第348話 楽しんでいる。的なお話
「さて、釣りでもしますか。」
「また釣りなのか!?」
「? あー。そういえば言ったね〜。でも今日は冗談でもなんでもなく本気だから。だから安心して。」
「どこを安心しろと!? というか、魔物を倒さないのか!?」
「いや、だって病み上がり多いしあんまり頑張りすぎるのもよくないかと。」
「それは、そうだが……」
「ほら、こっち座って。こうしてリフレッシュするのも大事なことだよ。」
「そうそう。セフィアの言う通りよ。ユキノは肩に力入れすぎ。頑張る時は頑張る。休む時は休む。メリハリが大事よ。」
「いや、しかしだな……」
駄々をこねるユキノに無理やり釣竿をもたせてしばらく待つとユキノの竿に反応が。
少しの時間格闘し勝利するユキノ。
さっきまで不承不承といった感じの表情をしていたが、1匹釣り上げるとその表情を喜色の色に変えた。
うん。
やっぱりしかめっ面より笑ってる方がいいよね。
そしてユキノは1匹釣れたことで気を良くしたのだろう。
文句を言うことなく釣りを楽しんでいた。
「魔物きた。」
「あっ! またかかった!」
すごく楽しんでいた。
「今度はブラックホッパー。」
「これはきっと大物だ!」
本っ当に! 楽しんでいる。
「そろそろ帰るぞ〜。」
「見ろレント! こんなに釣れたぞ! それにこいつを見てみろ! こんなに大きいぞ! こいつはきっとこの川のヌシに違いな……あいたっ! 何をする!」
「何をする! じゃない! 確かに休むのは大事だけど、場所を考えろよ。周りを警戒せずにいるなんて不用心過ぎるぞ。」
釣りにどハマりしてるユキノにチョップをお見舞いする。
そして正論だ。
ちょっと八つ当たりもしてる。
だって俺が始めたのに魔物の襲撃で戦わざるを得なかったし。
病み上がり5人はあまり戦わせるわけにはいかないわけで、自然と俺達が戦うことになる。
その関係でほとんど釣りが出来なかった。
だからその八つ当たり。
ちなみに残り二本の竿はアカネとシアが使ってた。
「むっ……それは確かにその通りだ。少々浮かれすぎていたようだ。申し訳ない。」
「いや、分かればいいんだ。街の中ならそれでいいんだけどね。」
そんなに素直に反省されると、なんか、少し罪悪感が……
「そ、それで何匹釣れたんだ?」
「なんと86匹だ! まあ、私1人で釣ったわけではないがな。でも初めて釣りをしたにしてはよく出来たと言えるだろう。」
ふんす。とユキノが踏ん反り返ってる。
あれ〜。
こんな子だっけ?
こんな萌えアニメのキャラみたいなことする子だっけ?
まあ、いいや。
「じゃあ、それ全部締めてね。ストレ……アイテムボックスに仕舞うから。」
「スルー!?」
構って欲しそうにしてたからあえて無視した。
そういう時に構うのは基本的に嫁だけです。
で、すべての魚をストレージに仕舞ってから街へと帰る。
「依頼完了しました。」
「分かりました。えーと、ちゃんと全部ありますね。では、こちらが報酬となります。」
「ありがとうございます。」
「ルビーリンクの皆さんのおかげで随分と助かってます。ようやく供給できるようになる素材もありますから。」
「そうなんですか?」
「はい。ダンジョンでは手に入らない素材もありますから。やっぱり冒険者は依頼達成が基本ですよね。人の願いを叶えてこその冒険者です!」
「あ、はい。そうですね……」
あまりダンジョンメインの冒険者を貶めないで。
ほら。
あのゴツイ人達がこっち見てるじゃん!
ただでさえかわいい子いっぱいいるパーティなのにそんなこと言ったら絡まれるじゃないですか!
「随分と面白いこと言うじゃねぇか、小僧。」
ほら〜。
というか、それ言ったのこの人だよ!
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