第777話 複製出来ないか聞いてみよ。的なお話

「手伝います。」

「なんだお前達は? まさか妨害か!?」

「違いますよ。俺達はこの拠点の護衛をしている者で、俺はBランク、そしてこっちのがCランクですから参加者じゃありません。ほら、ギルドカードにもそう書いてあるでしょう?」

「……すみません! 他の冒険者に負けたくなくて、それで、その……。」

「ああ、別に気にしてないから。それよりも早く持っていくぞ。こんな大きい餌引きずってたら魔物が襲って来かねないからな。」

「あ……すみません! 全然気づかなくて! すぐに持っていきますから!」

「だからそれを手伝うって言ってるんですよ。」

「「「ありがとうございます!」」」


微妙にヒントになってる気がしないでもないけど……ま、これくらいならいいよね。

実際、危険なのは確かだから。

普通の冒険者はこういう時どうするんだろ?

やっぱ討伐証明だけ持っていくのかな?

それともギルドかなんかに頼んで運んでもらうとか?

ちなみに引きずりさんは3人パーティで1本の角と2本の牙をそれぞれ持って仲良く引きずってた。


「風見、お客さん。」

「何匹だ?」

「5匹。」

「どうする?」

「回収お願い。」

「了解。」


本当に餌に引き寄せられたみたいだ。

しかし5匹とはまた少ないな。

ま、何十匹と来られるよりかはマシだな。


蒼井が餌につられてのこのこやって来た魔物を魔法銃で屠っていく。

1発も外す事なくたった5発のみだ。

でもあれだな。

やっぱり魔法銃ってかっこいいよな。

俺の中で芽吹く事がなかった中二病の種が疼きだしてる。

今更花開かれても困るんだけどな。


「それじゃ行ってくる。お前はそっち任せた。時間制限もあるからできるだけ速やかにな。」

「分かってるわよ。」


そうして俺は魔物の回収に。

蒼井は受付に獲物の引き渡しに。

…………なんか、異世界版昔話の冒頭みたいだ。


どうやら餌につられたのはホーンファングのようで、それぞれ丁寧に頭を撃ち抜かれて殺されている。

即死だな。

けど、こうして見ると気配察知と遠距離武器の相性やべーな。

しかも蒼井のは連射可能な魔法銃だろ。

本当にこの組み合わせは凶悪だわ。

やっぱ俺も欲しいし今度カンナさんに複製出来ないか聞いてみよ。


〜第三者視点〜


くぅ〜、と音が鳴る。

音の発生源はシルヴィアのお腹だ。


「もうそんな時間か。」


時刻はそろそろお昼であり、シルヴィアの腹時計は結構正確なようだ。

そして現在のシルヴィアの討伐数は32。

前回大会よりかは伸び率が悪いが、ランクが上がり魔物のサイズや強さも上がっているのだからそれも仕方ない事だろう。

それに、遭遇率も前回よりも下がっている。


「もう少し稼げると思ったんだけど、そう上手くいかないわね。」


シルヴィアはしばし考える。

ここで適当な物を調理や採取して食べるか、拠点に戻って料理を貰って食べるかを。

時間効率を考えればここで食べるのがいいのだが、きっちりと調理された物を食べた方が栄養面では上であり、何より食べてみたかった。

前回は時間効率を考えて適当に食べていたが、終了した後に他の参加者が口々に言っていた料理に対する感想を耳にしてしまい、気になっていたのだ。


「むぅ……。」


ーーぐぅ〜


今もなお空腹だと主張するお腹に屈したシルヴィアは拠点に向かって駆け出す。




同じ頃、そろそろお昼だと考えシルヴィアと同じように拠点へと向かう2人組がいた。


「あの噂って本当なのか?」

「多分本当。前回大会の参加者が天装の料理人とギルマスの弟子が料理を作ってたって聞いた事あるし。」


2人組とはセフィアちゃん親衛隊のメンバーであるレヴィとイリスだ。

ユーリは既にCランクであるためにこの場にはいない。

レヴィはモンスターパレードの時の功績でDランクに昇格し、イリスはモンスターパレードの時の怪我で出遅れてしまったが、エルカを出る前に無事Dランクに昇格したのでこうして参加している。


対して、モンスターパレードでCランクに上がったユーリは残念ながら参加出来ない。

それだけではなく、前回大会にも間に合っていないのでレヴィとイリスが楽しみにしているセフィアの手料理を食べる事ができないのだ。

恐らく今頃は宿屋の部屋で1人セフィアの手料理が食べられないことを悔しがっている事だろう。

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