第482話 届けにきました。的なお話

〜アカネ視点〜


実家に出す手紙を書いているとアデラードさんが慌てて降りてきた。

もう9時なんだけど………怒られるんじゃないかな?

あ、リナさんも降りてきた。

ってあれ?

リナさんは慌ててないわね。

どうしてだろう。


「リナさん仕事はいいの? もう9時なんだけど。」

「あ………はい。一応、今日は休みなので……。」


顔色悪いわね。

二日酔い?


「それで、顔色悪いけど大丈夫なの?」

「あはは……ちょっと、二日酔いで、頭が少し痛いです。あ、すみません。お水ください。」


近くを通りかかったレイランちゃんにお水を頼むリナさん。

あ、そういえば……


「もしも辛いなら部屋に二日酔いの薬が置いてあるからそれを飲んでください。」

「ありがとうございます……でも、大丈夫ですから。」

「そう。でも、無理はしないでくださいね。」

「はい。今日は部屋で休んでます。」


水を飲み干すとリナさんは宿を出ていった。


手紙も書けたし、次はどうしよう?

あ、そういえばレントは弁当を持ってない。

前に言ってたけど、弁当を持ってないとお昼を食べ忘れるらしいし、仕方ない。

作って持っていってあげましょう。


「あ、レイランちゃん。ちょっと厨房を借りたいんだけどいいかな?」

「はい。問題ないですよ。お昼の仕込みはもう大体終わってると思いますし。」

「ありがと。」


さて、何を作ろうか。

あいつ、肉料理が好きなのよね。

で、ピーマンとナスが嫌いっと。

んー。

だいぶ経験を積んで結構作れるようになったけど、地球にあったような、ローストビーフとかミネストローネとかそういうのは作れそうにないし……でも、地球の物は入れたいわね。

よし、カツサンドにしよう。

サンドウィッチにすれば食べやすく、それでいてがっつり食べれてお肉を食べてるって実感できるからね。

後はカツサンドに合わせて作ればいいかな。

そうと決まれば早速、材料を買ってこよう。

その辺のは全部レントとユウキが持っているからね。



材料を買い、お弁当を作り終わったのでみんなの様子を見に行くと、ルリエとエルナがみんなの面倒を見ていた。


「ごめんね、任せきりになっちゃって。」

「いえ。レイちゃんに聞いたんですけど、レントさんのお弁当を作ってくれてたんですよね?」

「ええ。どうせあいつのことだからお昼を食べ忘れて作業に没頭しちゃうんじゃないかって思ってね。2人は食材を買ってる時に朝食を食べたってことになるのかな?」

「はい。それでお弁当を作ろうとしてるって聞いて、だったら私達はみなさんの介抱をしようってことにしたんですよ。」

「そっか。それじゃ私はとりあえずアイリスさんの店の様子を見てくるわ。張り紙かなんかしといた方がいいだろうし。」

「そうですね。」

「それが終わったらレントにお弁当を届けてくるから。」

「分かりました。」

「それじゃ、行ってきます。」

「いってらっしゃい。」

「い、いってらっしゃい。」


みんなを2人に任せて私はアイリスさんの店に行く。

するとそこには店の前で困惑している人がいた。


「ちょっといいですか?」

「ん? 君もこの店に用があるのか?」

「いえ、用ってほどじゃないんですけど。ひょっとしてあなたはここのお客さんですか?」

「そうだが?」

「それなら日を改めた方がいいですよ。アイリスさんはちょっと二日酔いで……今日は仕事ができそうには思えないんで。」

「そうなのか……まあ、今日は進捗状況を聞こうと思ってただけだしな。じゃ、そういうことで。」


そう言って冒険者っぽい人はリスティーンから去っていく。


うーん。

看板とかはないわね。

となると、張り紙かな。

体調不良により、本日の営業はお休みです。と。

これでよし。

次はレントのところね。


「こんにちはー。」

「ん? おめぇは確かレントの仲間だったよな?」

「はい。レントにお弁当を届けにきました。」

「そうか。今作業中だから今呼んできてやるよ。嬢ちゃんはあっちに食堂があるから先にそこ行って待っててくれ。」

「分かりました。」


グラハムさんに促されるままに食堂で待っているとすぐにレントがやってきた。


〜レント視点〜


慌ててグラハムさんとこに来たはいいけど、みんな寝てたせいでお弁当が今日は無い。

うぅ。

悲しい。

楽しみがないとなるとハリがないというか、やる気が出ないというか……

そのせいでイマイチ集中できてない。

それでもやらなきゃ。

そう思って作業をしているとお昼だから休憩しろってグラハムさんに言われた。

仕方ない。

ストレージ内の軽食でも食うか。


そう思ってたら食堂にアカネがいた。

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