第107話 結果発表的なお話
プロポーズの準備をしていると悟られないように意識しながら部屋に入る。
「だたいま。」
やべっ!ただいまをだたいまと言ってしまった。
流石にこれでバレたりしないよねと思うが内心ドキドキだ。
だたいまをただいまと脳内変換してくれている事を願いつつ、何事もなかったようにベッドへと腰掛ける。
「おかえり〜。遅かったけどどこ行ってたの?」
「あー、うん。なんか落ち着かなくてちょっと素振りしてきた。」
「…だたいま。(ボソッ)」
「ゔっ!」
リリンがボソッと呟いていたが、どうやらしっかりと耳に届いていたようだ。
恥ずい。
「落ち着かないって、やっぱり試験のこと?」
「えっ?ああ、うん。そうなんだよ。ほら、俺オークキングの時に倒れちゃったでしょ。だから心配でさ。」
プロポーズ準備の誤魔化しという意味もあるが、その辺のことは本心だ。
俺はあの時、何故か倒れてしまった。
想定外の格上とはいえ、最後まで護衛を全うできなかったのが結構気がかりなんだよね。
「そういえば、レントには教えてなかったね。ロストマインドの事。」
「ロストマインド?」
「そう。ロストマインド。大量の魔力を一度に使う事による精神疲労と虚脱感からくる意識の喪失。レントはまだ、魔法を覚えて二ヶ月くらいだから魔力を沢山使う魔法はまだ覚えないと思って教えてなかったんだよ。ごめんね。」
「いや、大量の魔力をって事なら確かに急いで教える必要はないし、しょうがないよ。俺自身あんなスキルを覚えるなんて思ってなかったし。」
「そういえばアレクシアさんがなんか言ってたよね。それに詠唱もなんか変だったし。」
「ああ、うん。あれは重唱っていってね、スキルガチャで出たスキルなんだ。オークキングと戦うのに少しでも手札は多い方がいいと思ってね。」
それから俺は重唱というスキルについてセフィアとリリンに説明する。
ある程度検証しないとまともに使えないだろうけど、ちゃんと使えたらかなり有用であるという事、これで二つ目の微ユニークな事なんかを説明する。
トントン
「お兄さん。ご飯に行きましょう。」
説明を終えた頃にルリエがやって来た。
そして彼女の誘いに従って食堂に移動する。
うん。今日も美味しい。
夕食を終えて少しの間ルリエの仕事を手伝った後、三人と一緒に部屋に戻る。
何をやるかはもう分かるよね。
◇
そして今日、試験結果発表の日となった。
え?
昨日の事?
昨日は何かしてないと落ち着かなかったから、片手剣の訓練や重唱の検証したりしてた。
重唱に関してだけど、使う魔法のランクや言葉の内容によって消費する魔力量が増減するみたい。
ヒートバーナーなんかは大体5くらいだったけど、フレアランスは10〜15くらいだった。
それを十数個使ってたらそりゃ倒れるよね。
検証が終わったら宿に帰って通常通りにして寝た。
そうして今日になったのだ。
ギルドへ結果を聞くために向かうが、リリンも同行している。
俺とセフィアだけだと緊張しすぎてしまうからお願いした。
ギルドについて中に入るととある一角だけ葬式か!とツッコミたくなるくらい静かでその雰囲気が伝播したのか、他の場所も心なしかぎこちない。
とはいえ、俺もあまり余裕がない。
口数も少なく待っていると黄昏さん達とセラさん他二人の受付さんがやって来た。
遂にか。と思い、身体が更に強張る。
そして結果が口頭にて伝えられていく。
模擬戦組は既に結果を聞いており、この場には依頼組がいる。
ダイン、トリア組は三人が受かり二人が落ち、カイル、キャロル組みは五人とも受かっていた。
アベル、リィナ組みである俺達なんだが……なんか様子がおかしい。
一向に結果を教えてくれないと思っていたら、何やら小さい白い虎がやって来た。
なんだろう?
と思ったら突然ボゥンと煙が出てきて、その煙が晴れると白銀の髪を持ち虎耳、虎尻尾の美少女が現れる。
白虎美少女か。
やっぱり異世界はいいな。と思っていたが、周りの様子がおかしい。
なんかざわざわしている。
「私は冒険者ギルドカイン支部支部長のクレア・スタンフォードです。今回の試験中にオークキング亜種並びにオークジェネラルが出現するというイレギュラーが生じたです。ですがこれを撃破した者たちがいるです。冒険者アレクシア、エルナ、レント・カザミ、セフィア、前へ出るです。」
なんかよくわかんないけどとりあえず偉い人らしいのでその言葉に従う。
「君達をただのDランクにして置くのは問題があるという意見が出て、これに同意しましたです。なのでその功績を讃え、エルナ、セフィア両名にはCランクを。オークジェネラルを単騎撃破したアレクシア及び、オークキング亜種を貫く一撃を放ったレントにC+ランクを授与するです。」
「「「「はいーーーー!?」」」」
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