第729話 マッサージをしてもらったよ。的なお話
カーンカーン! と、槌が金属を打つ音が響く。
昨日作った鏃は普通の矢と付け替えて、今朝ギルドの訓練場で試射をした。
その結果、予想以上の成果を発揮した。
普通に射っただけなのに、的をやすやすと貫通し後ろの壁に突き刺さる程だった。
ちなみにだが、死蔵する予定だった他の3種も一応試射してみたところ、使えなくはない事がわかった。
シアの予想通り重心が前の方に傾いている為に、普通に射った場合だと射程がかなり短く、的に届く前に地面へと落ちてしまった。
そこで当初の予定通り山なりに……と思っていたが、そうすると壁を越えてしまう可能性に気づき上に向かって射ってもらった。
するとどうだろう。
重りの方2つは地面にめり込み、長い方は地面に深々と刺さったではないか。
そんなわけで死蔵する予定だった3種も無事採用されるには至ったのだが、やはり使いどころを選ぶ上に練習が必要という事でしばらく出番はない。
だから今生産すべきは螺旋矢である。
そうして現在大量生産しているわけだけど、正直に言って辛いです。
ただひたすらに同じ作業を繰り返すのみというのは精神的疲労が半端ない。
物作りが割と好きだとこの世界に来て知った俺だが、だからって同じ作業を延々繰り返すのはキツイです。
その辛さから珍しく昼食を忘れなかったというのはいい事なのかどうか悩ましいところ。
いや、いい事なのだろう。
空腹は辛いものなのだからない方がいいに決まってる。
お昼休憩を取った事で気分一新、また頑張ろうという気になっている。
やはり食事は偉大だ。
さて、もうひと頑張りだ。
◇
一心不乱だなんてとても言えないが、それでも頑張って作業を行いやっとこさ50個を作り終えた。
50個という切りがいい数字という事もあり、俺は休憩をする。
「ふぅ……疲れた。」
お茶を飲んで一息。
繰り返し行う作業で疲弊した精神を癒す為にボヘーとしながらお茶を飲む。
ついでにストレージ内のお菓子とかも食べようかね。
これは確か……そうそう。
蒼井が気に入ってるやつだな。
これを食べるとうるさそうだからやめておいた方がいいな。
となると、こっちの方がいいかな。
「ちょうど休憩中だったようね。」
「シアが来たってことは、全部集まったの?」
「ええ。といっても結構早めに揃ったんだけどそれだと作業が終わってないと思ってね。しばらくのんびりさせてもらってたわ。」
「うわー、やる事に差があるのは分かるけど、こっちが必死こいてやってる間のんびりというのはやっぱ悲しいな。」
「ごめんね? でも鏃の方はレントしか作れないんだもの。」
「しょうがないのはわかってても、やっぱり辛いものは辛いんだよ。」
「それは分かるけどね。今夜マッサージでもしてあげるから機嫌なおしてよ。」
「別にふてくされてるわけじゃないんだけどな。でも、マッサージはよろしく。」
「了解。それで、ここでやる? それとも宿に戻ってからにする?」
「ここでやろう。場所なんて問題じゃないからな。」
「分かったわ。じゃあ今から出すわね。」
シアがアイテムバッグから取り出したのは矢羽根と木の棒。
矢の材料だな。
木の方はともかく矢羽根はどんなのがいいのかというのは俺には分からないからシアには矢羽根用の羽根を集めて来てもらったのだ。
ついでに木の方も矢に向いたのを集めてもらった。
「さて、それじゃ矢を作りますか。鏃はいくつあるの?」
「新しく作れたのは全部で50個だな。」
「50か……それだと材料が余るし、昨日作った奴も作っちゃおうか。」
「そうだな。鏃だけ持ってるのもどうかと思うし。」
シアを手本にしながら一緒になって矢を作っていく。
作業をするのが2人という事もありあっという間に全ての鏃を矢にする事ができた。
やはり人数が多いとそれだけ早く終わるな。
出来た矢はシアのアイテムバッグにしまい、グラハムさんに礼を言ってから店を後にする。
宿に帰るとちょうどタイミング良くアイリスさんがやって来た。
防具のメンテが済んだようだ。
これで準備は整ったわけだな。
後はリベンジをするのみ!
あ、もちろん夜にはマッサージをしてもらったよ。
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