第617話 みんなと相談するか。的なお話
夕食を終え、見張りをするが、特に何もない。
本当に何もなかった。
階段前というセーフティーエリアにいるということで魔物が現れることもなかったし、深夜故に冒険者がフラッとやって来ることもない。
何もない平和な一夜だった。
そして朝食を済ませて再び探索に。
今回の目標というか、制限として10階層までなので、そろそろ本格的に探索でもしようかという話になった。
というか、予定よりもだいぶ早い。
予定では10日だったからかなり、ね。
そんなわけなんで探索をする。
「宝箱とかあるといいんだけどねー。」
「ユウキ。そう簡単に見つかってたら誰も苦労しないと思うよ。」
「分かってるって。でも、期待する分には問題ないでしょ。」
「まあ、そうだけどね。」
期待する気持ちは分からなくもないが、こんな浅い階層では大したものは出ないだろう。
初心者ダンジョンではルビーの原石が出たけど、あれはレアな方だろう。
ここなら……なんだろ?
川原の石とかかな?
「魔物。」
リリンの合図で全員警戒態勢へ。
現れた魔物はこれまた因縁深いオーク。
道の角から現れたところをシアが正確に右眼に矢を突き立てて終了した。
と思ったが、他にもいたようで武器を振り上げながら襲いかかって来る。
「遅い!」
リリンと一緒に飛び出し、ウルなんとかの剣で斬り裂いていく。
警戒態勢の時に魔力障壁を左腕に纏わせてはいたが、なんかちょっと怖いんで防いではいない。
多分大丈夫だとは思うんだけど、それでも剣を受け止めるというのは抵抗がある。
だからオークの攻撃は躱し、そのまま反撃をして戦闘を終わらせた。
「シア、ルナ。大丈夫か? 前にも倒してはいるけど、時間経ってるから聞いておくが、妙な動悸とか体が震えるとかそういうことはないか?」
「心配し過ぎよ。何にも問題ないわ。」
「私も、大丈夫だよ?」
「それならいいんだが……無理しないようにな。もしも何か違和感を感じたらすぐに言ってくれ。すぐに引き返すし、なんだったらリリンに頼んで転移魔法で帰ることだって出来る。だから遠慮なく言ってくれ。」
「だから大丈夫だって。逆に言いづらくなったわよ。どんだけ心配してるのよ。」
「そりゃ心配するさ。大切な人なんだからさ。」
「あ、ありがと……。」
「はいこれ! オークの魔石とドロップアイテム。それと、イチャイチャするのもいいけど、時と場所を考えてよね!」
「お、おう……。」
蒼井が何故か戦利品を渡してきたが、その際に言ってきた言葉に棘がある。
あれかな?
独り身故の僻みかな。
それからもサクサクッと進む探索。
途中で魔物も現れるがそっちも探索と同じようにサクサクッと終わらせていく。
現れる魔物はオーク、ゴブさん、コボルトのど定番に、狭い通路だと脅威に……ならなかった普通の色のトライデントボア。
横に逃げられないけど、それは相手も同じだから魔法がすごく当てやすかった。
初めて見る魔物もいた。
赤いだけが特徴のレッドモンキー。
別に普通の猿の3倍素早いということもなかった。
十字蛾。
十字の模様がある大っきい蛾。
毒はないっぽい。
浅い階層なだけあってどいつもこいつも強みが無い魔物ばかりで凄く楽だ。
これまでと違って最短ルートではなく適当に曲がったりしてるからよく魔物と遭遇する。
最短ルートはよく人が通るからか狩られていたり、魔物が学習したりであんまり遭遇しないから、ようやくダンジョン感を感じることができている。
うん。
やっぱり適度に魔物と遭遇して戦闘してこそのダンジョンだよな。
「レント、そろそろお昼だしセーフティーエリアに向かおうか?」
「そうだな。みんなもそれでいいよな?」
みんなも賛成なようで、セフィアの指示のもと、セーフティーエリアへ向かう。
場所的には以前シア達が立て籠もった場所の反対方向だな。
「ーーーーーー!」
「ーーーーーーーーー。」
セーフティーエリアに近づくと話し声が聞こえて来る。
流石に何を言ってるのかは分からないが、緊迫した雰囲気というわけじゃなさそうだし、一安心だな。
でも、こういう時ってどうするのが1番なんだろうか?
普通にセーフティーエリアに入らせてもらうのか、それとも出ていくのを待つべきなのか……いい人なら入っていってもいいが、柄の悪いのだとちょっと心配だ。
とりあえず、みんなと相談するか。
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