第596話 みんなの方を見なくていいのかな? 的なお話
今日は訓練4日目だ。
だが、それよりも重要な事がある。
それはアイリスさんの事だ。
アイリスさんはアデラードさんに恐竜の皮を押し売りされた結果生活がちと厳しくなった事があり、その際に俺が当面の生活費としてお金を貸したが、それも無事に帰ってくる。
つまり、今日から恋人ということになるのだ。
ど、どうしたらいいんだろうか?
初夜ってわけにはいかないだろう。
そういうのはもう少し順序とか段階とかそういうのがあってからだし、な、何をしたらいいんだ?
今までのことを振り返って、こういう時にどうすれば………セフィアとリリン、ルリエには、初っ端から襲われたっけなぁ……。
シアとルナの時も、初デートしたらリリンが朝帰り必須とか言ってきて、シアとルナがそういう意図の事を言ってきたんだよなぁ。
そういえば、レイダさんも一歩踏み込んで見ようと思って、その結果無事に恋人になったと思ったら、セフィア達がレイダさんを夜のアレに誘ってたんだよな。
当日に……。
「レント、そろそろ行くよー。」
…………………………。
これって、よく考えなくても、軽率にもほどがあんだろーーー!!
なんなの俺!?
付き合ってすぐに手を出すとか、どんだけだよ!
いや別に、俺からそうしようと思ったわけじゃないよ!
でも、早過ぎんだろ!
決めた!
「レントー? どうしたの?」
今度こそ!
いや、今度こそって言い方はあまりよくないが、それでも、今度こそ、もっと健全に、順序を大事に、段階を踏んで恋人としてステップアップしていく!
「レントってばー。」
「うおっ!? な、なんだ、セフィアか。一体どうしたんだ?」
「どうしたって、そろそろ行かないと。」
「え、あー、もうそんな時間か。じゃあ行くか。」
考え事してたらいつの間にかそんな時間に。
迎えに行くべきかどうかとか、考えなくてはならないけど、それはそれ。
今は訓練の方に集中だ。
余計なこと考えているとか言われて厳しくなられても困るからな。
「今日はちょっと遅かったね。」
「あー、すみません。ちょっと考え事をしてたら遅れました。」
「ふーん。ま、ちゃんと集中してくれるなら構わないけど、次からは気をつけてね。」
「はい。」
そして開始される訓練。
午前は近接、午後は魔法。
午前はいつものようにランニングから始めて、模擬戦模擬戦、ひたすら模擬戦。
元々なんらかの流派を習っていたわけじゃないから、型の訓練とかしてもかえって悪影響を及ぼすとかで、とにかく戦闘勘とか、とっさの判断力とかを鍛えるらしい。
悪い所はアデラードさんとの模擬戦で物理と言葉で教えられる。
そしてギルドでお昼を食べてからの午後の訓練。
まだ4日目なので出来るようにもコツを掴んだりとかはないが、それでも、なんとかそれらしい変化の兆しを見せるようになってきた。
「うん。いい感じ。そのまま魔力を手に集めて…………そう! 今見て! ほんの少しだけど、景色が歪んでるよ!」
アデラードさんの言う通り、ほんの少しだけど、確かに景色が歪んで見える。
「それを少しずつ薄くして………違う! 魔力量はそのままに密度を上げて!」
「は、はい!」
薄く、それでいて魔力量は減らさずに、密度を上げて……。
バーストバレットの時はレ◯ガンというイメージの元があったからなんとかなったが、今回は魔力の圧縮のみな為にいまいちイメージが出来ない。
バリア系の奴も今やっていることとはちょっと違うから参考にならない。
ただ、感覚を掴むしかないのだ。
…………それが1番難しいのだけど。
視覚的にも変化が分かりづらいのも感覚を掴みにくい原因。
「あっ……。」
「あ〜。失敗だね。でも今までで1番良かったよ。」
色々考えてしまい、集中が乱れてしまったようで、魔力が霧散してしまった。
「今の感覚、覚えてる?」
「残念ながら……あまり、覚えてません。」
「そっか。それじゃ、また1から頑張ろう。1度コツを掴むと一気に上達して行くから、それまでの辛抱だよ。大丈夫。さっきいいところまでいったんだし、すぐに分かるようになるよ。」
アデラードさんがマンツーマンで教えてくれるので、少しずつだけど、上達していくことが出来てる。
ところで、みんなの方を見なくていいのかな?
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