第591話 厳しくないそうです。的なお話
みんなで情報のやり取りをしながら訓練をすると楽しいし効率もいい気がする。
シアとルナが体の周りの景色を歪めてた奴は意外と魔力量が少なく60ちょいだったらしい。
というわけで、俺は手に纏わせるだけなのでかなり少なくして大体10くらいにする。
キッチリ10じゃないのは魔力操作が不得意でたまにバラつくから。
ま、まあ、それはいいとして。
集めた魔力を手の表面に薄くのばすとにかく薄く、薄く……使う魔力を減らさずに、薄く……圧縮する……。
くっ!
やっぱり上手くいかない。
「よし、かなりそれっぽくなったはず……って、あれ!? 動けない!? って、あ、動ける……。今のは一体、なんだったのかしら?」
「……………魔力を固めてるんだもん。そりゃ、体に合わせて纏えばそうなるよ。」
どこからともなくそんな声が聞こえてきた。
発生源は後ろの方で丸くなってる物体……アデラードさんだ。
なんかよく分かんないけど、さっきからあんな感じになってて、しかも定番の指で地面をぐるぐるとやるやつをしてる。
「自己鑑定あるならさ、言ってくれればいいじゃん。なんだよ、みんなして黙っててさ。それがあればより個人に合った訓練とかできるのにさ……。」
い、いじけてらっしゃる……。
「え、えーと、アデラードさん?」
「何かなー? 私1人除け者にしてスキルのことを黙ってたレント君?」
うっわ!
すっごい良い笑顔!
でも怖い!
今のこの状況とこのセリフだと、この笑顔がすっごく怖い!
「いや、その、ですね……別に黙っていたわけじゃなくて、ただ単に言い忘れていたというか、言う習慣が無いというか……」
「だからって、教えてくれても良いじゃん。私みんなの師匠なんだし……大体、なんで10人全員が自己鑑定持ってるのよ! 自己鑑定は鑑定系の中で1番習得しやすいスキルだよ。でも、だからって全員が持ってるなんておかしいよ!」
俺はステータス鑑定ですけどね。
ま、それは置いといて。
何故全員が持っているのかの答えを教える。
「アリシアさんにもらいました。」
「あ……そうなんだ。」
一瞬ポカンとしたけどすぐに納得したような表情になった。
アリシアさん、本当に親切にしてくれるからそういうのもありなのだと分かってくれたことだろう。
「ちなみに、他に何かもらってたりする?」
「加護と異世界言語適応と超隠蔽ですね。それ以外に俺だけストレージっていうアイテムボックスの最上位スキルと思えるスキルと武器ですね。まあ、ストレージはかなり便利ですけどアイテムボックス持ちが普通にいるのでそこまでズルって感じじゃないですよ。それに武器もアリシアさんが打った奴ですから神授の武具って訳じゃないです。」
チートと言って通じるか分からないからとりあえずズルで。
武器に関しても、多分凄いドワーフとかなら同程度の性能の武器を打てるだろうし、ダンジョンの深奥とかならもっと凄い武器が見つかるはずだ。
だからそこまでチートじゃない。
「何それ……。ちょ、ちょっと、武器とか見せてくれないかな?」
「いいですよ。」
じーーーっと武器を検分するアデラードさん。
それを1分ほどした後、深く、それはもう深〜く溜息を吐いた。
「確かに、聖剣のような馬鹿げた性能じゃない。ドワーフの中でもトップクラスの職人が作った剣やダンジョン産の魔剣よりも数段劣ってる。でも、十分に凄い武器ではある。ひょっとして、全員がこれくらいの武器を……?」
「まあ、そうですね。」
「あははは………………はぁ。なんか、もう、どうでもよくなってきた。とりあえず、レント達は隠さないといけないことがあることは分かったから、無理に追求はしないでおくよ。でも、言える範囲でいいから教えてね。そっちの方が訓練をしやすいから。」
「分かりました。」
基本的なステータスやスキルなんかを紙に転写して見せる。
超隠蔽の事はさっき言ったし紙にも書いてあるから、全部が全部正しいというわけではないということは分かるだろう。
それらを軽く見た後アイテムボックスにしまい、訓練を再開すると宣言した。
あれ?
「これは今後の訓練に活かすけど、今は魔力障壁だよ。さっきので少し時間を使っちゃったから、厳しめにいくよ。」
「「「えーーー!?」」」
アデラードさんは言葉違わず、本当に厳しくなった。
「アレクシアとエルナはもっと体から離して展開して! それだとさっきみたいに動けなくなるよ。レント! 魔力量が少ない! 部分的に展開するなら動きはあまり阻害しないからもっと魔力を込めてガンガン硬度を上げて! 多少圧縮が甘くても魔力量が多ければ敵性魔法と干渉して効果を弱められるから!」
厳しい。
ひょっとしてさっきの仕返しで俺だけ厳しくしてる?
「あの、俺だけ厳しくないですか?」
「厳しくない。」
厳しくないそうです。
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