第216話 それ、違う。的なお話

「さて、街の外の森に来たわけだけど、どうしよう?」

「はい? あんたがやろうって言ったんじゃないの。」

「そうなんだけどね。どうすれば一番効率いいのかとか、スキルはどうすれば覚えるのかとかがわかんないからさ。」

「それは先に調べとくべきじゃないの?」

「忘れてた。それで、どうすればいいかな?」

「音とか聞いて探すとか? 後、定番は気配察知だよね。確かレイカーさんから借りてる本に出てたよね。」


うーん。

セフィアが日本のラノベ文化にだいぶ馴染んできたな。

これはいいのか悪いのか。

まあ、一緒に楽しめるのはいい事かな。


「取り敢えず、俺達が仮想敵として襲おうとするからそれを察知するって感じでどうかな?」

「俺達って?」

「取り敢えず俺、セフィア、リリンかな。俺達は大抵一緒に行動してるし、俺は悪意感知があるから少なくとも襲おうとする奴らは分かるから、今回の馬鹿の手先くらいには対応できると思うから、他の人が対応できるようになった方がいいかと思ってね。」

「なるほど。じゃあ、それで。」


そんなわけでルリエ達から少し距離をとる。

ちなみに盗賊とかそういうのがいないのは悪意感知で確認してるから安心だ。

俺達は武器を木製のやつに変えてにじり寄る。

気分は這いよる混沌だ。


そうして適当に物音とかを出しながら忍び寄りある程度近づいたら一気に襲う。

もちろん寸止めするつもりだが。


その結果、見事に不意打ちする事ができました…………って駄目じゃん。

出来たら困るんだけど。


「少しは反応してよ。」

「そうは言うけど、後半はあんまり音が聞こえなかったし、そもそも三人とも早すぎるんだけど。」

「アカネは?」

「私は接近してきた時に気付いたんだけど、訓練の意味的には事前に気づかないとダメだからそのまま大人しくしてたのよ。」

「そうなのか。じゃあ、もう少しやってみるか。」


そんなわけで何回か繰り返すと、レイダさんが反応できるようになった。

詳しく聞いてみると見事に新たなスキルを覚えてました。

その名も闘争本能。

効果は敵の攻撃を本能的に感じる事ができる。

また、相手の強さを本能的になんとなく感じる事ができる。

そして、戦闘中にスキル保有者の勝ちたいという気持ちに比例してステータスが上昇する……というもの。


戦闘狂なところがあるレイダさんにはぴったりなんだけど、期待していたのとは違う。

一応敵の攻撃を察知できるらしいけど、カバー範囲が狭そうということでもうしばらく続けた。

その結果蒼井が気配察知を覚えた。

そして、リリンも何故か覚えた。

なんでだろう。

あれか?

奇襲前の様子をうかがっているのが気配を探るみたいだからか?

それで覚えるとか相変わらずリリンが凄いです。


「えーと。予想外なこともあったけど、期待通り気配察知を覚えた事だし、慣らしも兼ねて少し狩りでもしていこうか。」

「そうだね。それで班分けとかする? それとも一緒に行く?」

「別れる理由もないし一緒でいいんじゃない? 目的は慣らしなんだし。」

「そうだな。じゃあ、一緒に行くか。」


というわけで暫く狩りをする。

その際に二人が気配察知を使うのだが、まだレベルが低いせいか小型な魔物や虫なんかは分からないみたいだ。

そして、レイダさんは遭遇するゴブリンやオークなんかを嬉々として屠っていた。

嬉々としては少々言い過ぎかもしれないが、二人の気配察知とレイダさん本人の闘争本能で見つけたそばから倒しに行っていたんだからそう感じても仕方ないよね。


そのまま一時間ほど狩りをした。

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