第309話 頑張ってくださいね。的なお話
パーティ名も決まり、探索予定表を提出し、不備があるなんて事もなく無事に受理された。
「それで、皆さんは地図などはお持ちでしょうか?」
「地図ですか?」
「はい。ダンジョン内の地図です。階層ごとに記された地図で受付カウンターで販売しています。」
「は、販売ですか………」
「はい!」
……随分といい笑顔ですね。
でも、そういえばそうだよね。
ダンジョン内の構造が変わるのなんて初心者ダンジョンだけだったよ。
まあ、あれもアリシアさんの若気の至りというか、親心というか、そんな感じで作られたんだけどね。
「えっと、一階層進むのにどのくらいかかりますかね?」
「そうですね〜、初めて挑戦する方なら半日ほどでしょうか? でも日帰りの予定ですし奥まで行かず浅い所で慣らすところから始めてはどうでしょう?」
「あ〜、そうですね。分かりました。では、まずは一階層と念の為に二階層の地図を下さい。」
「一階層が1000リム、二階層が2000リムで3000リムになります。」
「結構高いですね。」
「先人達が頑張ってマッピングした成果ですので。ちなみに隠し通路などを発見したり、未踏破の階層をマッピングした情報などは喜んで買い取らせていただきますので、頑張ってくださいね。」
「はい。」
頑張れと言われても……一応返事はしたが、迷宮都市初心者に何を求めてるのやら。
受け取った地図を手にダンジョンに向か……………わずにダンジョンの場所を聞く。
これを聞かない事には何も始まらないしね。
そしてきっちりと場所を聞いたらダンジョンへと今度こそ向かう。
しかし、なんだか懐かしいな。
初めてギルドに行った時も似たようなことしたっけ。
◇
ダンジョンの前にはなんとも立派な門と大きな兵舎が………
って何これ?
なんでこんなものが?
あ、門番さんがいる。
「すみませーん。この門って何ですか?」
「ん? ああ。今日が初めてか?」
「はい。昨日この街に来たばかりなので。」
「そうか、それなら知らないのも当たり前か。この門は中から魔物が出てくるのを防ぐためのものだ。今から150年前にダンジョンの魔物が溢れ出した事があってな、それ以来市民を守る為にこの門が出来たというわけだ。まあ、それ以降一度もそんな事は無いんだけどな。」
「そうなんですか。教えてくれてありがとうございました。」
「おう。」
そんな事があったのか。
とにかく理由もわかったことだし早速ダンジョンに入るとするか。
「ってちょっと待て! そんな装備でダンジョンに入るのか!? 不測の事態があった場合どうするつもりだ!?」
「え、ああ。大丈夫ですよ。俺はアイテムボックスのスキルを持っているんでほら、この通りちゃんと食料も持ってますよ。」
「そ、そうか。いや、それならいいんだ。悪かったな時間取らせちまって。」
「いえ、仕事でしょうし、心配してくれたんですか、気にしてませんよ。」
一応、武器と防具はフル装備何だけどバックパック的なのがあった方がいいのか。
今度リリンか誰かにアイテムバッグを持ってもらうか。
別れて行動するつもりは無いけど、さっきの門番さんが言ってたように不測の事態とやらに見舞われるかもしれないんだし、出来る限りのことをした方がいいかな。
そしてようやく入ることができたダンジョンはど定番の洞窟タイプだった。
光苔のような物があるのか壁が光っているが全体的に少し暗い。
まあ、見えないほどではないので大丈夫だろう。
それよりもリリンと蒼井の方が心配だ。
ここは魔物が一杯いるから気配察知の負担がどうなることやら。
それも含めての慣らしだ。
気を引き締めて行こう。
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