番外編 女の子達のデート準備

〜アレクシア視点〜


ユキノと今後のことを話し、お昼を食べた後、私とエルナはセフィア達と一緒に出かけることになった。

目的は明日の………で、で、でで、デートの準備だ。

いや、明日するとは限らないし、いつとか決めてるわけじゃないわよ。

でも、そういう事は早いうちにしたほうがいいと思うし、だからセフィア達と一緒に出かけたんだけど………私、あまりそういう服とか詳しくなかったわ。

普段は冒険者らしい格好をしているし、私服も実家にいた頃から着ていて落ち着くからと気楽だからという理由でついつい緑系統ばかり選んでしまって、あまりバリエーションがないのよね。

その所為なのだろう、私はデートに使うようなオシャレな格好とかってあまりしたことがない。

実家の頃もパーティーなどで着るのはエルフ伝統の服だから参考にはならない。

というわけで……


「助けてください!」

「お願いします。」

「えーと……」

「よくよく考えてみたら、私こういう時どんな格好すればいいのかとかよく分からなくて。だから服選びとか、その、手伝って欲しくて……」

「任せて。レントの好みならよく分かってるからね。」

「元からそのつもり。」

「大船に乗った気でいてください。」

「ありがとう、3人とも。」

「ありがとう。」


セフィア達という強力な助っ人を得て、服屋へと赴く訳なのだが……


「シアはエルフだから肌の綺麗さと手脚を活かした方がいいから、これとこれを組み合わせて……」

「待って。レントならあまり注目されるのは好きじゃないと思う。そこまで露出を増やすと余計なのが釣れて困るだけ。」

「お兄さんならエルフらしさを出せる物の方がいいと思いますよ。」


正直に言ってわたしはオシャレというものを舐めてた。

店に入ってから既に1時間半は経っている。

最初の方は私も参加してたんだけど、普段からあまり頓着してなかったせいかすぐについていけなくなり、今ではエルフの等身大着せ替え人形と化している。

い、言い訳させてもらうなら、エルフの里では外界との交流があるとはいえそう言った品はあまり入ってこなかったし、冒険者になってから1年も経ってないんだもの。

それでおしゃれに適応するのは無理だと思うのよ。


そこから更に1時間掛けて私とエルナの服とアクセサリーを見繕うことになった。



「疲れた……」

「ごめんね。二人がかわいいからつい熱が入っちゃって……」

「私達からお願いした事だから、気にしないで。それにいいのを見繕ってもらったしね。」


服だけでなくアクセサリーまでフルでコーディネートして貰ったものの、結構な時間になったので休憩の為に喫茶店によって貰った。

だって2時間半も着せ替え人形になってたから、さすがに疲れるもの。


「次はどこに行くかだよね。」

「そうね。でも、今回はノープランで行こうかなって思ってるのよ。」

「どうして?」

「レントとならなんていうか、こう、自然体でいたいなって。ほら、事前にデートプランとか立てたりするとどうしてもそれを意識しちゃうでしょ。そうなると自然体でいられるとは思えないし。あと、緊張してプラン通り運べる自信ないし……」

「私も…」

「なるほど。じゃあ、せめてどこか美味しい店でも探しといたら? 夕食に雰囲気のいいところとかさ。」

「そのまま宿へゴー。」

「なっ!? や、宿って!?」

「伽の事。」

「ちょっ!? リリン! こんなところで何言ってんのさ!」

「でも、重要な事。」

「それは……確かに大事だけど…」

「大事なの!?」

「でも、時と場所を考えてよ!」

「………確かに軽率だった。」

「全くもう。」

「えーと、その、私としてはまだそんなに急がなくてもいいと思うんだけど……」

「でも、いつかはするわけだし。」

「それはそうだけど……」

「まあ、無理強いは良くないよね。とりあえずは美味しいお店を探そうか?」

「……分かったわ。でも、その前にちょっとトイレ行かせて。」

「うん。じゃあ、先に会計済ませとくから。」

「ありがとう。」

「あ、私も。」


セフィアにお会計をしてもらい、私とエルナはトイレで用を足す。

そしてセフィア達と合流しようと店を出ようとすると外から大きな声が聞こえてきた。


「お断りします!」

「まあ、そう言うなって。俺らこう見えても紳士なんだぜ。」

「そうそう。ちょっとお茶しようってだけじゃないか。」


何?

ナンパ?

っていうか、これ、ヤバくない?

なんか、10人近くいるように見えるんだけど。

しかも手を掴もうとしてる。

助けないと!


「ちょっ、離……あれ?」

「へ?」

「おい何やってんだよ。お前は女1人掴まえてられないのかよ。」

「いや、そんなはずは……」

「離せ。」

「ぐはっ!」

「なんだこいつら!」

「触らないでください!」

「うがっ!」


えーと、あれ?

なんか、セフィアの手を掴んだナンパ男からあっさりと拘束から抜け出してるし、リリンも吹き飛ばすし、ルリエが弾くとナンパ男はバランスを崩して転んだ。

え?

今何が起こってるの?


「この、調子にのるな!」


って、呆けてる場合じゃない!

ナンパ共がキレて3人に襲いかかる。

助けないと!


「遅い。」

「消え……がはっ!」

「面倒ごとを起こさないで欲しいな。」

「ぐはっ!」

「弱すぎです。」

「げふっ!」


助けようと思ったけど……必要なかった?


「あ、シアちゃん。お会計の時に聞いたんだけど、いいお店があるって。ちょっとこれから見に行ってみない?」

「あ、うん。」


ナンパ男達のことなどなんでもない……どころか無視してさっさと歩いていくセフィア達。

私とエルナはそれを慌てて追いかける。


それにしても、あんなにあっさりと片付けてしまうなんて……。

今は実力に少し差が出てしまったけど、いつか絶対に追いついてみせる。



セフィア達が聞いたというお店はとても大きく、値段も高いが、料理に期待できるお店だった。

更にここは宿まで併設されているというもので、ディナーのその後まで対応しているというもの。

これは……か、覚悟を決めるしかないのかも。

いや、別にそういうことがしたくないわけじゃないし。

でも、最初だし、やっぱり少し怖くはあるわけで……って、誰に言い訳してるのよ、私は。

………今考えてても仕方ないか。

その時になったら、その時に考えよう。


そして、デートの日は明日という事になり、私達は明日のデートに備えて早めに休む事にした。

人生初のデート。

楽しみだ。

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