第418話 問題の先延ばしだ。的なお話

「うぅ〜ん…………酒臭っ!」


強烈な臭さを感じて一気に目が覚めてしまった。

俺こんなに飲んだかな?

って、はぁ!?

なんで目の前にアデラードさんの顔があんの!?

どうしてこうなった!?

そう思い、跳ね起きた後に周囲を見回してみるとなかなかに酷い惨状が広がっていた。

まず俺の側に何故かアデラードさんがいる。

まあ、それはいい。

いや、よくはないけど、この人だしそんなの気にするだけ無駄だ。

でも、なんでレイダさんと蒼井が服脱いでんだよ!

飲ませないでって俺言ったよね!?

それに!

なんでか知らんけど、ユキノが猫の着ぐるみパジャマ着てるし!

シアも弓抱いて寝てるし!

本当に何があったんだよ!

あ、でもセフィアとリリンが抱き合って寝てるのは和む。

普段俺と一緒だからその代わりかな?


「はぁ。片付けるか。」


なんか、俺が起きてた時よりも酒瓶が多く転がってるんだけど………それも圧倒的に。

いや、アデラードさんが大半は飲んだんだろうけど、この現状を見るに絶対みんなも飲んだよね?

今日、仕事できるのかな?


酒瓶を集め、ゴミを片付け終わったが誰も起きてこない。

起こすべきなのだろうか?

みんなはいいけど、アデラードさんは………よし。

とりあえずここは俺お得意の思考放棄。

現状維持。

問題の先延ばしだ。

ご飯食べに行こ。

あ、でも、未成年組は起こしとこう。

その時に起きた人は一緒に連れてけばいいか。



「………誰も起きてこなかったわね。」

「そうだな。」

「あ、片付けありがとうございます。お兄さん。」

「いや、それは別にいいんだけどさ………もし、まだ寝てたらどうする?」

「え、そりゃ起こしますよ。流石に寝すぎです。」

「そりゃそうか。みんなは何時くらいに寝たの?」

「私はお兄さんの1時間くらい後かな?」

「わ、私も、それくらい。」

「私は1時くらいかな。まあ、前世ではたまにあったし。夏休みの宿題溜めちゃって……」

「あ、最終日にやってた?」

「あー、うん。時々やってたけどそれでも結構残っちゃってて、それでね。」

「俺もなー、漢字の書き取りとか英単語のとか残しちゃって一晩で40ページやったことあってな。その時手が痛くなったんだよ。おまけに始業式がまー、眠くて眠くて。」

「分かる! しかも無駄に長いしつまらないしね。そりゃ眠くなるよね。」

「あの、ここで前の世界の話は……」

「「あ。」」

「そうだな。あまり話すことじゃなかったな。」

「そうね。」


食休みがてら話してたら宿題の話で盛り上がってしまった。

ちなみにアカネはこの前成人したのを忘れてて起こしてしまったけど、本人も前の惨状を知ってるから飲まずにいた。

片付けとかする人がいると思ってとのことで、やっぱり頼りになる。


そして部屋に戻ると、そこには死屍累々という表現がぴったりの光景が広がっていた。

みんな2日酔いの頭痛に悩まされていた。

アデラードさんを除いて。


「アホなんですか!? 今日は依頼を受けろって言っときながらなんでみんなを酔い潰してんですか!? 仕事にならないじゃないですか!?」

「うぅ。叫ばないで……頭に、響くから……」

「あ、ごめん、セフィア。」


相手はギルドマスターでシアのはとこだし、教わってる身としては断りづらいだろうからみんなはまだいいよ。

でも、アデラードさんは別だ。

この人はどう考えても自業自得だ。

しかもこの人だけはドワーフの血で酔わずにすんでいるとか、これは流石に酷すぎる。

というわけでギルドに連行してエリーナさんに叱ってもらおう。


「じゃ、俺はこの人をギルドに持ってくから、みんなの看病をよろしく。」

「分かったわ。」

「はい。」

「う、うん。」

「ちょっ、待って待って待って!」

「待ちません。」


ギルドでエリーナさんに引き渡して事情を説明すると、分かりました、と。

そして笑顔でたくさん仕事をしてもらうって言ってた。

うん。

悪は滅びた。


さて、2日酔いの薬でも買って帰るかな。

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