第479話 集中できない。的なお話

グラハムさんに見せたところ、実際に試してもらえと言われたのでユーリ達に試してもらう事に。


「ん? うーん。なんか、違う?」

「すごくしっくりきます!」

「こっちはなんか変な感じだな。でも、こっちは手に馴染む……気がする。」


結果は微妙。

ユーリはしっくりきてないようで、イリスさんの方はしっくりくる。

で、レヴィの方は棍棒の方がしっくりこず、斧の方は馴染むらしい。

らしいんだが、始めたばっかりだろうしまだよくわからないってことかな。


「そうだな……そっちの嬢ちゃんのは重心のバランスが合ってないんじゃないか? 多分こっちの方が合うだろう。そっちの槍の子は問題ないだろう。で、棍棒の方はちょいと軽いんだろう。もう少し重いのの方が合うはずだ。斧は、経験が浅いから違いがまだわからないんだろうし、馴染むと思うならそのままでいいと思うぞ。」


そう言ってユーリとレヴィに新たに武器を渡して試させるグラハムさん。

それは別にいいんだけどさ、そういう風に思ってたんなら先に教えてよ。

教えてくれるって言ってたよね?


「うん。こっちの方がしっくりくる。」

「そうだな。」


ぐふっ!

最初に無理だと言ってはいたけど、こうして駄目だと言われると、結構くるな。


「あ、私はこれが良かったですよ!」

「あ、うん。ありがとう。」


精神的ダメージを受けた所でイリスさんが気を使ってくれた。

でも、それがちょっと情けない。

だから話を逸らす意味も兼ねて聞く。


「これで要件は終わりか?」

「ここではそうね。あ、そういえば、今どこに住んでるの?」

「誰が言うか! ………………と、言いたい所だが、このまま言わないでいるとストーキングして衛兵を呼ばれる事になってひと騒動起こしそうだから教えるよ。」

「そこまではしないわよ! ……多分。」


自信が持てない時点でアウトです。


「宿レイランって所だよ。でも同じところに泊まろうと思うなよ。流石にしょっちゅう押しかけられたら休めないからな。もし泊まったら速攻で宿変える。そんで二度と教えない。」

「………で、でも他が満室ならしょうがないよね?」

「そりゃあな。野宿しろなんて言えないしな。」


なんか、フラグが立った気がする。


「他にはないか?」

「この辺でオススメの防具を売ってる店を教えて。革製品ね。」

「それならリスティーンって店だな。そこの店主のこだわりが素晴らしいんだよ。ここの近くだからすぐに見つかると思う。」


まあ、アイリスさんの店だな。

他に店知らないし。


「そう。分かったわ。そこに行かせてもらうわね。」

「えと、それじゃレントさん。失礼します。」

「おう。」


律儀に声をかけてから去っていくイリスさん。

ユーリとレヴィに見習ってほしいよ。


「さて、それじゃ作業に戻るか。」

「そうですね。」

「にしても、お前は可愛いことばっか知り合いだな。」

「たまたまですよ。」

「また増やしたりしねぇのか? こないだもギルドの子が押しかけて来たしよ。」

「またってなんですか。人聞きの悪い。別に俺は誰彼構わずってわけじゃないですし、不誠実な真似だけはしないつもりですよ。」

「だがなぁ〜、さっきのイリスって嬢ちゃんは随分とお前の事を気に入ってるみてえだったじゃねぇか。」

「多分ミーハーなんですよ。セフィアの親衛隊だし。それと、この話題はやめてくれません?」

「本当に嫌そうだな。わーったよ。」


こういう話はチャラい感じがして好かないんだよ。

惚気はありだけど下世話な話はなしなんだよな。

地球にいた時もこういう話はしなかったし。


グラハムさんとの話を切り上げて作業に戻る。

でもユーリが何をしでかすかと考えるとどうしてもモヤモヤする。

宿に帰ったら食堂にいたりしないよね?

夕食のたびにやって来たりとかしそうだし……集中できない。


ユーリの事が気になって身が入らず、昨日よりも効率が落ちたまま今日の作業が終わった。

1週間が過ぎないように明日はもう少し頑張るか。


そして宿に帰ると、やはりというかなんというか、ユーリ達がいた。

アデラードさんとリナさん、アイリスさんまでいるというおまけつき。

一波乱ありそう…………はぁ。

明日に響かないといいけど。

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