第435話 割印とかいう奴か。的なお話
アイリスさんの店に入ると他の客の応対中のようで何やら話してる。
そんなアイリスさんを邪魔するのも悪いので適当に店の中を見て回る。
展示されているのはサンプルで実際の商品は採寸してから作るんだけど。
ユキノの防具だから動きやすさ重視で軽いのがいいよな?
うーん。
これは高いな。
性能は高そうなんだけどね。
流石に200万はちょっとね。
というか、どうやってこんなの仕入れたんだろう?
次のは……これは無いな。
動きにくそうだし、ちょっと重い。
次のは……
「あ、レントさんいらっしゃいっす。もうすっかり常連っすね。」
「こんにちは。ユキノの防具を見に来ました。」
「どんなのがお望みっすか?」
「動きやすくて軽いので。速度重視の戦闘スタイルだから。」
「了解っす。」
………普通だな。
まあ、それで何か困るわけでもないしそれでいいんだけど。
「これなんかどうっすか? 斥候役の方向けに作った物っす。色々な小物を仕舞える収納が付いてて便利っすよ。」
「ごめん。ユキノはアイテムボックスが使えるから……」
「あ、そうっすか。それなら………こっちはどうっすか? 軽量化を重視した物っすけど。」
「ちょっと防御力が心許ないかな。」
「その辺は質のいい皮を使って補う形になるっす。その分少し値は張るっすけどね。」
「なるほど。ちなみにどれくらいになりますか?」
「イービルサーペントの皮が後一人分くらい残ってるっすから………でも次の仕入れが未定っすから………大体60万くらいっす。」
「60万……ちなみにもし依頼をして追加で仕入れるって事になったら安くなったりする?」
「そりゃ、いつ仕入れられるかわからない希少性から値が上がる訳っすから、次の仕入れが分かればそれなりには下がるっすけど………もしかして請け負ってくれるっすか?」
「いえ、そういう訳じゃ無いですけど。」
「じゃあなんで言ったっすか!?」
「あはは。でも、もうすぐ仕入れられると思いますよ? その辺はそろそろギルドで発表されると思いますけど。」
「はぁ……? いまいち要領を得ないっすね。でも、それで確実に手に入るとは限らないっすから値下げは無理っすよ。いくらレントさんでもこればっかりは無理っす。」
「じゃあ、仕入れられなかった時は俺達が依頼を受けるって事ならどうですか?」
「むっ………そういう事なら……50万でどうっすか? 依頼の件も込みっすから契約書を作るっすけど。」
「じゃあそれで。」
「分かったっす。今、契約書用の紙を持ってくるっすね。」
そう言ってアイリスさんは一旦裏に引っ込んでいった。
というか、これをどうにかするのが先じゃないのか?
話をする為のテーブルの上が防具の設計図が散乱してる。
仕方ない。
片付けとくか。
「ただいまっす。って、あや、片付けてくれたっすか。ありがとうっす。」
「まあ、見てられなかったんで。」
「これが契約書っす。内容の確認をお願いするっす。」
内容は………問題ないな。
「問題ないね。」
「じゃあ、サインをお願いっす。後こっちもよろしくっす。」
「なんで2枚も?」
「1枚は自分が、もう1枚はレントさんが持っててくださいっす。で、これをこうっす!」
そう言ってアイリスさんは2枚の契約書のずらして重ね、重なっているところにハンコを押した。
「これで契約成立っす。」
あ〜、これって割印とかいう奴か。
まだ高校生だったからそういうのとは縁がなかったからな。
「さて、それじゃ、もう少し設計図について詰めていくっすよ。」
契約書を作った後は作る防具の話。
でも、着るのはユキノだからその辺は全部ユキノに任せる。
俺が口を出す事じゃないしね。
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