第706話 絶対に幸せにしますからね! 的なお話

エリュシオン邸でお風呂に入ってさっぱりする。

アカネはともかく、アデラードさんにナタリアさん、そしてカトレアちゃん達お子様と、なんだかんだで慣れないダンスを何度も踊ることになって少し汗をかいてしまったからね。

まあ、それが無くても寝る前にお風呂に入りたいけど。

だって日本人だし。


風呂から出て火照った体を冷ましていると、後ろから酒瓶を抱えたアデラードさんと寝間着のアカネがやって来た。

……ひょっとして、それ全部飲むんですか?


「えーと、どうしたんですか、それ?」

「これ? これはね、太守が土産として持たせてくれた物だよ。これはアカネとレントの分になるね。」

「あ、そうなんですか。俺はてっきり……。」

「てっきり……何?」

「てっきり全部飲むために持って来たのかと。」

「そんなわけないじゃない。」

「ですよねー。」

「こんなんじゃ少なすぎるよ。」

「デスヨネー。」


アデラードさんが持って来たのは8本。

1人が飲むと考えたら多いと思うけど、アデラードさんだし。

もっと飲めそう。

というか、宴会になる時はいつもそれ以上を飲んでいるし。


「それで、アデラードさんはそれを持って来るために来たんですか?」

「そんなわけないじゃん。3人で飲みたいなって思ってね。」

「そうですか。ま、そんな気はしてましたけどね。とりあえず部屋に行きましょうか。」


俺にあてがわれている部屋で飲む。

なんか、部屋の内装が少しずつ変わっている気がするんだが……あのカーテン、前は青系でしたよね?

今は緑系になっていてこっちの方が俺的には好ましい。

そして、本がいくつか備え付けられるようになり、その本も俺にとってはファンタジー系、こっちで言うなら英雄譚な本とミステリー系で固まってる。

そのどちらも俺の好み。

明らかに俺用に合わせて来てる……。

……あまり深く考えないようにしよう。


「さて、それじゃあかんぱーい!」

「「かんぱーい!」」


アデラードさんがアイテムボックスから取り出したワインでかんぱいをして飲む。

3人だけというのは初めてかもしれない。


「それで、レントは初めての夜会どうだった?」

「疲れました。肉体的にはそこまでじゃないですけど、精神的にはかなり疲れましたよ。」

「仕方ないわよ。初めてなんだし、何よりあれだけの子供の相手をすればね。」

「まあ、もう参加することもないでしょうから別に良いんですけどね。」

「え、でもあと2回は参加しないとダメでしょ。」

「は、2回!?」

「うん。私との婚約発表とアカネとの婚約でもやるでしょ?」

「え、やらないとダメなんですか、それ?」

「アカネは籍がどうなっているかによって変わるだろうけど、少なくとも私のはやらないとダメだと思うよ。」

「マジか〜……でも、必要なことだし仕方ないですね。」

「あ、そ、そうだよね。」


アデラードさんが頬を染める。

自分との婚約を好意的に受け止めてくれて嬉しいって事なのかな。

もしそうなら俺もなんか嬉しいな。

それだけ好きでいてくれるって事だしさ。


「そ、それで、レントはナタリアとも踊ったけど、どうだったの?」

「どうって、どうもしませんよ。ただ、リードされっぱなしでしたね。あ、そういえば、ダンス中に今度合同で依頼を受けないかって誘われました。」

「それってつまり、踊るのはついででその話がしたかったって事?」

「いや、依頼がついで。折角の夜会だし楽しもうってだけだとさ。」

「でも、合同か……。狩猟大会とか、レックスの時とかは結局連携とかせずに別々だったものね。」

「ああ。そんなわけなんでアデラードさん。依頼の時は訓練を休ませてもらいますね。」

「分かったよ。なんなら、依頼の方はこっちで見繕っておこうか?」

「お願いします。」


気付けばワインのボトルが3本ほど開いていた。

時間が進むのは早いな。


「ダンスと言えば、レントはダンスの練習も必要だよね? 婚約発表のパーティーをやるんだし。」

「うっ! やっぱりそうなります?」

「なるよ! そりゃもちろんね。でも、最後の方は割とマシだったよ? 子供達と踊ってる時の奴。」

「あー、そうでしたね。やっぱり子供の相手をするのが上手いからなのかな?」

「どうだろ? 俺はそんな実感ないけどな。」

「そういえば以前、アデラードさんの相手をしていて、良い父親になりそうって話あったよね? なんか、夜会の様子を見ると本当にそうだなって思ったわよ?」

「そうなのかな……?」

「前から聞きたかったんだけどさ、レントはなんで子供作らないの?」

「な、なんでって、そりゃ、まだ経済的な問題とか貯蓄とか、居住場所とか色々と問題があるからで……。」

「私がなんとかするよ、それくらい。」

「いや、ヒモは勘弁して下さい。」

「そうよねー。やっぱりハーレム作ってるわけだし、甲斐性は必要よね?」

「ま、まあな。」

「今ここで、男の甲斐性を見せてみてよ。」

「い、今!?」


しなだれかかってきながらそんなことを言ってくるアカネ。

それは明らかな誘いの言葉だ。

いいのか?

行っちゃっていいのか?


「そうだね。私もそれは見せて欲しいかも。」


アデラードさんもしなだれかかってくる。

ここまで誘われて、動けなければ男がすたるってもんだ。

俺は2人を連れてベッドへ……。



最悪だ……。

酒で理性のタガが緩んでいたとはいえ、なんであそこで手を出してしまったのだろうか……。

ベッドには2つの赤い染みが出来ている。

それを見て、朝起きてすぐに凄い後悔に襲われてしまう。


「んっ……おはよう、レント。ちょっとお酒の影響もあったけど、私、嫌じゃなかったからね。」

「おはよ、レント。昨日はありがとね。まだ周りには言えないけど、これからもよろしくね。」


かわいいなぁ、ちくしょう!

後悔とか吹っ飛んだじゃないですか、もう!

絶対に幸せにしますからね!

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