第297話 無双シリーズ的なお話

武器屋と言えば寂れた通りのひっそりと佇むボロい小屋に名工や匠の技を持つ職人がいる。

そんなイメージがある。

しかし、今回はそういう店には行かずこの街でも特に大きな武器屋を訪ねようと思っている。

ぶっちゃけ、名工や天才ドワーフの店は今回の趣旨から外れているから。

色々な武器を見ることが目的だから、小さな店よりも大きな店の方がいい。

大きければそれだけ儲かっているという事で、儲けがあるなら材料の調達にかけれる資金も多いということ。

お金があれば魔物素材を扱える職人も雇いやすい。


そういう人付き合いが苦手そうな名匠がいそうな店は別の日に訪ねよう。

まあ、幾ら名工や匠に天才ドワーフでもアリシアさんの武器を簡単に超えれるとは思えないけど。


というわけで道行く人に聞いて大きな武器屋を聞き、たどり着いたのは二階建てで剣の看板を掲げた大きな武器屋。

中に入ってみると色々な武器が所狭しと並んでいる。

装飾過多な儀礼用の短剣もあれば簡素で戦うために無駄を削ぎ落としましたといった感じの大剣、なかなかにエグい突起が目立つメイス等、多種多様な武器が置いてある。


もちろん、レイダさんご所望の槍も。

十字槍に二股になっているの、刃先が蛇みたいにくねくねしててその先が少し別れてる………って蛇矛じゃねぇか! それにあっちにあるのは青龍偃月刀に方天画戟、竜胆まであるよ。

なんで無双シリーズ!?

これは是非聞かねば。


目を輝かせてるレイダさんはほっといて店の人間に無双シリーズ武器について聞く。


「アレですか。アレは大昔の勇者や英雄が使ったとされる武器のレプリカです。本や劇などに登場してて彼等に憧れる人達が買っていってて、今でも大人気なんですよ。」

「そ、そうですか………」


時間軸とかデタラメなんだな。

というか、なんでわざわざあれで戦ったんだよ。

どうやって作った!

今なら俺も作れるけど。

でも、そういうことじゃなくてなんで作り手がいなさそうで手に入れにくくて手入れしにくそうなのを使ってるんだよ。

気持ちはわからなくもないんだが、だからって遊び半分で戦うなよ。


「あれってひょっとして?」

「ああ。俺たちの世界の武器だよ。しかも、創作物に出てくる実在したかも怪しいやつ。」


セフィアが聞いてきたから答える。

あれらって時代的におかしいって話を聞くんだよね。

青龍偃月刀とか方天画戟とかってもっと後に生まれたって聞くし。


ここまでくると、なんかエクスカリバーとかデュランダルとかその辺の奴もありそうだな。

これは探してみるのもアリかも。


そう思って両手剣が置いてあるスペースに向かったんだが、意外な事に一つもなかった。

エクスカリバーもデュランダルもダーインスレイフもレーヴァテインもミストルティンも草薙の剣も天羽々斬も何もない。

なんでたろう?

でも聞くのはまずい気がする。

俺のフレアガングニールもグングニルじゃなくてガングニールだし、何か意味あるのかも。

まあ、どうでもいいか。

俺には関係ない。

勝手に浮かんだのならそのまま使うだけだし、無いものを探すのもめんどくさい。

見かけて買えそうなら買う。

それでいいや。


この後は適当に物色して楽しむ。

これ、重要。

日本じゃそんな簡単に武器を見て回るなんて出来ないし、ここにはファンタジーな武器がいっぱいある。

魔法金属を使った武器もあれば魔物の素材を使った武器もある。

どれも高いけど。

そんなのを見るなんてそうそうできることじゃ無い。

迷宮都市に行ったりして慣れたりするかもしれないが、今は感激出来る。

ならこの感情を大事にしよう。


買うかどうかは分からないが、レイダさんも楽しそうに物色してるし、俺も楽しもう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る