番外編 雛ま……流し雛? (1)

訓練も無いし仕事も今日はお休みということで、適当に街をぶらつこうという事になった。

だからこうして嫁達と一緒に街を歩いているのだが……


「いらっしゃい、いらっしゃい! 今日はなんと、ダイナバードの卵を入荷したよー! 来たる日の為に買っといた方がいいよー?」

「何っ!? ダイナバードだと!? おっちゃん! 1つくれ!」

「俺にも!」

「俺は3つだ!」

「おい押すなよ! こっちにも1つ!」

「ちょっ! 誰よ、尻尾触ったのは!?」


なんか、いつもとは全く違う賑わいかたをしてた……

というか、なんでそんなに卵が人気なんだよ……?


「なぁ、これってどういう……ってあれ!? みんなは!?」


セフィアにどういう事かと聞こうとしたのに、誰もいなかったよ……


「僕にも1つ!」

「私も。」

「私にもください!」


あ、見覚えある後ろ姿が。

セフィア、お前もか。

もちろんリリン達もいるぞ。

元ネタが何か知らないけど、ちょっと有名なネタをパクってみた。


「俺にもください!」

「お、兄ちゃん運が良いねー。これがラストだよ。1000リムね。」

「はい。」

「まいどー。」


ラストだったらしく、おっちゃんの言う通り運が良かった。

何に使うのかとか、この賑わいはなんなのかとか分からないことしかないが、セフィア達がこぞって購入してたから俺もとりあえず買った。

ところで何に使うのだろう?

食うのか?


「みんな買えたみたいだね。」

「そうだな。所で、これって何に使うんだ? 食うのか?」

「食べないよ!? というか、よく分からないで買ってたの!?」

「うん。なんかみんな買ってたからとりあえず。」

「とりあえずって……これは流し雛に使うんだよ。聞いたことあるでしょ?」

「え? 無いけど?」

「えぇ!? だってこれ、勇者が広めたものだからレントも知ってるはずなんだけど……。」

「残念ながら違うのよね……桃の節句って言って、日本の雛祭りは雛人形っていうのを飾って女の子の成長を祝う日なのよ。」

「あ、アカネちゃんも来たんだ。」

「ええ。私も卵を確保しようと思ったんだけど、出遅れたようね。」

「違うのを分かってるのに卵を買おうとしてたのか。」

「まあ、郷に入っては郷に従えって言うしね。どうせ流し雛も勇者が知識を広めようとした時にふざけたか歪んだかのどっちかでしょ。」

「だろうな。所で、結局どんなことをやるんだ?」

「小船に乗せた雛を川から流すんだよ。それを追いかけながら指示を出して先にゴールした人の勝ちってルールなんだ。」

「……動物愛護団体を敵に回しそうな祭りだな。」

「そうね。で、そういうルールだから事前に卵を確保して指示を聞くように調教しておくのが勝つ秘訣なのよ。だからこの時期になると卵が売られるんだけど……今日はもう良さそうなのはなさそうね。」

「そうなのか?」

「あそこ見て。あそこのはピッツバードっていう小さい鳥なんだけど、あんまり賢くないのよ。見ての通り閑古鳥が鳴いてるわ。残っているのはああいうのばっかりよ。」

「そうなんだ。じゃ、とりあえず今日は帰るのか?」

「そうね。明日また探すわ。まだ時間あるしね。」


アカネが帰ると言うし、セフィア達も早速帰って卵を温めたいと言うので一緒に帰ることにする。

俺も温めないといけないし。



卵を買ってから数日。

みんなの卵が次々と孵っていく。

ピィピィと鳴きながらヨチヨチと歩み寄ってくる様はすごく可愛い。

おーよしよし。

パパですよ〜。

餌は何が良いかな?

やっぱりミミズとか?

経験者によれば、その辺の細々とした物も今の時期はそこら中で売られているそうだ。

となれば早速買いに行こう。

どうせなら最高級のが良いな。


「よし行くぞ、ピュリオス!」

「ピィ!」


ピュリオスと共に餌を売っているだろう店へと向かおう!

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