第290話 まさかの再登場的なお話

そよ風亭とやら入ると出迎えてくれたのは明るく元気な看板娘だ。

最初のルリエを思い出すな。

ルリエの方がかわいいけど。


「いらっしゃいませ〜、お泊まりですか?」

「ああ。一泊で、馬車はどこに置けばいいかな?」

「馬車なら裏手に……ナツメ、案内してあげて。」

「はーい!」

「あの子は?」

「私の妹です。」

「そうなんだ。あ、部屋は三人部屋と四人部屋が良いんだけど、空いてるかな?」

「ちょっと待ってくださいね……お母さーん、三人部屋と四人部屋って空いてる〜?」

「仕事中は女将と呼びなっていつも言ってるだろう!」

「ごめーん。それで、空いてる?」

「ちょっと待ちな。えーと、四人部屋は全部埋まってるね、三人部屋なら二つ空いてるからそこ二つと一人部屋で良いか聞いてきてくれ。」

「はーい。」

「……えーと、三人部屋二つでいいですよ。」

「もしかして、聞こえてました?」

「十分過ぎるほどに。」


この親子、凄く声が大きいな。

奥の方にいた女将さんに呼びかけていたんだけど、ここでも普通に女将さんの声が聞こえてたからね。

それに、女将さんに呼びかけるこの子の声も少しうるさいくらいだったし。


「おねーちゃん、案内終わったよ。」

「ありがと、ナツメ。それで、七人いるけど、本当に三人部屋二つでいいの?」

「問題ないよ。」


その俺の言葉を聞いたおねーちゃんの方が女将さんを呼びに行った。

どうやら鍵の管理は女将さんがしっかりとしているみたいだ。


「さっきはすまないね。ちょっと手が離せなかったんだよ。これが部屋の鍵ね。あんた達の部屋は6号室と8号室だよ。」

「いえ、大丈夫ですよ。」


そして部屋に着いたので先ずは盗賊をどうするかを話し合う。

ちなみにこの宿もお風呂がなくてお湯を支給してそれで体を拭くスタイルだった。


「盗賊だけど、どうする?」

「どうするって?」

「明日移動するときに襲われるかもだから先に潰しておくか、それとも明日遭遇したらその時に対応するか。」

「仕事じゃないし、その時にするべき。」

「僕は……そうだね。敵の規模も強さも分からないのに無理する事はないと思う。明日襲われたならその時は対応するけど、自分から攻めに行くのは止めようよ。依頼されたら行くかもだけど、流石にそういうのはギルドか領主の方に先に行くからないだろうけど。」

「私は、ちょっと怖いんで、無しの方でおねがしいます。」

「分かった。それじゃ、盗賊は襲われたらその時って事で。まあ、それなら最初から強いのが襲ってくることもないだろうし大丈夫だろう。」


まあ、嫁達が嫌がるならするべきではないな。

この村の人には悪いけど、見ず知らずの人か嫁のどちらかなら嫁を選ぶから、今回は人助けは止めよう。


「それじゃ、話も終わったし、村を見て回るか。」

「ん。」

「そうだね。」

「分かりました。」


アカネ達と合流して村を回る。

合流した時に、レイダさんから盗賊はどうするかを聞かれた。

「盗賊を捕まえれば、村から謝礼が貰えて盗賊の所持品が手に入るから馬車の代金の補填ができるかもしれませんよ?」と言われたが、さっきしたセフィア達との話し合いの事を伝えればすぐに前言を撤回した。

情報もなく挑むのは危険だとちゃんと理解してくれた。


その後は前の村と同様に適当に回りながら露店や雑貨屋なんかを適当に回る。

今日は時間もあるしのんびりできるな。


「泥棒ー!!」


と、思ってたんだけどなぁ。

目の前の精肉店で泥棒が出たよ。

それによく見てみれば、あの泥棒には見覚えがある。

あいつはなんかよくわかんないバカップルの片割れだったはず。

同業者の犯罪を見過ごして冒険者という職業に対する不信感を村の人に持たれるのは御免被るし、さっさと捕まえるか。

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