第653話 そんで、さっさと付き合う! 的なお話

妙な悪寒が体に走ったが、だからといって護衛の仕事を辞めるわけにはいかない。

悪意感知を再度確認するが、特に何も反応はない。

リリンにも聞いてみるが特に怪しい反応はないそうだ。

悪寒の正体は分からないが……今は気にしないでおこう。


「これはこれはエリュシオン殿。ようこそおいで下さいました。」

「うちの子達は何か迷惑とかかけてないよね?」

「ええ。今の所は何も問題はありませんよ。それよりも、是非エリュシオン様に見て欲しい奴隷がいるのですよ。」

「う〜ん。でも今は特に人手が欲しいという事も無いしなぁ。」

「まあまあ、そう仰らず、自慢の子達ですから見るだけでも。それに護衛の方も欲しい子がいるかもしれないですし、ここは器の大きなところを見せるのも為政者として必要な事ですよ。」

「そこまで言うのなら見させてもらうよ。」


俺、別に奴隷なんていらないんだけど。

でも俺はただの護衛。

アデラードさんの行動に口出し出来ない。


そうして見せられる奴隷達はどいつもこいつも美男美女ばかり。

男奴隷は一応戦闘もこなせるらしいのだが、何を目的として選ばれたのか丸わかりだな。

ちょっと、いや、かなりイラっとくるな。

アデラードさんは俺のだ。

お前らなんぞにやらん!


その一方で女奴隷は俺のことをじっと見てくる。

人族の割合が多いが、犬耳ッ子や猫耳っ子のような獣人さんもいる。

その人達がじっと見てくる。

ちょっと怖い。


女奴隷は猫耳っ子がバランスの良いスタイルをしており、犬耳っ子は胸はAに届くかどうかというところだろうが全体的にスレンダーでスポーティーな感じ。

そして人族の人達は所謂男好きのする体といったところでバインバインである。

でもまあ、顔が綺麗ではあるが妖艶っていう感じで好みから外れている。

ちなみに俺は巨乳好きでも貧乳好きでも無い。

ネ◯ま! の乳神様がおっぱいに貴賎なしって言ってた。

まさにその通りだと思った。

胸は女性の魅力の1つでしかなくそれだけで女性を選ぶのはどうかと思うし、大きい胸にも小さい胸にも普通の胸にも魅力があるんだろうと読んだ時に思ったもんだよ。

実際に触れてそう思ったしな。

それに胸の大きさだけならルナも負けてないし。


そんな感じでただぼんやりと考えていると、食いつきが悪いと思ったのか他の奴隷と入れ替えようとする。

しかしそこにアデラードさんが待ったをかける。


「ああ。申し訳ないが、まだ他に回らないといけないところがあってね。私はここで帰らせてもらうよ。」

「そう……ですか。」

「すまないね。うちの子達が何かしてないか気が気でないんだ。」

「そういうことなら仕方がありませんね。」


冒険者をダシにして逃げ出すアデラードさん。

まあ、気持ちはわからないでもないが、さすがに何もしないだろう。

アデラードさんに躾けられているだろうし。


そして、こんな感じのやり取りを繰り返すこと数回。

勿論出てくる奴隷は変わってるけど、俺に対して美女を、アデラードさんに対してイケメンを出してくる。

俺は男だしそういう系が出てくるのはわかるが、アデラードさんには……な。

あわよくば親密な関係を築けたらなを ……という思惑が透けてみえてもう〜イラっとする!

アデラードさんは俺のなのに!

くっそ!

明日から頑張って早くランク上げてやる!

そんで、さっさと付き合う!

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