第705話 アデラードさんの家にお泊まりです。的なお話
夜会は終わったが、どうも帰るのにも順番があるようで、偉い人から順番に帰れるようだ。
ホストである太守を除いて、上から侯爵、伯爵……と下がっていく。
俺は子爵令嬢の同伴者だから帰るのは伯爵の後になるんだけど、来るのに使った移動手段はアデラードさんの馬車。
なので、男爵の順番までもう少し待たねばならない。
その間に俺はやるべき事、そしてやりたい事をやる。
まずはこの眠り姫を親御さんに渡さないとな。
カトレアちゃんは夜会終了まで俺の話を楽しんでいたのだが、夜会終了時間が10時を過ぎていたせいで、突然糸が切れたようにして眠りに落ちてしまった。
まあ、俺もこのくらいの時は9時ごろには寝てたからそうなるのも仕方ないけど。
眠り姫をお姫様抱っこしてギリアムさんの所に持っていく。
「おお、やはりカトレアの寝顔は可愛いなぁ……。」
それには同意するが、まずは受け取ってくれ……。
親バカは家でしてくれないかね。
「どうやら、何もしてはいないようだね。」
だから親バカは家でしろ!
「当たり前ですよ。健全な成長に悪影響があってはいけませんからね。」
ここで眼中にないと取れるような言い回しをしてはいけない。
そんな事を言えばキレる。
親バカは絶対にキレる。
ウチの娘に魅力がないとでも言うのかー! ってキレる。
だから子供の為という建前で武装して言う。
まあ、普通にこの年齢の子は守備範囲外だし、ちゃんと武装しておかないとな。
「そうですか。と、いつまでも持たせてしまいすまないね。」
「いえ、軽いですから問題ありません。」
本当に軽いからね。
子供だし、筋力的にもステータス的にも成長しているからこれくらい余裕だ。
嫁達をお姫様抱っこ出来るしね。
「それでは、私はこれで。」
「うむ。娘の話し相手になってもらい感謝する。」
さて、次はメイドさんだ。
「すみません。この料理って残った物はどうするんですか?」
エビとかまだ残ってたし、貰えるのなら貰いたい。
無理を言うつもりはないが、貰えるのなら、ね。
「全て処分しますが……持ち帰りますか?」
「良いんですか!? 是非!」
「ど、どうぞ……。」
ふんふーん♪
これで嫁達にも食べさせる事がでっきるぞ〜。
少々意地汚い気もするが、せっかくのご馳走だしね。
タッパーは無いがお皿はあるのでそれに盛ってすぐにストレージへ。
そうして各種を手に入れた俺はホクホク顔でアデラードさんの元へ戻り、丁度子爵達も帰ったとかで俺達もそのまま馬車へと乗り帰路へ着いた。
「それにしても、レントは子供に好かれてたね〜。」
「そうですね。なんか、他の人は恐いからだそうですよ。まあ、気持ちはわかりますけど。」
「あははは! 確かに厳つい顔の子多いもんね〜。」
「それはそれとして、子供に聞かせられないお話ってどんなのがあったんですか?」
「良い話もあれば悪い話もあって、色々だよ。聞きたい?」
「簡単にでお願いします。」
「そうだねー。悪い話はどこどこの貴族が誰々のポストを狙って暗躍してるとか、汚職とかだね。他には、特定の薬草を集める依頼があったとかだね。」
「特定の? それのどこが悪いんですか?」
「それ単体なら多少特殊だけど問題ないんだよ。自白剤とか、興奮剤、滋養強壮とかね。でも、それらを特定の順番で適切な処理を施して調薬すると極めて強力な催淫効果のある媚薬になるんだよ。それも、理性どころか意識まで狂わせて異性を求めるようになるレベルの物なんだよ。」
「えげつなっ!」
「勿論、そんなのは違法だよ。所持するどころか、作る事も持ち込む事も禁じられている。」
非核三原則ならぬ、非薬三原則ですか。
「それらが薬とはあまり縁のない所に集まってたから、ひょっとしたら作ってる可能性があるから注意が必要って話。後は良い話としては、難航していたトンネル工事がもうじき終わるとか、新しい水脈が発見できるかもとかだね。他には、訳あって冒険者を辞めていたAランク冒険者が復帰したとかだね。」
「確かに、子供達にはあまり聞かせたくない話題ですね。トンネルとかは聞いても良いと思いますけど……興味ないでしょうし。」
「だね。だから、レントには助かったって商人や貴族達が言ってたよ。」
「そうですか。それなら良かったです。」
と、話の切りが良いところで丁度馬車が止まった。
どうやらエリュシオン邸に着いたようだ。
「今日はもう遅いし泊まっていきなよ。」
「え、でも悪いですし……。」
「気にしないで良いよ。それに、ドレスも返す前に直さないといけないしね。」
「あー、それじゃ、お言葉に甘えさせてもらいます。」
というわけで、今夜はアデラードさんの家にお泊まりです。
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