第771話 俺の辞書に書いてあるし。的なお話
「一緒に昼飯食おうぜ!」
顔合わせも終えてさて帰ろうかなとか考えていたところでそんなことを言われてしまった。
発言者はいい人止まりのモテない男ルーカスさんだ。
「えっ、なんですの、急に……?」
「この機会に親睦を深めておこうと思ってな。ほら、俺達とレント達は前の時くらいしか一緒に依頼をしたことないだろ。それにあんまり話す機会とかもなかったし。ま、それはお前らもだろうけど。」
「あら、残念でしたわね。生憎と、私は【
「なんだと!?」
こっちの方を見てくるルーカスさん。
その目は、本当か? と聞いてきている目だ。
だからはっきりと答える。
「はい。その通りですよ。後は……一緒にアデラードさんの家でホームパーティーをしたり、出席した夜会で一緒になったこともありましたね。」
「おまっ……いつの間にそんなに仲良くなったんだよ!?」
「まあ、なりゆきで?」
「なりゆきって……。」
「うるさいですわね〜。お昼を食べないのなら私達は帰りますわよ?」
「食う食う! 食うに決まってんだろ! ほら、話は置いといて今はメシ食おうぜ。」
そんなわけで【黒狼の爪牙】【天装の姫】の面々と一緒にお昼を食べる事になった。
しかしこれは……。
人、多くね?
「人多すぎません? 貴方達は他所のテーブルに行ってくださらない?」
「いやいや、俺達が行っちゃ意味ないだろ!」
「まあまあ……それで、親睦を深めたいと言ってましたけど、何をしますか?」
「こういう時はメシ食って酒飲んで一緒に騒ぐのが1番だろ。……ま、明日に響くと困るから酒は飲めねーけどな。」
「妥当ですね。」
「だろ? で、聞きたいんだけどよ、さっき言っていた新しく増えた恋人って誰の事だ?」
「えー、なんかイヤらしい顔してるんで言いたくないです。」
「良いじゃねぇかよ……ほら、俺にだけ聞かせてくれ。誰にも言わねぇからよ。」
「そう言う人に限って簡単に人に話すんでイヤですよ。それに、そういうのはまず自分の彼女を作ってからにして下さいよ。」
「確かにそうよね〜。人の色恋よりもまずは兄さん自身の事をちゃんとしないと。もう24なんだしさ。」
「うっせーよ、アンナ。そういうお前はどうなんだよ?」
「私? 私はまだいいよ。兄さんがまだなのに私だけ恋人が出来るのはちょっと可哀想だしね。」
「そんな事言って、実はお前もモテないんじゃねーの?」
「そんな事ないよ。」
「そうですわね。何人か、アンナさんに声を掛けたって話は聞きますわよ。」
「……マジかよ。」
うーわー。
これはなんというか……可哀想になってくるな。
「俺だって、俺だってやってやるさ! そこまで言うならすぐに恋人を作ってやるよ!」
「おい、落ち着けよルーカス……そんなんじゃ出来るもんも出来ねーぞ。」
うーむ。
これは止めた方がいい気がする。
なんだか、暴走して玉砕する姿が見える気がするし。
「うるせぇ! きっと次は大丈夫だ! 受付のリナちゃんなら、きっと大丈夫。」
「あ、リナさんは俺の恋人ですよ?」
え?
みたいな顔でこっちを見てくるルーカスさん。
その顔がくにゃりと歪み、そして……
「ちくしょぉぉぉぉぉ!!」
泣き叫びながらどこかへと走り出してしまった。
あー、悪いことしちゃったかな?
「すまんな。あいつも最近はあんな感じに焦ってんだよ。明日には普通に戻っていると思うから気にしないでくれ。じゃあ、俺達はあいつを追いかけるから、また明日な。」
黒狼の誰かがそう声を掛けてからルーカスさんを追いかけていった。
現代日本なら焦るよう年齢じゃないけど、15で成人の異世界だからなぁ……日本換算だと30近くになるわけだし、そりゃ焦るか。
とはいえ、可哀想だからって恋人を渡せないしな。
嫁恋人は手放さないって、俺の辞書に書いてあるし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます