第500話 それ即ちデートだ。的なお話

「だー! くそ! やっぱやりづらい!」

「ふふん。だからこその訓練なんでしょ。しっかし、ここだ! なんて勇んだ結果が転倒による敗北だなんて……それ、どこの漫才?」

「うっせ!」


蒼井がウザい。

まぐれ勝ちのくせにドヤ顔しやがって。


「ねえ、どんな気分? トドメって思った時にコケて負けるって、どんな気分?」


マジウゼぇ。


「うっせぇっつってんだろ!」

「きゃっ! 泥かけないでよ!」

「うるさい! これでもくらっとけ!」

「この! なら、こっちだって!」


派手に転んだから泥だらけだ。

だから腕を振るだけで泥が飛ぶ。

そうやって飛ばせば蒼井も飛ばしてくる。

蒼井もストップ&ダッシュの時に転んでたからね。


「遊ぶんなら他所でやってくれない?」

「「ごめんなさい……。」」


シアに怒られてしまった。


次はレイダさんとルリエ。

ルリエは十分強くなったのは分かるが、どうしても心配してしまう。

多分俺の中ではルリエは護るべき対象だという意識が抜けてないという事だと思う。

ルリエに失礼だろう。

それも分かってる。

だがなぁ〜。

やっぱり心配してしまう。

それに、相手がレイダさんだというのも心配の理由だろう。

だってレイダさんだもん。

その一言に尽きる。

それもレイダさんには失礼だろうが、レイダさんだから。

そんなことを思っている内に模擬戦が始まった。


「では、行きます!」

「はい!」


レイダさんが駆けだす。

先制の一閃。

それをルリエは短剣で回し受けてそのまま胴へと攻撃しようとする。

しかし、それは想定内だったのだろう。

ひらりと躱すとそのままの勢いで尻尾による一撃を入れる。

ルリエはそれを屈んで躱す。

レイダさんはその回転の勢いそのままに更に回り槍の打ち上げを下りているルリエの顔めがけて……って、何してんの!?

顔って!?

だが、ルリエはそれを横に身を投げ出して躱す。

あ〜、良かった〜。

顔なんて危なすぎるだろ。


「あんた落ち着きなよ。」

「無理だって。だってルリエが……あ、危ない! あ、避けた。良かった。」

「あー、もう! ルリエも横でそんなに慌てられたら集中できないでしょ。ほら、あんたはこっちで私としなさい。」

「ちょっ、シア! まだルリエが。」

「いいから! ほら早く!」


シアに引きずられてルリエと離れた場所で模擬戦をすることに。

あ、そこだ! いけ!


「あたっ!」

「こっちに集中しなさい。」


シアになぐなられた。


「……分かった。」

「随分とあっちが気になってるようだけど、そんなに私の相手は嫌かしら?」

「いや、そんな事はないが……。」

「ふーん。余裕ね。じゃあ、もしも私が勝ったら……そうね。今度喫茶店で何か奢ってもらおうかしら。」

「…………。」

「こっち見なさいよ!」

「え、あ、すまん。なんだって?」

「今度奢らせるって話よ。」

「は!?」

「じゃ行くわよ!」

「ちょ、待っ!」


突然始まったシアとの模擬戦。

だけど、シアは後衛だしなんとかなる筈……


「速っ!?」

「はあっ!」


くっ!

意外に重い一撃だ。

これは身体強化を使ってるのか。

俺は戦闘しながらなんてまだ出来ないから、ステータスの差がだいぶ縮まった。

これはやばいかも。


「やあっ!」

「くっ、はあっ!」


短剣を使っているために攻撃回数が多い。

防御寄りになってしまうが、隙をついて攻撃をする。

だが、身軽な為に簡単にバックステップで躱される。

まあ、それはいい。

躱されるのは想定内だし。

ルリエの事が気になるし、さっさと終わらそう。


「せいっ! やっ! はあっ!」

「あ、ちょっ、待って!」


右薙、左斬り上げ、唐竹と3連撃を結構ピッチを上げて放つと慌てて対応してる。

なら、もう少し。


「やあっ!」

「うっ、くっ、あぐっ!」


一息で3連撃。

すると流石に防ぎきれなかったようで最後の1撃が入る。

って、やばっ!

結構強めにやってしまった。


「シア! 大丈夫か!?」

「なんとか……やっぱり前衛には勝てないわね。」

「すまん。ちょっとやり過ぎた。」

「別にいいわよ。模擬戦なんだからこれくらいやらないと。」

「でも……。」

「じゃあ、今度喫茶店で何か奢ってね。リヨンド喫茶って店が美味しいって評判だったし、そこで。」

「結局奢るのか。」

「あ、その、2人きりで、ね。」

「喜んで奢らせて下さい!」


2人きりで喫茶店。

それ即ちデートだ。

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