第372話 デートはお預け的なお話

「ご主人様。明日は依頼を受けるのですか?」


宿へと帰る途中、レイダさんが聞いてきた。

それを聞くのは別にいいんだよ。

さっきそう言われて俺もそれに返事をしてたのだから気になるのは仕方ないと思う。

でもさ、ダンジョンから帰ってきたばっかりなのになんでそんなに目を輝かせてんの!?

散々戦ってたじゃん!

俺がただの荷物持ちになってるくらいに戦ってたじゃん!


「これまでダンジョンにいたんだし休むよ。とりあえず2、3日休もうと………」


えぇー。

思ってると言おうと思ったが何その残念そうな顔。


「…………わかりました。」


納得してはいるけど不満ですって顔だ。

でも、ちゃんと休まないと体壊すから依頼を受けるなんて許可できない。


「ちゃんと休まないとダメだよ。体壊したら元も子もないし、強くなりたいんだったら休むことも修行だよ。疲労を残した状態で無理をしても変な癖がついちゃうしね。」

「確かにそうですね。わかりました。」


やっと納得してくれたよ。

と、ここで宿レイランに到着だ。

4日ぶりだけど、やっと帰ってきたーって感じがするな。

こっちの世界だと移動時間は結構かかるから10日も離れてるとか珍しくないのに、そう感じるのはやっぱりまだ俺が地球人だからかな?


「あ、みなさんおかえりなさい。」

「ただいま、レイランちゃん。」

「あぅ。あの、名前はあまり呼ばないでくれると……恥ずかしいので。」

「あー、うん。ごめん。じゃあ、なんて呼べば?」


この宿の名前は親バカな両親が娘の名前から取ったわけで、当然その娘としては恥ずかしい。

だから名前で呼ばないでほしいということだ。

そういうわけなんで、他のお客さん方、そんな目で見ないで。

リア充爆ぜろみたいな目はさ。


「えと、レイかランで…」

「じゃあ、レイちゃん。これでいいかな?」

「はい!」


うん。

親バカになるのもわかる気がする。


自分の部屋に帰ってベッドにダイブしたいところだがそれはすべきではない。

それをすると寝てしまいそうだし、4日もほったらかしにしてしまった馬達のお世話をしないと。

これまでの旅や時折様子を見てたりしたからかなり愛着が湧いてきたんだよな。

グルーム種というかなりゴツい馬だけど慣れると結構かわいいと思う。

ちなみに名前はアルバとマロン。

昔読んだラノベでアルバが白という意味があるみたいなのを読んだことがあるから。

マロンはどこかの国で茶色という意味らしい。

単純かもだけど、毛の色から決めた。

最初はオスだと思ってたけど両方ともメスだった時は驚いたっけ。


軽くコミュニケーションを取った後にブラッシングなんかをしているとシアがやって来た。


「へー。馬も持ってるのね。」

「まあね。移動は馬車がいいと思ってその時に一緒に買ったんだ。」

「これグルーム種よね? 今度乗ってみたいんだけどいい?」

「いいけど、馬具とか無いぞ。俺乗れないし。」

「乗れないの? 馬持ってるのに?」

「そりゃ乗る機会がなきゃ乗れるわけないだろ。馬車だってシアに教えてもらっただろ?」

「そういえばそうね。じゃあさ、私が教えてあげようか?」

「いいのか? ぜひ頼む!」

「了解。」

「乗馬デートだな。」

「ででで、デート!?」

「え? だって2人っきりで出かけるんだし、デートじゃね?」

「そそ、そうね。デートよね。デートなのよね!?」

「……慌てすぎだろ。じゃあ、とりあえず馬具を………あ。そういえば騎乗するかと聞かれてしないと答えたらこいつらを勧められたから乗るのに向かないんじゃないのか?」

「え、ああ、そうね。グルーム種ってみんな大きいのよね。これだけ体格がいいと乗るのに慣れが必要になるのよ。」

「なるほど。じゃあ、乗れないわけではないということか。」

「そうね。騎乗せずに馬車を引くのならグルーム種の方がいいからこの子達を勧めたんだと思うわ。」

「そうか。それなら心配はないな。でも、乗馬用の馬具を注文しないとだから今度の休み中は無理だし、乗馬デートはまた今度か……ちょっと残念だな。」

「え!? あ、そうね。残念ね。」


まだちょっとデートとかそういうのには慣れてないみたいだな。

ま、それも回数をこなせば慣れるだろう。


馬達の世話を終えて夕食、風呂を済ませて休もうと思ったが、やっぱりリリン達がスタンバッてる。

4日してないし、俺、寝れるかな?

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