第420話 多分吐いてたな。的なお話

ターゲットの魔物の一体であるイノシシさんを仕留めて、残りはレッドモールとかいうモグラの魔物だけだ。

レッドって事は火属性なのかな?


モグラならやっぱり足下かなと思い下を向いて歩く。


「あいたっ!」

「何やってんのよ……」

「いやー、下しか見てなかったもので……」


下を向いて歩いてたら枝に気づかずに頭を打ってしまった。

ちょっと痛い。


「怪我はしてないようね。」

「まあ、軽くぶつけただけだから。でも心配してくれてありがと。」

「どういたしまして。それと、下を見るのは仕方ないけどちゃんと周りも見るのよ。」

「身に染みた。」


それからは周りにも注意しながら探していく。

モグラの巣となりそうな穴を探しつつ、洞窟とかも巣となっているかもしれないと思ってそっちの方も探していく。

決めつけは良くないという事はアサシンスネークの時に学んだ。


「……あ、あそこ、穴が、ある。」

「え? あ、本当だ。でかした、ルナ。」


ルナが何やら不自然な穴を発見した。

これがレッドモールの物とは限らないが、可能性は十分にある。

他にもないかと周囲を見回していると突然脇腹に衝撃を受ける。

あ、なんかデジャブ。

チャージラビットの時も突然体当たりされたっけ。

ひょっとしてまたウサギなのか?

そう思って見てみたが、今回はウサギではなくて赤い体毛をした毛むくじゃらの何かだった。

赤いし多分あれがレッドモールなのだろう。

なんか二本足で立ってるけど。

鑑定してみたらちゃんとレッドモールだった。

体長は40センチくらいか?

モグラとしては大きいかもだけど、魔物としては小さいな。

でも、これでもDランクだ。

きっと何かあるのだろう。

ゆっくりと距離を縮めていく。


「ぐはっ!」


また突然脇腹に衝撃が……衝撃のした方を見てみるとそこには赤い体毛をした毛むくじゃらの魔物だった。

もう1匹いたか。

と、思ったらまた衝撃が。


「またぁ!?」


やはりそこには赤い体毛をした毛むくじゃらが。

それからもあちこちから赤い体毛をした毛むくじゃらが突撃してくる。

流石に3回も体当たりをくらえば警戒はするよ。

群れで行動するのでは? と。

突撃してくるレッドモールが狙いにくいように動きながら躱していく。

そして気づけばレッドモールは50体くらいになっていた。


やっぱりこいつらはこの数がDランクの理由か。

攻撃力はチャージラビットと同程度だし魔物としても小さいがこれだけの数で攻められたら新人ではひとたまりもないだろう。

ある程度の戦闘経験とレベルがなければ危険だろうし。

そして危険なのは俺たちも同じ…………相手小さいし数多いのに魔法だけって……


「出の早い魔法で数を減らしていけ。詠唱の時間はないと思った方がいい。それと、まだ出てくるかもしれないからそっちの方も注意して。」


単発でのドルヒやファイヤーボールを撃ち込んでいく。

最初の方は数が多いから狙ってた奴に避けられても他の奴に当たったりした。

しかし数が減っていくと当たらなくなってくる。


「だー! めんどくさい! アカネ、俺らが牽制して集めるから風で斬り刻んでくれ。」

「え!? わ、分かったわ。」


こんなのを全部潰すのは骨が折れる。

そういう時は範囲魔法で一気に殲滅だ。

でも俺は範囲魔法なんて覚えてない。

それに何より、こんな林の中で火魔法の範囲攻撃なんて出来るか!

燃え移るわ!


「準備できたわ!」

「分かった! 今だ!」


端っこの方からドルヒを扇状に撃ち込んで一箇所に集める。

そして反対からもルナとルリエが追い込んでいる。


「カッターストーム!」


アカネの放った魔法によって巻き上げられながら斬り刻まれていくレッドモール達。

そして魔法が収まると、そこにはなかなかにエグい光景が。

…………この世界に来たばかりの頃にこれ見てたら、多分吐いてたな。


何かを失ったしまったような感覚に少し襲われたが、うん。

とにかくこれで依頼終了だ。

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