第639話 アルバの為にも柔軟頑張ろう。的なお話
高級紅茶ルビーレッドを美味しく頂いた。
当初は高級紅茶ということでモルト商会で購入しても偶の楽しみとして飲んでいたが、随分と儲けらるようになったからなぁ。
普通に注文してたよ。
ポットに入った状態で1000リムもしたのにな。
そして、お茶も飲み終わったのでアルバ達の元へと戻ると、何故か二頭が馬達に追っかけられていた。
何事?
「あ、ジュネーシアさん。これは一体……?」
「えーと、あの二頭が他の馬達に大層モテてしまっていて、ああして追いかけられている。」
「そ、そうですか……。」
どうやらあの二頭は馬からしたら大変魅力的なようだ。
ん?
あれ?
なんか、馬以外も混じっている?
真っ白い体毛にひたいにキラリと光る透明感のある角…………って、あれユニコーンじゃねぇか!?
「またあのバカ馬は! ちょっと失礼させていただく。」
そう言ってジュネーシアさんは馬達の方へと駆け出して行く。
バカ馬ってどの馬のことを言っているのだろうか?
って、そんなこと呑気に考えている場合じゃない!
うちの馬が狙われてんだ!
助けなきゃ!
俺とシアも慌てて追いかけると、こっちに気づいたらしいアルバとマロンが方向転換をしてこっちに向かってくる。
そうすると、アルバとマロンを追っている馬達もこっちの方に走ってくるわけで……その、迫力が半端ないです。
その一方で、方向転換をした馬達の動きについてきて、そのまま目当ての馬を蹴り飛ばす。
その馬は白くて角の生えている……まあ、要するにユニコーンだ。
幻獣として有名なユニコーンを蹴り飛ばすとは……。
そうしている間にアルバ達は俺の元に駆け寄り、そのまま俺に隠れるように後ろに。
いや、図体がでかいんだから全然隠れられてないから!
というか、本当に頭いいな!
『『『プルルルル、ブヒン、ブヒヒヒヒン!!』』』
うん。
何言ってるかわかんねー。
とりあえず、追い立てて敷地内からユニコーンを追い出そうとしているジュネーシアさんを待とう。
このままじゃ何も進まない。
今も馬達はこっちを睨んできてるし。
「突然すまない。あのバカ馬は野良でして、どこからともなく現れてうちの馬達を襲うもので……。様々な方から預かっていたりするので迷惑なのですが、どうやって街中に現れているのかもわからず対処のしようもなく……。」
「は、はぁ……。」
ユニコーンって、そんな下種な生き物だったのか……。
うちの子達も無事でよかったよ。
とりあえず塩でも撒いておこうかな?
いやでも、こっちでそれをして通じるかどうか……。
塩って結構高いし。
輸送に時間がかかるからかな。
「それは分かりました。それで、この馬達は何を言っているのでしょうか? 通訳をお願いできますか?」
「分かりました。」
ブヒンブヒン、ブルブルと鳴く馬達とふんふんと話を聞くジュネーシアさん。
「人間が何の用だ? 俺達はそこの女に用があるんだ。人間は引っ込んでろ! と、言っています。」
『『ブルルル、ブルン!』』
『『(ブヒヒーーーン!!』』』
「タイプじゃないんで。と返事をし、それを聞き、泣いてます。あ、逃げた。」
全部同じ顔に見えるが、やっぱり違いはあるのか。
「明日レースなんだが、大丈夫なんだろうか……。」
レース前日にナンパかよ!
しかし、どうしよう。
ちょうどいいしこのまま乗馬の訓練をしたいと思っていたんだが、ナンパされたばっかりだし、負担をかけていいのかな?
ジュネーシアさんに聞いてもらおう。
「大丈夫だと言っている。それ以前に、やっと乗ってもらえると喜んでいるぞ。」
大丈夫らしい。
というわけで早速シアにレクチャーをしてもらう………はずだった。
こ、股関節が……。
「大丈夫? 降りられる?」
「な、なんとか……。」
計算外だった。
このグルーム種という馬は普通の馬よりも図体がでかく、力強い。
だから乗馬よりも馬車を引くのに向いている種なのだが、馬なので一応乗馬も出来ると聞いていた。
だから練習したかったんだが……図体がでかいから足も大きく開ける必要があって、股関節が耐えられなかった。
「ごめんな、アルバ。どうやら股関節の柔軟から始めないといけないようだ。」
『ブルル……。』
あ、これは訳してもらわなくてもわかるわ。
そんな……って言ってる。
このままがっかりさせたくないし、アルバの為にも柔軟頑張ろう。
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