番外編 ロマンを追い求めて

ここはグラキアリス王国のドラーエン領の街の一つ、カイン。

そこにある借家の一室である。


「ご主人様、頼まれていた品、ついに出来ました。」

「そうか。ついに出来たのか……」


ご主人様と呼んだ蜥蜴人族の女性の名はレイダ。

戦うこと、強くなることが好きだが、特技が裁縫という可愛らしいところのある魅力的な女性だ。

そして、そのレイダにご主人様と呼ばれたのはこの借家を借りており、レイダの主でもある異世界人蓮斗である。

なにやら含みをもたせた物言いだが……


「どうぞ、ご確認ください。」

「うむ。」


レイダもそれっぽい言い方をしているあたり楽しんでいるのか、事前に指示があったのだろう。

そしてレイダからその物を受け取った蓮斗はおもむろに広げる。

その手にあったのは………セーラー服だった。

昔の水兵が着用していた物ではなく女生徒が着用する物だ。


………こいつ、変態か?


頼んでいた衣服は他にもあるようで、蓮斗は次々と広げて確認していく。

サイズの違うブレザータイプの女生徒の制服2セット、体操服にブルマー、水兵タイプのセーラー、尻尾穴の空いたスーツ、とある小説に出てくる、閃光の二つ名を持つ少女が着ていた装備、冥界の女神の名を冠する銃を持つスナイパーの装備、ドラゴンテイマーと呼ばれた少女の装備の赤い方、別の小説の日本刀を持ったメロンパン大好き少女、別作品の炎龍を倒した門の向こうの魔道士の少女、また別作品の性格の歪んでしまった盾使いの勇者の剣になりたいと願った少女と、徐々に方向性が変化していったが、どうやらコスプレ衣装を作って欲しいと頼んでいたようだ。


「よく出来ているな。大変だったろう?」

「閃光以降のはレイカー様が貸してくださった本に載っていたのでむしろそれよりも前の物の方が見本となるものが無くて苦労しました。」

「そうか。ところで、レイダの分が無いようだが……」

「い、いえ、奥方様達のよりも先に作るわけにはいきませんから!」

「そうか。」


そうは言っているが、レイダは恥ずかしかったのであろう。

もちろん、自分よりも主の嫁を優先したというのも間違いでは無いだろうが。


「それはともかく、本当にありがとうな。では、嫁達に着てくれるよう提案してくるよ。」

「分かりました。」


そう言うと蓮斗は空き部屋から出ていき、嫁達がいるであろう自室としている部屋へと赴く。


「というわけで、これを着てみてくれないか?」

「え、別にいいけど……急にどうしたの?」

「いや、まあ、こういうのはロマンがあるというか、なんというか、こういう格好をしている嫁達を見たかったと思ってさ。…………(あわよくば、その格好でそういうアレもしたいなと)」

「ふーん。分かったよ。リリンもルリエちゃんもいいよね?」

「はい。」

「楽しそう。」


どうやら嫁達はコスプレには特に嫌悪感は無いようだ。

レイカーから借りている本をよく読んでいることもあって心のどこかでやってみたいと思っていたのかもしれない。

それによくよく考えてみれば、着ぐるみパジャマを用意してお揃いで着たこともあり、そういう格好には耐性があるのだろう。


「それじゃ、僕達は着替えるからちょっと外に出てね。」

「了解。」


嬉しそうな顔をしながら蓮斗は一旦部屋から出て行った。


「これってどう着ればいいのかな?」

「ちょっと待って。今レイカーの本で確認するから。」

「これはこうすればいいのかな?」


衣擦れの音と普段とは違う格好の為にどうすればいいかと話している声がドアを隔てた向こう側から聴こえてきており、期待感が否が応でも高まっていく。

そうして待つこと5分。

部屋の中から入っていいよ〜という声を聴き蓮斗は高まる鼓動を感じながらドアを開くとそこには閃光の衣装を着たセフィア、冥界の女神の衣装を着たリリン、ドラゴンテイマーの衣装を着たルリエが立っていた。

閃光さんの持つ凛々しさのイメージとセフィアのたぬ耳、たぬ尻尾が合わさり、なんとも言えない可愛さを演出し、リリンの持つクールな部分が冥界の女神さんとマッチしており、それでいて小柄な体躯故に背徳感を演出しており、ルリエはその幼くも愛らしい容姿がオリジナルのドラゴンテイマーさんと似ており髪の長さも近く再現度の高さが際立っていた。

とにかく、3人ともとても可愛く蓮斗は興奮しっぱなしだった。


「3人ともすごく可愛いよ! というか、可愛すぎてもう我慢できないよ。」

「え、レント? ちょっ、待って。まだみんなが家に……」


セフィアが言い終わる前に蓮斗は嫁達に襲いかかる。

その際にさりげなくストレージから消音効果のある結界を構築する女神アリシアから貰った魔道具を取り出してリリンに手渡していたりする。

意外と抜け目ないな。


そうして4人は日が暮れるまで部屋から出てこなかった。

その夜も遅くまで部屋に明かりがついていたのは語るまでもないだろう。



翌日、レイダの自室にて。


「レイダさん。あの服すごく良かったよ。また頼むかもだけど、その時はよろ…………し………く……」

「ご、ごごご、ご主人様……」


早く感想を伝えたくてノックを忘れそのままドアを開けた蓮斗の前にはマントに煌びやかな装飾のついた軍服に身を包むレイダの姿があった。

人前で着るのは恥ずかしいが好奇心には勝てず自室で着てみたのだろうが、テンプレとしか言いようがない。

それはそれとして、帽子が似合ってて可愛い。


「えーと、似合ってる……よ。」

「あ、ありがとうございますぅ…」


声が尻すぼみになり、顔を赤くしている様が可愛いと思う蓮斗であった。

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