第657話 貴族が泊まるような所ではないはずだが……。的なお話
アデラードさんに連れられてギルドマスターの部屋へと行く。
なんていうか、ここにもだいぶ慣れたなぁ。
普通ならこういう所は縁がない筈なんだが……随分と気軽に連れて来られるもんだ。
まあ、婚約関係の様なもんだしそれもおかしくないけどさ。
「じゃあ、これが護衛の依頼報酬だね。」
「ありがとうございます。」
「全部で50万入ってる筈だから後で確認してね。」
「はい。」
「それで、護衛してみてどうだった?」
「そうですね……特にすることがなくて暇でした。」
「あははははは! まあ、そうなるよね。偶に冒険者同士で俺が買うんだ、いや俺がって、喧嘩しててそれが飛び火してくるのを守るとかはあるけど、基本はそんなものだよ。そもそも私に何かしようとする奴自体あんまりいないしね。」
「やっぱそうなんですか。」
「後は、私を迷子や興味本位で来た子供と勘違いする子に説明したりとか……。」
「あー。」
「今納得したでしょ。」
「いや、その、はい。すみません。」
「素直でよろしい。みんなはどうだった?」
「僕もレントと同じですね。あ、でも奴隷の子で何人か可愛い子がいたなっ思いました。レントが動かなかったのは残念でしたけど。」
「ちょっと待て。なんでそんな事になるんだ?」
「え? やっぱりもっと多いほうがいいかなって。」
「なんでそうなるの!?」
「まあ、気持ちはわかるけどね。」
「わかるの!?」
アデラードさんもハーレム肯定派だった……。
「強い男、お金のある男、かっこいい男。この辺の男の周りには女の人が集まる傾向にあるよね。」
傾向よりも俺のことを考えて欲しい。
俺は別に増やしたいとか思ってません。
なので、増やそうとしないでくれるとありがたいです。
「そもそも、宿住まいなのにこれ以上メンバー増やしてどうすんのさ。今でさえ部屋を3つも借りてる状態なんだぞ。」
「それもそうだね。」
「部屋のことが気になるなら家(うち)に住めばいいじゃない。」
内弟子というやつか?
寝食を共にすることで絆を深め、より深く教えを受けられるようにするっていうあの。
「それはダメ!」
「どうしたリリン?」
「それだとエッチできない。それは死活問題。」
「「確かに!」」
そこ、頷かない。
全くセフィアとルリエは……俺が恥ずかしいんですけど。
「あ、あはは……ま、まあ、家はいつでも大歓迎だから、気軽に来てよ。」
「は、はい。」
「レント、そろそろ帰ろう。あんまり仕事の邪魔するのもよくないし。」
言われてみればその通りだった。
シアには感謝だな。
「そうだな。それじゃアデラードさん。俺達はこれで。」
「うん。あ、明日は訓練するからいつもの時間、いつもの場所でね。」
「分かりました。」
ギルドマスターの部屋を出る。
この後どうしようか……。
明日から訓練するわけだし、昨日も仕事があったし、今日はのんびり過ごすか。
朝もちょっと疲れることあったし。
そう思って宿レイランへと向かい、後少しというところでふと気づく。
レイランの前に装飾が多く、いかにも貴族が乗りますよ〜って感じの馬車が停まっていることに。
貴族が何の用なんだろう?
ここはいい宿だけど、貴族が泊まるような所ではないはずだが……。
「え、ちょっと待って。あの家紋……嘘でしょ?」
「アカネ?」
何やらアカネが信じられないといった雰囲気で呟く。
アカネ+貴族=…………まさか!?
「アカネ? おおーー、アカネ! 無事だったんだな!」
「お父様、お母様!?」
やっぱり……。
貴族様の正体は、アカネのご家族でした。
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