第578話 新鮮で楽しかった。的なお話

料理もあらかた無くなったタイミングでデザートが運ばれてきた。

いやいや、そんなのも作ってたんかい!

料理自体結構な量あったよ。

それなのにデザートまで用意するなんて、凄いな。

というか、それにも気づかずにずっと本読んでたのかよ、俺……。

もう少し、周りのことを気づけるようになりたいな。


「レント〜、これも食べて。」

「セフィア、ひょっとして、飲んでる?」

「チョットだけね。」


頬が紅潮しているセフィアは少々緩んだ笑顔とともに指でチョットだけと示す。

それがまあ、なんともかわいいことで。

そんな仕草をされるもんだからドキッとした。


「レント、こっち食べて。フランベルに教わって一生懸命作った。普段はあまりデザートとかを作れていなかったから、レントに食べてもらいたくて頑張ったんだよ。だから、食べてくれると嬉しいな。」


あ、リリンも飲んでる。

でもまあ、そこまでたくさんじゃないようで良かった。

もっと飲んでいたらお部屋に連れ込まれていたところだろうし。


「だ、誰ですの!?」


ナタリアさんが驚いている。

気持ちは分かる。

普段はクールで天才肌で、言葉数少ないリリンが酒を飲むとこんな感じに饒舌になってなおかつ好き好きオーラを大放出するのだから。

まあ、普段から好きだというのはアピールしてはいるけどさ。


「あー、リリンは酒に酔うとこんな感じになるんだ。後、セフィアは甘えるようになったり、蒼井はからみ酒で更に服とか脱ぎだす。他にも色々あります。だからみんなにはあまり飲ませないように。」

「え、ええ。分かりましたわ。」


一応釘を刺しておいたから多分これで大丈夫だろう。


「では、貴方はどうですか? その話に貴方の事は入ってませんでしたが。」

「俺ですか? 俺はそこまで飲んでいないので正直よく分からないです。でも、それもちょっと怖いんで程々にしてますよ。」

「でもまだ大丈夫そうですし、もう少しどうですか?」

「んー、じゃあ、貰おうかな。」


ナタリアさんがワインのボトルを持って聞いてきたのでグラスを出す。

うん。

こういうのはなんか大人な感じがしていいな。


「ところで、貴方達はあまりダンジョンに潜っていないという話ですけど、どうしてですの?」

「最初の方は少し潜ったりしてたんですけどね。でもダンジョン内で事件があって、その後にアデラードさんと会ってなんやかんやあって弟子になったんで、そのままダンジョンに潜る事もなく訓練を受けたり、鍛治のバイトをしたりする日々だったんですよ。」

「鍛治って、何やってるんですの?」

「いやー、狩猟大会で懐が暖かくなった冒険者が武器や防具の新調をするようになって、それでバイトとして暫く鍛治をね。」

「あの時のがそのような影響を及ぼすとは。でも、それはそれで経済が回るので良いのでは?」

「まあ、そうなんですけどね。ちなみに、その時に打った剣の一本が巡り巡って手元にあります。カジノのガチャで当たりました。」

「あー、それは、なんというか、御愁傷様です。」

「魔剣とか欲しかったんですけどね。そういえば、ナタリアさんの槍って白銀でかっこいいですけど、やっぱり結構な業物なんですか?」

「その通り………と、言いたいんですが、残念ながらあれはただのイミテーション。模造品ですわ。本物は実家にあってそちらは魔槍なんです。ですが、あれも魔槍ではなくともそれなりに高価な物なんですのよ。そういう貴方の剣も凄まじい力を感じましたわ。」

「あれは俺に鍛治を教えてくれた師匠みたいな人がくれた物で斬れ味向上、耐久性向上、炎熱耐性がついてて、後ウルなんとかって金属を使ってるって言ってましたね。」

「ウル……聞いた事ない金属ですね。少なくとも魔法金属ではないでしょうが……。ですが、付与効果は単純ですが強いものですわね。」

「はい。いつも助けられてます。」

「と、話が逸れましたわね。ダンジョンに潜っていない理由は分かりましたが、それはいつまでもというわけではないのでしょう?」

「まあ、そのうちアデラードさんが今度からダンジョンに潜るよ。とか言うと思うのでその時に、といった感じですかね。後は、知り合いに一緒にと誘われているのでそのことを伝えて暫く訓練を休ませてもらってからに潜ると思います。」

「そうですか。既に先約がいましたか。」

「ということは…。」

「はい。本当は一度一緒に潜りませんかと誘おうと思っていたんですよ。フランベルと仲良くなっているようですし。でも、それはもう少し先になりそうですわね。」

「すみません。」

「いえ、貴方の責任ではないですし、また誘わせていただきますわ。」


その後もクランリーダーとパーティリーダーとしての話を続けた。

こういう話はあんまりしたことがなかったので、新鮮で楽しかった。

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