第436話 生殺しすぎる。的なお話

ユキノが話してるのを横から聞いてるのって………結構暇だな。

うーむ。

何しよう。

宝石の研磨でもしてようかな。

ヤスリと水晶を取り出して、と。


ゴリッ……ゴリッ……


うーん。

もう少し削った方が……


「ゴリゴリうるさい! 静かにしてくれ!」


怒られちゃった。

仕方ないか。

本でも読んでよ。

そうして本を読もうとしてるとアイリスさんが話しかけてくる。


「そういえば、金属片なんかを急所部分なんかに仕込もうと思うっすけどその辺って作れるっすか?」

「え、うーん。作れると思うけど、自分の工房とか無いから場所を借りないといけないし、当然素材の分のお金も払わないといけないから発注して作ってもらうのとどっちが安くなるのか……。」

「あー、そういえばそんなこと言ってたっすね。一応普段頼む際はこんくらいの値段になるんすけど、どうっすかね?」

「これはっ!?」

「え!? な、なんすか!?」

「俺がやるのとそんな変わんないや。」

「なんで凄んだんっすか!?」

「いや、ノリで。定番かなって思って。」

「……なんの定番か知らないっすけど心臓に悪いんでやめて欲しいっす。」

「善処します。」

「それ結局やらないやつっすよ!」


こっちは通じるのか。

何が通じるのか分からないな。

さすが異世界。


「えと、それでレントさんがやるのと変わらないんなら、レントさんがやってくれないっすかね?」

「いや、でもこれは向こう側の人件費や利益なんかも含めた値段だよね? で、俺の場合は場所代と素材の値段だけなんだよね。友人としてちょっと手伝うくらいならいいけど、仕事として今後も依頼するなら長くなると思うんだけど。」

「いや、今回はユキノさん用の一回だけのつもりっすから今後もって予定はないっす。」

「まあ、それなら、いいかな。」

「やった! これでレントさんと一緒に仕事ができる!」

「は? ひょっとしてそれが理由?」

「え、いやいや、それだけじゃないっすよ!?」

「たとえば?」

「……………楽しく仕事ができる?」

「なんで聞くの?」

「なんでっすかね?」

「こっちが聞いてるんだけど………はぁ。まあいいや。で、どんな感じになるの?」

「そっすね。とりあえず肩口と胸、後はここら辺の腹部辺りっすかね。脇腹背中だと動きづらくなるっすから。」

「なるほど。となると肩口のは棒状の方がいいかな。胸の方は……えっと、やっぱり、形に合わせた方が………いいよな?」

「うっ! いや、確かにその方が防御力は上がると思うが……」


気まずい。

なんていうか、パッドのような、胸自体を覆う形の方が防御力は上がると思う……けど、でもそれは胸の形を教えてくれって言ってるようなもので、ぶっちゃけ胸を見せてくれと言ってるようなものだ。


「……………………い、…ぞ。」

「え、なんて?」

「だから! 測っていいと言ったのだ! 貴様の人間性ならそう邪な考えは抱かないと判断してのことだ! 命を守るものだから背に腹はかえられぬしな……。」


怒られながら褒められた……のか?


そんで、測る許可は出たものの流石に人前で男に測られるのが恥ずかしいとのことで以前測定に使った部屋で測ることに。

いや、こっちの方がまずくね!?

何にもするつもりないよ!

でもまずくね!?


「て、手短に頼むぞ。」

「わ、分かった。」


そう言ってユキノは服を脱ぎ鎖帷子のみとなった。

………そういえば、着替えてなかったな。

しかし!

これはまずい!

肌に直なものでうっすらとピ……これ以上は見ちゃダメだ!


「う、後ろ向いてるから、先に中に服を着てくれ!」

「あ、ああ、分かった。」


鎖帷子のジャラジャラという音の次に服を着る音が……

そして再度鎖帷子の音が聞こえる。


「き、着たか?」

「あ、ああ。」


振り返ると確かに鎖帷子の下には黒い服を着ていた。

これで視覚的な問題は無くなった。

でも、まだ最大の問題が残ってる。


「じ、じゃあ、測るぞ。」

「う、うむ。よろしく頼む。」


胸を覆う形な為に単純なサイズではダメなのだ。

上下、左右、そして斜めのサイズを測り、カーブの具合を……


「んっ。」

「変な声出すなよ。」

「しかし、レントの指が当たって…」


くそっ!

生殺しすぎる。

急がないと理性がもたない。


それからなんとか理性が削りきられる前に測定を終えることができた。

……ユキノの胸はセフィア程のサイズは無かったが、形がよかったです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る