第453話 うん。知ってる。的なお話

アデラードさんが帰ってきたが、速攻でエリーナさんに捕まりあっという間に本部のテントに連れ込まれてしまった。

自業自得だよね。


今日は川の側にテントを張っているので川の方の見張りが少なく、昨日と同じく4人で見張っている。

しかし今回は黒狼ではなく天装だった。

昨日と同じような配置だと報酬に差が出るからかな?

俺には関係ないけどな。

セフィアとリリンはそろそろ調理をするから俺は1人になる。

1人で何ができるんだって話だ。

そもそも、黒狼と天装がいるのに俺のところまで来るとは思えない。

だから今回も"俺"は暇だろうな。


実際、時折魔物が来てるようで何度か斥候約のリタさんだっけ? が誘導してあっという間に倒している。

他にも天装の人の盾の人が受け止めてその隙にナタリアさんが頭を一突きして倒していたりもする。

危なげがなく、本当に俺の出番は無さそう。

ふわぁ〜。

欠伸が出た。

暇だな。


そうして12時ちょい過ぎ頃に疎らにだけど冒険者が戻ってくるようになった。

疎らなのはその場で用意して、或いは用意していた物を食べているからだろう。

それにこの時間になって戻って来たのもアイテムボックス持ちがいたりアイテムバッグを持っている人が多いからだろう。

Cランク相当ならそれなりに財力もあるだろうからな。


「よっ、レント。」

「……? えーと、誰? どこかで会いましたっけ?」

「おまっ、忘れんなよ! クルトだよ! 鋭き刃の、黄昏の獅子のアベルの弟の!」

「うん。知ってる。」

「知ってんならなんであんなこと言ったんだよ!」

「ノリだ!」

「いや、そんなハッキリ言うなよ……」

「あははは。で、なんでお前がここに?」

「ん、ああ。お前が迷宮都市に向かったって聞いてたからな。俺達もCランクに上がったし行ってみるかってなってな。で、3日前に着いたらなんか面白そうなイベントがあるって聞いたから参加してみたんだよ。しっかし、流石は迷宮都市だよな。こんなイベントがあるんだからな。冒険者の街に偽りなしって感じだ。」

「あ、そう。」


この企画、おれも立案者の1人なんだけど……しかもこれが初回なんだけど。


「あ、そう。って随分と気の抜けた返事だな。」

「え、いや。なんでもない。」

「? そうか? まあ、いいや。それで他の子達は? セフィアちゃんとリリンちゃんが調理をしてるってのはここのギルドマスターが説明したから知ってるんだが……」

「ああ。みんなはお前と一緒で参加してるよ。俺とセフィア、リリンはBだからこうして警備の依頼を受けてるんだ。まあ、セフィアとリリンがあっちにかかりきりだから俺はこうして暇してるんだけど。」

「ははははは。なんだそれ。それで警備って言えるのかよ。」

「うるせぇよ。」

「ははっ。そう言えば、俺もついに恋人ができたぜ。」

「ほぉ。ってことはこれでもうナンパはしないんだな。蒼井とかが結構毛嫌いしてたけどな。」

「うぇ! マジかよ。」

「で、どんな人なんだ?」

「お前も知ってる人だよ。こいつだよ。」


そうして紹介したのは……………マックスだった。


「お、おま、彼女出来ないからって、ついにそっちの道に!?」


つい後ずさってしまった俺を誰が責められようか。


「お前が何を考えてるのか分かるけど、違うからな。俺達も知らなかったんだが、こいつ、実は女の子だった。しかも男爵令嬢。」

「はぁっ!? え、マジで!?」

「なんか、冒険者になりたくて家を飛び出して、でも、女と知られるのが怖いってんで男の振りしてたんだと。」


男の娘と思ってたけど、女の子だったか。

そりゃかわいく見えてもおかしくないか。

だって実際に女の子だったんだから。


「そうだったのか。てことは、マックスってのも偽名か。本当の名前はなんて言うんだ?」

「あ、本当の名前はマリナって言うの。マリナ・レグトン。それが私の本当の名前。」

「マリナか。可愛い名前だな。クルトはいい奴だがアホだ。ちゃんと手綱を握ってくれよ。」

「分かってる。2人目、3人目と増えるのは仕方ないかもだけど、当分は禁止する。」

「ちょっ!? 俺ってそんな信用ないの!?」

「これまでを振りかえろ馬鹿。」


散々ナンパしてたんだから当然だろうに。

しかし、2人目、3人目って、そう考えられるのは流石は貴族の娘ってことか。

ウチの嫁は特殊だけど。


「と、それより飯を取りいけよ。他の仲間はみんな食ってんぞ。」

「えっ! あ、お前ら、俺らを置いて先に食ってんじゃねぇよ!」


マックス改めマリナがペコリと頭を下げてからクルトの後を追った。

クルトはアホだからな。

少し苦労するだろうが、がんばれよ。

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