第280話 そういうのは家で的なお話

馬車を走らせながらふと考えた。

そういえば、家賃払ったっけ? と。


「あのさ、家賃って払ったっけ?」

「え、あっ! 忘れてた!」

「やっぱり! どうしよう!?」

「レント、セフィア、落ち着いて。私が今から行ってくるから。だからここで待ってて。」

「ありがとう、リリン。今お金渡すから。本当にごめんね。」

「気にしないで。じゃ、行ってくる。」

「お願いね、リリン。」


リリンが転移魔法を引いてくれてて良かったよ。

じゃないと今からカインまで帰らないといけなくなるから。

まあ、その場合は遠出するようになってたのかは分からないけどね。


そして待つこと30分。

家賃を払ってきたリリンが帰ってくる。


「ただいま。」

「おかえり。それと行ってくれてありがとね。」

「ん。妻の務め。」


ふんす。と、自慢げにしてるリリンがかわいい。

思わず抱きしめてしまったよ。


「わっ!」

「ごめん。ついかわいくて。」

「びっくりしただけ。」


それからほんの少しだけ抱きしめてから離すと後ろの方にスタンバッテいる子が2人いた。

だから、2人も抱きしめた。

ただしリリンよりかは短めだ。

だってリリンが頑張ってくれたからだからね。


「そういうのは家でやってくれない?」


アカネに言われてハッとした。

そして今更ながらに恥ずかしくなったよ。

リリンは誇らしげにしてるけど。


それから気を取り直して馬車を走らせていくが馬鹿な盗賊や一年分の家賃を忘れてたりと色々あったのであまり進むことができずに日が暮れてしまった。

まあ、こんなこともあるよね。

まだ初日だけども、気にしない方向でいこう。


蓮「それで、馬車はどこに置こうか?」

リ「森の中?」

蓮「でも、家に帰るよね?」

セ「そうなんだよね。ストレージにしまえたりしないかな?」

蓮「しまえるだろうけど……馬がね。流石に生き物は入らないから。」

セ「だよね。うーん。やっぱり森の中がいいのかな?」

蓮「それしかないかな。」


本来ならば移動を開始する前に相談とかしとくべきなんだけど、ずっと鍛冶修行をしてたからね。


「半分に分ければいいんじゃない?」

「う、馬をか?」

「違う! 人を! 帰る人と見張りをする人をよ! 見張りを担当する人と家で寝る人を一日置きに交代するの。そうすれば馬車も守れるし、ゆっくりと休むことが出来るじゃない。」

「なるほど。じゃあ、そうするか。」


蒼井が提案したアイデアを採用することにした。

そして人間はBランク組とアカネの4人を半分に分けて、そこに3人を割り振った。

更に馬車を操作できる俺とレイダさんを分ける。

その結果、俺、アカネ、ルリエの班とセフィア、リリン、レイダさん、蒼井の班となった。

寝坊助が役に立たない可能性もあるので4人の班に入れた。


班分けを終えたら馬車を森の中の街道近くに置いて夕食の準備となった。

俺は食材と薪を出すだけで後はぼーっと待つ。

家と違うので、むやみに手伝ってもかえって邪魔になるだろうと考えてのことだ。

そして夕食を終えた後はすぐに休む。

今日の当番は俺達の班でセフィア達の班は家で休む。

ゲートは馬車の中に設置してある。

中なら誰かが通りかかっても見えないし、はたから見ても中で休んでた人が出てきたように見えるからね。


「おやすみ、レント。」

「おやすみ。」

「ご主人様、おやすみなさい。」

「おやすみ〜。」

「おう。おやすみ。」


リリン達を見送った後は夜営だ。


「それじゃ、俺たちも寝るか。最初はお願いね、ルリエ。」

「分かりました。頑張ります。」

「何かあったらすぐに起こしていいから、無茶しないこと。いいね。」

「はい。」


俺が注意したかったのに、アカネに言われてしまった。

むぅ。

若干ふてくされながらも俺は眠りについた。

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