第553話 言ってもらえるといいな。的なお話
〜アカネ視点〜
私じゃ持っていけないから知らせるのはいいとしても、これを持っていくのは流石に無理そう。
かと言って馬鹿だけを持っていくのもそれはそれで心配だ。
食いでがあるようには見えないけど他の魔物に持ってかれるのは面白くない。
うーん。
他の魔物を引き寄せてしまうかもしれないけど、これしかないか。
セフィア達みたいに共振の指輪とか共鳴の指輪があればいいんだけど、蓮斗はあれを恋人とかにしか渡さないのよね。
そういう関係の人達に人気なのは分かるけど、こういう時に便利だしなんとかならないものかね。
携帯電話がすごく便利だってのが改めてよく分かるわね。
じゃ、みんなを呼びましょうか。
「エクスプロージョン!」
蓮斗が使うファイヤーボムの上位に当たるであろう魔法。
強烈な爆発で敵を粉砕する魔法。
流石に全力で撃ったりはせずかなり加減しているが、それでも結構大きな音がする。
ただのファイヤーボールだと気づかれないかもしれないからこれにしたんだけど……………やり過ぎたわね。
仕方ない。
みんなが来るまで頑張りましょうか。
◇
どれだけ戦ったのかしら。
数分な気もするし、数十分な気もする。
というか……
「どんだけ集まって来るのよ! ゴブリンども! 生態系おかしいでしょ! なんで中域にこんなにいるのよ!」
あーもー!
ギーギー五月蝿い!
「空爆! エアロブロウ! フレアジャベリン!」
わらわらと群がるゴブリンどもを魔法でとにかく吹っ飛ばす。
細剣は点の攻撃だからこういう多対一の時に不便よね。
それに馬鹿のこともあるから遠距離からしか攻撃できない。
「アカネ! 何があった!?」
「説明は後! まずはこいつらを!」
「わ、分かった!」
いくらゴブリンが多くても、そんな雑魚に負けるはずもなく、あっという間に殲滅完了した。
「で、何があった?」
「馬鹿が魔物に襲われてたからぶん殴るってから魔物を倒したんだけど、魔物がデカイせいで持って帰る事が出来なかったのよ。それで蓮斗を呼ぼうと空に魔法を撃ったらゴブリンが群がってきたの。」
「それは分かった。でも、なんであんな大きな音のする魔法を選んだんだ?」
「普通の魔法じゃ気づかれないと思ったのよ。まあ、そのせいで魔物にも気づかれたけど。」
「普通に呼びに来ればよかっただろ。」
「折角の魔物なのに食われたらもったいないじゃない。それに、多少魔物が集まっても中域なら対処できると思ったのよ。ゴブリンだらけだったのは予想外だけど。」
「あー……確かに。何処にこんだけ居たんだろうな。」
全部で何匹いたんだろう。
どう考えてもおかしいと思う。
「と、そういえば、襲われてたっていう魔物はどれなんだ?」
「ああ。それなら、あそこに。」
「うわっ! デカっ! 何あれ? ゴリラ?」
「あれはシルバーエイプだね。一応Bランクの魔物だよ。」
アデラードさんが言うにはBランクの魔物らしいけど、とてもそうは思えなかった。
「え!? そうなの?」
「うん。まあ、Bランクの中でも下位なんだよね。ヘビィコングの上位種だからヘビィコングに慣れてたらよっぽどのことがない限り負けないだろうね。それでも、能力がヘビィコングより上だから一応Bランクなんだけど。」
「それで手こずらなかったのね。慣れてたから。」
「そうだと思うよ。でもアレだね!」
「? なんですか?」
「1人でBランク倒せたんだし、昇格してもなんの問題もないってことだよね!」
「そうですね。」
そっか。
そういうことになるわね。
…………私がBランク冒険者か。
奴隷にされたりしたけど、これで少しは父さん達に胸を張れるようになったのかな?
よく頑張ったなって言ってもらえるといいな。
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