第682話 納得いかねー! 的なお話

「なんだか、落ち着く味だね。」

「美味しい。」

「ホッとします。」


日本人の心だからね。

世界に誇るミソスープは異世界でも受け入れられるようだ。

ただ、不満なのが出汁が鰹節ではなくて椎茸っぽいキノコだという事。

俺にとっては味噌汁の出汁は鰹節が最上だと思っているから、そうでないのが不満だ。

探せばあるかな?

普通の生魚ならば保存になんがあったりするだろうから輸送は大変だろう。

しかし鰹節ならば乾燥させて作るから保存しやく、この街にあってもおかしくない。

というかあってくれ。

切に願う!


うーむ。

あとで探しに行こうかね。

今日はもう本を読んだりしてのんびりするくらいしか出来そうにないし。

ゲームとかは出来るかもだけど、それはみんな次第だしな。

というか、気になったらもうどうしようもなくなってきた。

前に作ったうどんも椎茸出汁だったし。

やっぱりここは鰹出汁と醤油、砂糖の麺つゆがいい。

みりんはあるのかね。

それも探そう。


そしてみんなは普段よりも飲んでいたために快復までに少し時間がかかったけど、それでも午後3時頃にはみんな快復した。

さて。

これでなんの心配もなくなった事だし、鰹節探しと行こうか。



「ねぇ、鰹節ってどんな形をしているの?」

「焦げ茶色で硬くて、大体ひし形のが多いイメージだな。でも、それは日本での話だからこっちでもそうなのか自信はないな。」

「そっか。他には何か情報とかない?」

「他か……硬いからそのまま食べたり使うわけじゃなくて、こう、かんなの様な刃がついた道具を使って削ってから使うんだ。」

「そうなんだ。それじゃ、あるとしたらどういうところにあると思う? 木工屋?」

「いや、流石にそれはないだろう。だって木じゃなくて魚だし。でも、本当にどんなところにあるんだろうな?」

「それっぽいところを探すしかないよね。」

「まー、そうなるわな。」


鰹節探しの旅に出ようとした所で、セフィア達に捕まった。

そして、そういう事なら僕達もというので一緒に行動することに。

宿に残っているのは蒼井、レイダさん、ユキノ、シア、ルナだ。

セフィア、リリン、ルリエ、アカネは俺について来ている。

本当は蒼井もついて来ようとしたんだけど、アカネがついて来るというのを見て気を利かせた感じだった。

そこには感謝しよう。


「でも、椎茸でも普通に美味しかったわよ? ちょっと違和感あったけど。」

「ありがとな。でも、その違和感が問題なんだよ。アカネなら分かるだろ?」

「まあ、ね。でもこれまで全然見つかって無いんだし、そう簡単にはいかないんじゃないの?」

「いや、きっとあるはず。だってここは迷宮都市だぞ! こんな、日本人なら胸踊る様な場所、来ないはずがない! そして、生活基盤や、食事には妥協するはずがないから、絶対流通とか開発に力を入れていたはずだ! だから、あるはずなんだ!」

「そう思いたいのね?」

「うん。」


チートがあれば俺だったらそうすると思う。

チートでお金稼いで、そのお金で食事や生活環境を整えているはずだ。

でも、郷に入っては郷に従えの精神で、この世界の文化を壊す様なことを良しとしない人だったのかもしれない。

それに、この世界の料理や食材は美味しいものが多い。

だからそれで満足していたかもしれない。


でも、ふとした時にあれが食べたいと思い出していたかもしれないじゃないか。

そして、その為に鰹節を普及させた可能性だってある。

その可能性にかけているんだ!

願望とも言う。


熱弁した後、セフィア達と一緒に鰹節を探す。

普段行っている大通りにある店では今まで見かけたことはなかった。

だから、もう少し奥に行った所を中心に探すが、なかなか見つからない。


場所の雰囲気が、活気のあった大通りに比べて暗い感じがする。

ただし、比べてなだけで別段治安が悪い地区というわけではない。

大通りから少し外れればこんなもんだろうし。


そうして探すこと2時間。

全然と言っていいほど、見つからない。

鰹節のかの字も見当たらない。

日が暮れるまであまり時間がないので、仕方ないと諦める。

諦めてウェイリーノーラで聞くことにする。

魚料理扱ってるし、ここなら知ってる可能性あるよね?


「鰹節……完全に乾燥させた魚の乾物で削って使う……あ、あれね。あれなら、大通りにある干物屋で売ってるわよ。」

「へ?」


それは、普段使っている八百屋の隣にあるお店で、冒険者用に野菜やスープ、肉などを乾燥させたものを取り扱っているお店。

俺達はストレージがある為にそういうのは使わないから立ち寄ることのなかったお店。

でも、こんなに近くにあるなんて……。


納得いかねー!

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