第577話 まずは1週間後。的なお話
コースの様に出てくる料理の数々だが、冒険者であるということも考えられているのか、前菜やスープなんかはともかく、それ以外の料理は基本大皿で運ばれてくる。
それをそばに控えているメイドさんがよそって持って来てくれる。
冒険者とはいえ、一応貴族の娘なので大皿から自分でよそってそれにガッつくというのは良くないのだろう。
立食パーティー形式の物もあるかもだけど、今回はそういうのじゃない。
だからその辺の配慮をしてフランベルさんがメイドさんにお願いしてこういう形にしたんだと思う。
まあ、貴族家の当主であるアデラードさんはその辺何にも考えずに自分でよそいに行こうとしてるけど。
「アデル、はしたないですよ。」
「えー、好きなのを好きなだけ食べたいじゃん。」
「自分の立場を考えなさいと言ってるんですよ。ナタリアさん達はもちろん、部下であるリナまでいるのですから。」
俺達はいいんですか?
あ、今更か。
「でも公式の場じゃないし別にいいと思うんだけどな〜。」
「良くありません。ほら、さっさと座って。」
その後もぶちぶちと言うアデラードさんとそのアデラードさんの相手をするエリーナさん。
……………お母さん?
なんていうか、こう、子供のわがままを聞き流すお母さんみたいだ。
「こ、これが冒険者ギルドのギルドマスターと副ギルドマスター……? 前回の時は気さくながらも威厳とか威圧感を感じたのに、本当に同じ人物っすか……?」
残念ながら同じ人物なんだよね。
「あー、最初は驚くよねー。ギルドマスターって言えば荒くれ者の冒険者をまとめてるからもっと厳格な人とか、真面目な人をイメージするよねー。でも、実際は子供っぽいところとかも多くて、そこが可愛いのよねー。」
「か、可愛いっすか? ……確かに、子供っぽいって考えると……そう思えてくるっすね。」
アカネがアイリスさんの驚きに対して同調するのだけど……うーん。
これって、ちょっと酔ってる?
酩酊とかそういうレベルじゃなくて、お酒でいい気分になってるって感じか?
うん。
楽しんでるようで何よりだ。
「それにー、アデラードさんってアイリスさんと同じなんだよねー。」
「同じっすか? 何が同じなんっすか?」
「んー。いやー、流石にここでは無理かなー。言えないなー。」
「は、はぁ…?」
「そういう意味で言えばー、私もそうなんだけどねー。」
「ますます分からないっすよ。」
「今はそれでいいよー。」
なんの話だろうか?
アデラードさんとアイリスさんの共通点はいずれそういうことになるということだけど、そこにアカネも加わるとなると、全く分からなくなるな。
なんだろう?
まあ、無理に聞き出す事じゃないし、軽く酔ってるしそこまで深く考えなくていいか。
「あ、そうだ。ちょっといいですかフランベルさん。」
「ふぇっ?」
丁度フォークを口に入れるところだったようで、少々気の抜けた声を上げるフランベルさん。
それはいいとして、お皿の上、かなりたくさん乗ってるんだけど……意外と大食いキャラなんですね。
「んぐっ。な、何ですか?」
「フランベルさんはウェイリーノーラで魚を買うことができるんですよね。」
「う、うん。そうだけど。」
「ついでって言うとあれだけど、俺達の分の魚も一緒に買ってくれませんか? 実は今日俺も買えないかと思って聞いたんですけど、あんまりいい感触じゃなかったんですよね。なので、フランベルさんに同時購入してもらえないかなって思ったんですけど……どうですかね?」
「うーん。私の口からは何とも言えない、かな。向こうの仕入れ量もあるから、簡単に多く購入したいって言えないし。」
「あー、やっぱりそうですか。」
「力になれなくてごめんね。セフィアちゃんの旦那さんだから力になりたいんだけど、こればっかりはね。」
「まあ、仕方ないですよ。とりあえず、今度その話をしに行くんでその時に根気よく交渉しますよ。」
「そう。じゃあ、私が今度行く時、口添えしておくね。そうすれば多少は融通してくれるかもしれないし。」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
漁業が盛んな日本に生まれた身としては、魚のない生活というのは寂しいと感じるものがある。
だから、少しでも可能性が上がるのは純粋に嬉しい。
交渉がどうなるか分からないが、まずは1週間後。
出来る限り印象を良くなるようにしないとだな。
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