第522話 死にたくないしね。的なお話
ルキノさんに案内してもらいつつ雑談をする。
「さっきランさんに会ったんですけど、ルキノさんもやっぱり指名依頼の件で買い出しを?」
「ええ。レントさん達もですか?」
「はい。それで、他には何か必要な物ってありますかね? こういう依頼は初めてなんで勝手がわからなくって。」
「基本的には私たちのサポートと聞いていますので野営のできる準備と戦闘になった際に必要な装備ですね。これには食材や薪などや治療用の薬やポーションも含まれます。後は念の為に記録用の道具、探索場所の地図に生息する魔物についての知識ですね。今回の依頼の場合は普段との違いが重要なカギとなりますから。」
「なるほど。」
「他には………うちのナタリアには気をつけてください。普通の冒険者とは価値観が少し違いますから。」
「それなら大丈夫ですよ。自分も普通の冒険者とはちょっとズレてると思ってますから。」
「いや、それは全然大丈夫じゃないと思うんですけど……。」
そうとも言うかも……いや、大丈夫だ。
今までもなんとかなったし。
「と、ここを右に曲がれば見えてきますよ。」
角を右に曲がり、ルキノさんが指差した場所を見るといかにもな古い家屋があり、そこからは独特な匂いがしている。
これ、薬草の匂いなのか?
「こんにちはー、デュラムさん。」
「ん? おー、ルキノの嬢ちゃんか。元気してたか?」
「はい。」
「それでよぅ、そっちの小僧どもは一体なんなんだ?」
「何って客ですよ。」
ルキノさんに案内された場所にいたのは魔女ではなく頑固そうな爺さんだった。
このパターンもあるよね。
「ふぅ〜ん。ほぉ〜。」
なんかジロジロ見られてる。
え、何? なんなの?
悪意は感じないけど………本当になんなの?
「ふむ。おい小僧。ちょっとそこで素振りしてみろ。」
「え、ここでですか?」
「そうだ。ああ、加減しようとか考えるなよ? とにかく全力で振れ。」
何がしたいんだこの爺さん。
でもとりあえず言われた通り素振りをしよう。
でもその前に周囲の確認。
よし。
素振りをしても誰かに被害を出すようなことはなさそうだ。
そんな間抜けなことするやついないよな。
グレンさんは………うん。
勝手に素振りしているところにやってきたんだよ。
そういうことにしておこう。
「ふっ! はっ!」
よく分からないがとりあえず素振りをしてみた。
「なるほど………よし小僧。もういいぞ。」
「え、あ、はい。」
「小僧には大体ここら辺の物が合ってるだろう。1人だけ突出してるなんて事はルキノの嬢ちゃんの所くらいだろうし、そっちの嬢ちゃん達もここらの物ならどれでもいいぞ。」
「??? え、どういう事ですか?」
「ん? ああ。いやな、たまにいたんだよ。実力が伴わないのに無駄に高価なのを買ってく奴。別にそれが保険として一つ二つとかならまだ分からんでもないんだが、それが十を超えてる上に時々買ってくんだよ。お前なんかそれが必要な怪我なんてしねぇーだろってのによ。そういう高価なのは作るのに手間だしそうちょくちょく買われると困る。だから実力を軽く見せてもらって適切なのを勧めるようにしたんだ。」
「なるほど。それで、俺はどうだったんですか?」
「小僧には経験が足りてないが、ま、実力に関しては十分だったから中級を基本に大怪我用に上級を少しって所だな。まあ、流石に部位欠損が治るなんてのは材料がねぇからここにゃ置いてねぇがな。」
「そ、そうですか……。」
俺、それ持ってます。
部位欠損が治る奴持ってますよ。
っていうか、ええー。
そう簡単に手に入らないのに、あの謎のポーション売りのお姉さんは路地裏で売ってた挙句タダでくれたの?
あの人、見た目からして得体が知れなかったけど、なおのこと怪しさが増したよ。
ギルドで鑑定してもらったから効果には問題ないけど、それでも不信感が増したんですけど?
「中級上級合わせて167万だな。」
「はい。」
「まいどー。当分買いにくんじゃねぇぞ。」
「そうなるよう頑張ります。」
怪しむよりも買うことの方が重要なのでポーションを買ったのだが……流石に中級100本ともなると結構値が張る。
まあ、だからって買わないという選択肢はないんだけど。
死にたくないしね。
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