第660話 親バカも盲目みたいね。的なお話
〜アカネ視点〜
「話の方はもういいのか?」
「うん。」
「そうか。それで、この人はどうする?」
「あー……お母様、泊まるところは決まっていたりするんでしょうか?」
「まだ決めてないわね。この街についてすぐにここに来たものですから。まあ、あなたが朝帰りするとは思っていませんでしたから驚きましたけど。」
「あ、朝帰り!? ち、違うから! そういうのじゃないから! ただ単にギルドに行った帰りなだけだから!」
「ええ、分かっていますよ。そもそも時間としてもそろそろお昼ですから。」
「〜〜〜〜!」
お母さんは!
本当にお母さんは!
娘をからかって楽しいのかしら!
「アカネをからかうのはまた後でするとして……」
まだするの!?
「宿に関してはまだ決めていないわね。この後はこの街の太守様と面会して目的を伝えて、その際にどこか良いところはないか聞く予定よ。」
「そう……流石にここじゃ無理でしょうし、泊まる場所が決まったら教えてね。」
「もちろんよ。」
「んっ……んぅ……はっ! アカネは!? おお、そこに居たか! さあ、帰るぞ。」
「だから嫌って言ったでしょ。」
「やはりそこの男が原因か!?」
「そうよ。」
「なんだと!?」
「え!?」
お父さんだけでなくレントも驚いている。
まあ、それも仕方ないけど。
「あ、アカネ? 急に何を言っているんだ? というか、俺を巻き込まないでくれないか?」
「巻き込むも何も……」
ここで私は体ごとレントに向き合う。
やっぱりこういう事は面と向かってちゃんと言うべきだろうからね。
「はっ! や、やめろ! そこから先は言うんじゃない!」
お父さんは私が何を言うのか気づいたようで止めようとするけど、私はこんなところで止めるつもりはないわ。
もう決めたから。
「だって、私はレントのことが好きだからよ。」
「え? アカネが、俺の事を好き?」
「そうよ。」
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
お父さん……ちょっとうるさいんだけど。
「決闘だ! レントと言ったな。私と決闘しろ! そこで貴様を完膚なきまでに叩きのめし、無様な姿を晒させて幻滅させ、娘がここにいる理由を無くしてくれる!」
お父さん……本音言い過ぎで引くんだけど。
どんだけ親バカなのよ。
というか、そもそもその話受けたとしてもこっち側になんのメリットないんだけど。
それに、今はちょっとアレだけどお父さんは強い。
ユースティアは武官の家で父も幼い頃から鍛錬を積みBランク相当の実力を持っている。
それに、父は騎士。
騎士は対人戦のエキスパートであるのに対して、私達の冒険者は対魔物が主流で対人はせいぜい盗賊と戦う時くらいだろう。
その差は大きい。
メリットが無い上に、相性の悪い相手と戦うのは下策すぎる。
お願い断って。
そもそも受けるメリットなんか無いんだから、受ける必要ないのよ。
だから断って、レント。
「この決闘、受け…「受ける必要ありませんよ。」…ま? えーと、アカネのお母さん?」
「アリエルですわ。気軽にアリエルさんとお呼び下さい。」
「は、はぁ……。」
「それであなた……一体何を考えているのかしら? その条件ではレントさんが決闘を受けるメリットがありませんよ。そんなのでは受けるはずがないでしょう? そもそも、決闘とはいえあなたは子爵家当主。そんな相手と決闘して怪我を負わせたらと相手が思うのが普通です。そんなので決闘になるわけがないでしょう。それとも、それ考えての提案なのかしら?」
「そ、それは……。」
「大体、私達はこれから太守様に挨拶をしないといけないのですよ。そんな時間があるとお思いまして?」
「ぐっ!」
「分かったのならさっさと行きますわよ。」
そう言いながらお父さんを引き摺るお母さん。
お母さん、なんだかパワフルになってるですけど。
借金生活が母をここまで変えたのかと思うと、なんだか申し訳なく思えてくる。
「それではアカネ。また後で会いましょう。宿は決まり次第使いを出しますね。」
「じゃあまたね、アカネ。」
「絶対に諦めんぞーー!! アカネーーーーー!!!」
恋は盲目という言葉があるけど、親バカも盲目みたいね。
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