者がキレる。

だから2列にしたんだけども、まさかここまで人が来るとは思ってなかったからなぁ。


ひとまずあれが置いてある所から横入りはまず無いと考えて列の整理に集中しよう。

2列だから単純計算で並ぶ時間は半分だしキレない事を祈って働こう。


「しっかり並んでください。列が乱れると横入りやしれっと列の前に並ぶ……なんて事をされる原因になります。なのできちんと並んでください。」


うん。

偶にいるよね、列が伸びたり歪んだりしててそれを直す際に人の前に入ろうとするおばさん。

本当にあれってムカつくんだよな。

温厚で嫁にデレデレと評判のレントさんでもムカつくことはあるんですよ。

当時は嫁いなかったけど、それは関係なしにイラっとするものはする。

横入りしないなんて幼稚園保育園で言われることだろうに……なんで出来ないんかなぁ。

機嫌悪い時なんかは乳幼児からやり直せとか思ったりした。


そうして並ばせていると見知った2人組が並びだした。

レヴィとイリスだ。

前に見た魔砲少女の映画第3弾と第4弾に出てた子達と同じ名前の2人。

もう1人は……お留守番かな。

流石に1人でこの仕事はやらないだろうし。


「お疲れ。調子はどう?」

「あ、レントさん! バッチリですよ! ユーリから借りたアイテムバッグもありますから運搬も楽ですし上位入賞もいけると思うんですよ!」

「そっか。あいつもCだし持っててもおかしくはないか。入賞出来るといいな。」

「はい!」


確か自称俺のファンとか言っていたな。

嫁にするとかそういうつもりは全く無いけど、女の子に好意的に接して貰えるというのはやはり気分いい。


2人は列が進んだので前の方へと行き、2人の少し後にまた知り合いが並ぶ。


「よっ。その後の調子はどうだ?」

「なんだお前か。冒険者は廃業して小間使いにでもなったのか?」

「あ、相変わらず口悪いな。それより、その剣の調子はどうだ?」

「問題ない。問題はないが、今日のが終わったら整備を頼む。」

「はいはい。全く、お前は喧嘩を売ってからじゃないと会話は出来んのか。」

「うるさい。」


うーむ。

前会った時、最後の方は少しマシになったと思ったんだけど、全然変わってないな。

気のせいだったか?


〜シルヴィア視点〜


うぅ……またやっちゃった。

どうして私は普通に話すことができないんだろ……?

お母さん達相手だと普通なのに……。

なんとかしないと、仲間が出来ないのに。

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