第422話 はとこも不審に的なお話

宿に帰った。

何故ギルドでなく直接宿に向かったのかといえば、ひとえに、セフィア達が心配だからに他ならない。

薬を渡したからだいぶ良くなっているだけろうけど、まだ辛いのかもしれない。

それ以前に、自分達が襲われたからセフィア達の方は大丈夫なのかと不安になってしまったからだ。


「ただいま!」

「あ、おかえりレント。薬、ありがとね。薬のおかげでみんな良くなったよ。」

「そっか。」


どうやら何もなかったようでホッとしたよ。


「それで、訓練の方はどうだったの?」

「うーん。微妙、かな。これまでずっと武器戦闘だったから結構大変でね。」

「やっぱりか〜。まあ、仕方ないよね。………ところで、さ。アカネちゃんはどうしたの?」

「へ? 何が? 別に何もないけど?」

「え? でも、ちょっと顔色悪いよ?」

「そう? 慣れないことやって疲れたのかもね。じゃ、私は部屋で休んでるわ。」


そう言ってアカネは自分にあてがわれている部屋へと向かった。


「アカネちゃん、なんか変だよ。何かあったの?」

「帰りに盗賊に襲われてな、そん時に油断してて魔法をくらいそうになった所を俺がかばったんだ。で、そん時に多分骨が折れた。」

「骨折れたって!? だ、大丈夫なの!?」

「あー、うん。例のポーションの内のアカゴ味のを飲んだら治った。効き目は凄いけど、ソテーの方にはお世話になりたくないな。」

「あはは……それでどうなったの?」

「えっと、そんで自分が油断しなければって落ち込んじゃってさ。一応励ましたりとかしたけどまだちょっと後を引いてる感じかな。」

「なるほど。」

「ま、そんなわけなんでしばらくそっとしとこうかなって。それでさ、セフィア。悪いんだけど、しばらく様子を見て、もしも思い詰めてるようだったら相談に乗ってあげてくれない? 俺だと逆効果になりそうだし。」

「分かった。任せて。」

「頼む。」


さて、と。

それじゃ、武器の手入れでもするか。

盗賊との戦闘自体はそんなに時間かからなかったんだけど、煌炎剣を使ったから念の為ね。

無いだろうけど、歪みが出てるかもしれないし。


ちょっと溶けた敵の剣のカスがついてるな。

これはヤスリで削れば取れるかな?

試してみよ。

……お、取れた。

融点が違うから表面に張り付く程度で済んだのかな。

後は血糊を丁寧に落として、と。

よし。

完璧。


「じゃ、夕飯にするか。みんなは食べられる?」

「うん。」

「大丈夫。」


ルリエとルナは問題ない。

そもそも飲んでないから。


「おーい。夕飯行くぞー。」


みんなが借りてる部屋に行って夕飯に行こうと誘う。

レイダさん達も薬が効いたのか問題なく食べられるそうだ。

シアとユキノも問題はないそうだ。

そうして食堂に向かうと、何故かそこにアデラードさんがスタンバッてた。

勘弁してください!


「えと、なんでここに……?」

「それはもちろん、一緒に飲もうと思って。」

「マジで勘弁してください!」

「というのは冗談で……えと、迷惑かけちゃったから…………その、お見舞い、持ってきたの。」


アデラードさんが、いじらしい、だとぉ!?

明日は何が降るんだ!?


「アデル義姉さんがお見舞いって……何か裏がありそう…」


あ、はとこも不審に思ってる。


「酷い!? 純粋に、謝罪と善意からだよ!」

「でも、今までのを見てると……ねぇ?」

「まあ、そうだよな。」

「そんなぁ〜……」

「日頃の行いのせいですよ。これに懲りたら少しは行動を改めることですね。」

「あ、エリーナさん。エリーナさんがいるなら安心ですね。」

「なんでそうなるの!?」

「そう思うのなら、もう少し大人らしい行動をすることですね。」


勝ち誇った表情をするエリーナさん。

普段から苦労してるせいだろう。

対応の差を見て少しだけスッキリしたような感じだ。

まあ、いつも振り回されてるんだろうしこれくらいはね。

今日も大変な目にあったし、八つ当たりがてらエリーナさんの援護射撃をしよっと。


「そうですね。エリーナさんの爪の垢を煎じて飲めば少しはマシになるんじゃないですか? あ、爪の垢をってのは俺の故郷での諺というか、立派な人や優秀な人の良いところを少しでも見習ってほしい。みたいな意味です。」

「なるほど。今度試してみましょうか。」

「ちょっ!? それは勘弁してよ!」

「冗談です。でも、今度また何か大きな問題を起こすようでしたら……分かりますよね?」

「分かりました! 気をつけます!」


そうして帰っていくアデラードさんとエリーナさん。

三日坊主にならないと良いんだけど……


そして俺達は夕飯を食べた後、ゆっくりと休んだ。

2日酔いとかあったから夜のアレは無しだけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る