第753話 これが世に言う一日の長というやつか。的なお話
あらかた話がまとまったところで近くにセフィアが立っていることに気づいた。
というか、一体いつからそこにいたんだ……?
全然気づかなかった。
「話終わった?」
「ああ。セフィアはどうした?」
「みんな作り終わったから次はどうしたらいいか聞きに来たの。」
「え、あ、そうなのか。そんなに時間が経ってたのか。」
「あー、じゃあどうしようか……次はライトロッドとかどうですか?」
「ライトロッド、ですか?」
「見たことないですか? 光を灯す杖です。魔石を使っているため誰でも使えるので定番商品でした。」
おおぅ……。
でした、と来ましたか。
あんまり触れるのは良くないな。
借金で店が潰れちゃったわけだし……。
「ライトロッドは使う術式がさっきと少し変わってきます。水の魔道具では魔力の抽出と水への変換、そしてその量だけでしたが、今回のライトロッドはそこに指向性を持たせます。拡散と直線、その2つの術式文字を使用します。」
「2つ? それってどうやって?」
「それを今から説明します。」
そう言うとカンナさんは別のケースを取り出して四角い筒を割いた形状のパーツが円筒を割いた形状のパーツへと変え、そしてそれよりも大きめのアーチ状になっている2つのパーツを出してきた。
魔石と枠、スイッチ部分は変わっていない。
筒の方は水の魔道具と似たような感じに彫っていき術式を描いていく。
術式文字は魔力抽出、発光、ピカピカでスイッチ部分の空間を空けている。
そこまでは前と差はない。
そう思っていたら、前のには無かったパーツの方に、術式解放に繋げて直進と書いた。
そしてもう1つのパーツにも術式解放の文字。
そしてそこに繋がるようにして拡散と書いた。
ああ、なるほど。
要は光の調節が出来る懐中電灯か。
直進の方は照らす範囲が狭い代わりに遠くまで届き、拡散の方は照らす範囲が広がる代わりにあまり遠くまで照らせない。
その2つを切り替えて使えるということか。
カンナさんは枠の方も魔力が流れるように彫った後、筒の方の外側に溝を彫る。
アーチ状の方には内側に出っ張りがあるので、そこに合うように溝を彫った。
そして術液を流し、乾けば組み立て。
筒にし、魔石と枠をはめ、そしてアーチ状の2つのパーツを筒を覆うようにして接着。
ただしアーチ状のが筒状になるようにであって、筒にはくっ付けない。
くっ付けると術式文字を2種類書いた意味がないから。
そしてちゃんと作動するのかの実験。
スイッチを入れると光る。
そして先端を覆うようにしてある部分を半回転させると光の範囲が広がる。
「うん。ちゃんと出来てますね。」
ちなみにカンナさんは筒の方の溝を途中で止まるようにしているので、回転させ過ぎることはないようになっている。
「ちゃんと覚えましたか? では実際に作ってみてください。」
今回は俺も作らせてもらう。
槍の方はあらかた話がまとまってるからね。
それに、魔道具を作ってみたかったのもある。
そうして魔道具作りを開始するが、実は少しだけ自信があった。
それはこれまで沢山の爪楊枝を作ってきたことから来る、木材の加工に関しての自信。
こんな大きなパーツよりも小さな爪楊枝を作ってきたのだから、これくらいはわけないと思っていた。
だが実際はどうだろう?
文字を彫るのが想像以上に難しい。
それというのも、術式文字が直角や曲線になっていたりして、しかも似た文字があったりするもんだから、その似た文字にならないようにするのがすごく大変。
そうして術式文字を彫るのに苦心しつつ作業を行い、なんとか作製に成功する。
光自体は弱々しいものになってしまっているけど
……一応は完成だ。
多分術液が少なかったか線が歪んでいたのだろう。
そして俺以外のみんなだが……可動式の部分が止まるようになる工夫の位置がズレてしまい切り替えが上手くいかないという問題が多発していた。
光も十分でズレもないというカンナさんはやはり流石だ。
これが世に言う一日の長というやつか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます