第212話 誘いました。的なお話

受けた依頼はリバーサイドウォールクラブだけなんだが、時間が余ってしまった。

いや、別にすぐに帰ってもいいんだがなんかもったいない気がする。

目の前に川があるんだし魚を釣ろう。

丁度在庫も少なくなってきてるし。


というわけで釣り糸を垂らします。

餌は贅沢に蟹だ。

お昼のやつが余っちゃったんだよね。

ストレージに入れてもいいんだけど、蟹を食べる魚とかも地球にいたしきっと釣れるだろうと思って使った。

それに餌、普通の用意してなかったし。


そうして待つこと四十数秒、早速かかりました。

やっぱり川の魚は釣られることに慣れてないようで早くかかりました。

そうして釣れたのはリバーサイドウォールクラブの子供と思しき小さな蟹。

共食いかよ!

こんな小さな蟹を食べる気にはなれないし、リリースした。

大きくなったら美味しくいただこう。


その後も釣りを続けて、四十匹程の魚をストレージに追加した。

時々小さな蟹が釣れたが全部リリースしました。

これだけいるなら今後が楽しみだ。


満足いくだけ釣れたので、ホクホク顏でギルドに帰る。

途中、ゴブさんやコボさんや森のくまさん(クリムゾンベア)が出るが問題なく倒した。


セラさんの所で依頼完了の報告をしつつ、リィナさん達黄昏さん達の居場所を駄目元で聞く。

やっぱり稽古つけてくれる人がいたほうがいいと思うし、セフィアの実家に向かっている間、家の連中を気にかけててほしいなぁって思って。

そう思って聞いたんだが、もう少しかかるだろうとの返答が。

残念だ。


戻ってきたのが普通よりも少し早い為、並んでる人もいないし、もう暫くおしゃべりしてよう。


「そういえばあの蟹、結構いっぱい居たんですけどこの依頼って人気ないんですか?」

「そうですね、水と土の魔法を使ってくる上にあの硬い甲殻がありますから、皆さんのように無傷で帰って来ることはまずないんですよね。武器の耐久力がかなり落ちる上に怪我までするとあっては“普通”のCランクの人は受けようと思わないんですよ。」


自覚はあったけど、やはり俺たちは普通じゃないようです。

まあ、神様と友人でその神様の加護を持つ奴が普通なはずないんだけどね。


「それって大丈夫なんですか? 沢山増えたりとか。」

「動じないんですね。普通じゃないって言われても。」

「……あはは。まあ、自覚はありますから。」

「そうですか。それで沢山増えるんじゃないかという話ですけど、その辺は大丈夫ですよ。偶に黄昏の獅子や他のBランクパーティが個人的に狩っていますから。」

「個人的に?」

「ええ。あれは凄く美味しいですから。」

「なるほど。納得です。」

「納得という事は既に食べたのですか? でも無くなっているところはなかったと思うのですが。」

「えっと、つい、倒し過ぎちゃいまして、そのうちの一匹を食べたんですよ。」

「十五匹くらいだったっけ?」

「十四匹。」

「じゅ、十四匹ですか!? それは、また、沢山狩りましたね。」

「あはは。気づいたらそうなってました。それでなんですけど、いっぱい獲れたし今夜うちに来ませんか? うちの連中に食べさせたいし丁度いいかなって。二人共いいよな?」

「確かに凄く美味しかったし、みんなにも食べてほしいね。それにあの量なら一人増えても大丈夫だし問題ないよ。」

「ん。」

「だそうですけど、どうしますか?」

「いいんですか? あれ、売れば結構な額になりますけど。」

「そうなんですか? まあ、食べたいんで問題ないですよ。」

「そうですか。それでは仕事がありますので、終わり次第向かいますね。おそらく8時くらいになると思います。」

「分かりました。楽しみに待ってます。」


家の場所を伝えてからセラさんに別れを告げて家に帰った。

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