第626話 明日みんなに提案してみるか。的なお話

カランカランと音がする。

鳴子の音だ。

俺は今、鳴子を片付けている所。

身の危険を感じたので念入りに、本当に念入りに鳴子をセットしたのだが、その甲斐虚しく何もなく一夜が過ぎた。

いや、襲って欲しかったわけじゃないので良かったんだけど、それでも徒労感がね。


片付け終わった頃に奴等が帰ってきた。

うん。

また集りに来たよ。


「また来たぜ。」


また来たぜ。

じゃない。

そうなる気はしてたから多めに作ってもらってたけどさ。

もうちょっと遠慮って言葉を理解してほしいものだ。


朝食を終え、カルロ達と別れる。

だが、その前にカルロがこんなことを言って来る。


「晩飯も頼むわ。」


いやいやいや!

どんだけ図々しいんだよ!?


「夜には別のセーフティーエリアに行ってるからそりゃ無理だろ。」

「そうだといいな。じゃあな。」


何言ってんだ?

そうだといいなじゃなくて、そうするんだよ。

8階層からの階段を下にした場合の下半分を今日中に探索するつもりだから、ここに戻って来るわけないだろ。

セーフティーエリアを野営地にするつもりだし。


ま、いいか。

どうせ無理だし。

そんな事は頭の隅に追いやってさっさと探索に移ろう。


昨日の続きから探索をする。

ゴブリンナイトが複数で現れたのでサクサクと処理していく。

上位種であろうと、所詮はゴブリンだ。

このくらい余裕。

何回か通路を曲がり、部屋の中を覗くとそこには宝箱が。

リリンに確認すると魔物の反応があるとのことで、剣でドスっとやる。


「まともな宝箱はないのかよ。」

「まあ、こればっかりは運だししょうがないよ。」


セフィアに慰めてもらいつつ魔石とドロップアイテムを回収する。

ドロップアイテムは『木片』。

……せめて『ミミックの』という文字を入れてやれよ。


遭遇する魔物は全て倒して進んでいく。


「「「ぎゃああああああああああ!!!」」」


途中で現れるGも俺とアカネ、蒼井は叫び、セフィア達が処理してくれる。

そんな感じで途中お昼休憩を挟みつつ探索を進めていく。

そして、そろそろ野営をと思いセーフティーエリアに向かうのだが……何これ?

めっちゃ人いんだけど?

どっから湧いた?

とてもじゃないけど、ここで野営なんて無理だ。

カルロが言っていたのこのことか。

悔しいが、こんな所じゃ野営ができないので仕方なく階段前へと戻ることに。

とでもいうと思ったか、馬鹿め!

フハハハハハ!

ここがダメなら他に行けばいいだけだ! …………と、漫画のちょっと捻くれた主人公なら言っていただろうな。

だが、俺はそうじゃない。

どうせ、他も人がいっぱいだろ。

だから行くだけ無駄さ。


「お、来た来た。何もしないのは流石に悪いと思ってよ、石でかまどを作っといたぞ。」

「そうか。ま、それくらいはやってくれないとな。」

「なんだよ。礼は無しか。ま、いいけどよ。それより、何故こっちに来ることになったのか、分かるか?」

「ああ。どうせ、奴隷市に合わせてダンジョンに潜ってた連中が帰って来たってだけだろ。後は、奴隷を買おうと必死な連中が最後の金策に走ってるってところか。」

「分かってたか。」

「まあ、あんだけ男ばっか居ればな。あんな所、セフィア達を連れて行けるかよ。」


奴隷を欲してるような奴らばっかだからな。

そこに美少女を連れて野営とか、良からぬことを考える奴が現れるかもしれないし、そんな危険な所行けるわけがない。


カルロ達を交えての夕食を済ませて野営に。

金策してる奴らがいるということを考えると探索してもあまり成果は出ないと思うし、さっさとボスを倒して帰ろうかな。

とりあえず、明日みんなに提案してみるか。

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