【第三章】挨拶しないと

第110話 新居に……移れませんでした。的なお話

〜????〜

あいつが死んでからもう三ヶ月。

私は今日もここに来てしまった。

小学校の頃は普通に仲良くしてた。

中学でも本当は仲良くしたかった。

でも、周りにからかわれたりするのが嫌で距離を置いていたらそのまま接する機会が無くなって、そのまま私は私立の女子高へ進学した。

中学の時はそれでも同じ学校という繋がりがあった。

でも、高校に上がって本当に離れた時は凄く寂しかった。

そしてそのまま一ヶ月が経ち、離れたままというのにも少しは慣れたときに、あんなことがあるなんて………


〜蓮斗視点〜


「ん〜。はあっ。」


結婚してくださいと宣言した翌日。

朝になって目を覚ました俺は伸びをした後部屋を見回した。


「今日でこの部屋ともお別れだと思うと、なんか寂しいな。」

「そうだね〜。なんだかんだで三ヶ月くらいずっと使ってるからね〜。」

「セフィア。起きてたのか。」

「さっきね。ねぇ、レント。この部屋も最後だしさ、その……しない?」

「お、おう。」


最後だということでこの部屋でセフィアと致すことになった。

途中で起きたリリンとルリエも混ざり、結局朝食を食べるのは時間ギリギリになってしまったが、まあ、いっか。



「さてと。それじゃ掃除しますか。」


遅い朝食を終えた俺達は部屋の掃除をする。

朝食を食べているときに長期間使った部屋への感謝を込めて最後に掃除をしようということになり、こうして四人で掃除をしている。

床を履き、水拭き・乾拭きし、机や椅子、収納ボックスも丁寧に拭いていく。

今までの感謝を込めて。


全ての掃除を終えて、忘れ物が無いか確認してから部屋を出る……前に一度部屋を眺めてからドアを閉めた。


今までありがとうございました。


女将さんにこれまでのお礼を言いながら鍵を返す。

一通りの挨拶を終えてフドゥーサン……じゃない不動産に新居の鍵を貰いに行く。

そうして鍵を無事に手に……出来ませんでした。

なんかぁ〜、雑草の成長が早いとかでそれを刈るのにもう一日欲しいって。

しょぼ〜んって感じだよ。

………小間使とか居ないのかな?



「恥ずかしながら、戻って来ちゃいました。」

「えっと、もう一日待って欲しいって言われて。」


俺は頭を掻きながら女将さんに告げ、それに追随する形でセフィアが補足情報を加える。


「そうかい。まだ前の部屋は空いているからそこ使いな。」

「はい。あ、これ宿泊費です。」

「はあ? 娘婿から金とるわけないだろう。そんなことは気にせずに好きに使いな。」

「ありがとうございます。」


いつか義母孝行したいな。

そう思いながら部屋に荷物を置いてから生活必需品やベッド等を買う為に再び街に出る。


そうして街に出て色々なものを買ってストレージの中に放り込んでいく。

そうして街を回っているとある一件の店の前に来た。

モルト…商会?

・・・・・・・あーーー!!

そういえばまだ盗賊のお金を受け取ってない!

そして、それはセフィア達も同様のようでまさしく思い出したーって顔をしている。

そんな訳で俺達はモルト商会に入る。

後でギルドに行こうと思いながら。


「いらっしゃーい…ってレントさん達じゃないですか。今日はなんの御用で?」


そう言って出迎えてくれたのは以前出会ったワルターさんだ。


「家を借りたんでその為のものをいろいろ買ってるんですよ。」

「そうなんですか。じゃあ、これなんてどうですか? ウチの自慢の商品、高級紅茶のルビーレッド。」

「なんで雑貨屋の自慢が紅茶なんですか!?」

「会長の奥さんの実家で作ってるんですよ。」

「あ、そうですか。じゃあ、一応買わせてもらいます。それとは別にいろいろ見せてもらっていいですか?」

「もちろんです。」


というわけで俺達は木桶や食器なんかを選んでいく。

げっ!石鹸ってこんなに高いの? とはいえ風呂に入るのに石鹸無しは日本人的にはキツイ。

というわけでこれも買おう。

うーん。鏡も高いな。これは無しかな。

そうして一通り選び終えて会計を済ませようとすると、ワルターさんはこんな事を言ってきた。


「奴隷は買わないんですか?」

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