第595話 なんかちょっと可愛くね? 的なお話
さあ、今日も訓練頑張るぞ! と、意気込んできてみれば、アデラードさんは仕事があるとかで手が離せないらしい。
で、来れないアデラードさんの代わりにエリーナさんが訓練を見てくれるとの事。
その訓練は厳しいの一言に尽きる。
しかし、ただキツイだけではなくいい動きをしたらその都度褒めてくれるのでモチベーションが下がる事はなく、必死になってついていった。
ちなみに、スポドリ風ジュースも褒められた。
そんな感じに訓練をしていたら突然背中に軽い衝撃と何かが乗ってきたような感覚が……。
「ちゃんと頑張ってるようだね。感心感心!」
俺は今は座って精神集中をしていたので、立っている俺にコアラのようにアデラードさんがしがみつくといった、大変危ない絵面じゃないですよ?
なので俺をロリコンとは呼んでくれるなよ?
「アデラードさん? 仕事の方はいいんですか?」
「うん。木っ端役人の伯爵が来てたけどさっき帰ったからね。問題ないよ。」
「伯爵なのに木っ端役人なんですか?」
「うん。だってここはこの国の魔石産出量が全体の半分を占める重要な街だからね。そんな所を領地として与えるなんて国としてあり得ないよ。だからここは国の土地で、その統治には王都に住む領地を持たない、ある程度信頼の置ける伯爵以上の貴族を派遣しているんだよ。それに5年くらいで任期満了して交代して次の人が来るしね。」
へー、ここってそんなシステムなのか。
でもそれだと、人員交代の時に他国から攻められたりしないのかな?
統治体制がコロコロ変わるし、就任したばかりの人は人心掌握とか全然できないだろうから防衛しようにも浮き足立ったりしそうだし。
あ、以前アデラードさんはダンジョンの魔物が溢れたりした時の為の戦力みたいなことを言ってたけど、一番の目的は他国からの侵略を防ぐ為だったりするのかな?
………………それはないか。
だってアデラードさんだし。
「他国から攻められたりとかしないんですか? 交代の時は隙だらけだと思うんですけど。」
「それも問題ないよ。ちょっとややこしいんだけど、軍部と太守は管轄が別なんだよ。太守も貴族だし街のトップだからある程度自由に使える兵はいるけど、街の巡回や防衛を担う軍は別のトップがいる独立した組織なんだ。だから、何の問題もないんだよ。」
「なるほど。じゃあ、安心ですね。」
「そうだよ。そもそも、130年前の魔族領お腹すいた戦役以降、大きな戦争は一度もないよ。領地と領地でのいざこざはあるけどね。」
お腹すいた戦役って……。
以前セフィアから食糧難から戦争を起こしたって聞いたことあったけど……その名称はどうかと思うよ……。
「ちなみに、当時の太守は戦後の復興で色々と忙しかった関係で交代するまでの期間が長くて、その時にまあ、横領とか色々やっちゃったんだよね。それで、更にゴタゴタしちゃってね。その関係で、軍の指揮権を太守から切り離したんだよ。代わりに来た人が泣きながら書類の処理をしてたし、その上で軍関連の事までやってたら、多分死んじゃってたかもね。」
……笑えない話だ。
その当時は難民や盗賊も多そうだし、それらも含めて対処してたら体がいくつあっても足りない状況だった事だろう。
そこに更に軍の奴もやってたら過労死確実だな。
ブラック企業も真っ青な暗黒仕事って事かね。
「ま、歴史の話はここまで。そろそろ訓練も切り上げよう。」
「まだ訓練は残ってたんですが……仕方ないですね。アデラード様が訓練ムードを消し飛ばしちゃったわけですしね。」
まあ、うん。
訓練の為にしてた集中は完全に雲散霧消しちゃってるね。
ここからまた集中しろといっても、訓練終了までの間に集中できる自信はないね。
「じゃ、ちょっと早いかもだけどご飯食べに行こう!」
「それはいいですけど、汗とか汚れを流してからでいいですよね?」
「うん。もちろんだよ。」
というわけで、一旦レイランに戻り、汗を流し服を着替えてからアデラードさんと合流して夕食へ。
アデラードさんオススメだという高級感あふれるお店を紹介してもらった。
一見さんお断りの本当に高級なところだった。
庶民な俺達には縁がなさそうな店だっただけに恐縮しそうなものだが、何故か今日のアデラードさんはいつも以上にベタベタしてくるので、そんなことを考える余裕はなかった。
あれ?
今日のアデラードさん、なんかちょっと可愛くね?
そんな感じで今日も平和な1日だった。
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