第772話 ……忘れてなければ。的なお話

「さて、それでは食事に戻りましょうか。」

「えぇ!? 黒狼さん達放置ですか!?」

「どうせ帰ってきませんよ。それに、あなたが追いかけた所で追い討ちをかけるだけですわ。」

「あー、それもそうですね。」


うん。

追いかけるのは良くないよな。


「それで、訓練の方はどうなっていますか? もうダンジョンに挑めるようになっています?」

「いや、まだだよ。狩猟大会関係で色々忙しくなってきたからそっちの方を優先してもらったからここ最近は訓練出来てないんで。」

「それでは仕方ないですわね。そろそろ焦れてくる者もいるのでダンジョンに行きたかったのですが……。」

「すみません。」

「いえ、命を無駄にするわけには行きませんし当然の事です。」

「いっその事、ランさんに現地で色々レクチャーしてもらいながらってのが出来たらいいんですけど、アデラードさん次第ですからね〜。」


訓練したとしても実際に現地で通じるかは分からない。

それに、現状じゃ訓練する内容にも限度がある。

練習出来たのも宝箱に仕掛けられるタイプのだけで、通路や壁なんかに仕掛けられるタイプのは練習出来ない。

だから1度行った方がいいと思うんだけど……こればっかりはアデラードさん次第だし。


「レント、一緒に食べていい?」

「構いませんよ。」


とかなんとか、アデラードさんの話をしていたらアデラードさんがやってきた。

これが噂の噂をすれば影がさすって奴か。


「「「お、お疲れ様です!」」」


アデラードさんが来たからか天装の人達が立ち上がってアデラードさんに挨拶をしだす。

まあ、一応ギルドマスターだからね。

普通はこういう反応なんだろうなぁ。

俺はもう慣れてしまったけど。


「いいから座って。」

「「「は、はい!」」」


やはり緊張してしまうのか天装の人達がガチガチに固まっている。

うーむ。

人となりを知ってしまうと、こういう反応をするのが変に思えてくるから不思議だなぁ。


「そっちの組は随分と早く終わってたね〜。」

「まあ、3パーティだけですし前もやりましたからね。そういうアデラードさんの方は遅かったけどどうしたんですか? 顔合わせだけですよね?」

「それなんだけど、前回こっちは魔物が少なかっただの、魔物が多過ぎて割りに合わないとか言うパーティがあってね。それで配置を変えろとかで揉めて、それで少し遅れたんだよ。」

「なるほど……森の中で見てるわけだからそう言う話になるのもおかしくはないか。でもそれって今回もそうなるとは限りませんよね?」

「そうなんだけどね……それでも前回暇過ぎたり忙し過ぎたみたいで、それが嫌なんだって。でも、安心して。ちゃんと収めたから。」

「そこは心配してませんよ。」


アデラードさんが俺の側に座ったというのもあって、自然とアデラードさんと話すようになった。

それは別に普段からよくあるし俺としては普通なんだけど、天装の人達にとってはそうではないようで、少し離れた所の人達はこそこそと話してる。

内容は全部聞こえるとは言わないけど、聞こえて来た範囲では、どうやらアデラードさんと話すのは恐れ多いようで、だからこそ俺が信じられないとかなんとか。


「そういえばリナさんは?」

「リナならえーと……あ、あそこだよ。職員同士で食べてるね。多分だけど仕事の話でもしてるんじゃないかな。」

「明日が本番ですし、それもそうか。」


そんな感じで話をしつつ昼食をのんびりと食べた。

ダンジョン関連についての話をしようかとも思ったけど、それは狩猟大会が終わるまではやめておこうと思った。今が前日で最終確認とかできっと忙しいだろうし、それはまた後でしてもいい話だからな。

……忘れてなければ。


そして昼食を終え、仕事の邪魔をしては悪いからと、軽く挨拶をしてからギルドを後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る