第33話 神業レベル的なお話
リリンと向き合い、武器を構える。
セフィアの開始の合図が入る。
ごく普通の高校生だった俺は剣での戦いなんてほとんどした事ない。
一昔前ならいざ知らず、現代のもやしっ子はチャンバラなんてしない。
無い無い尽くしの俺がLVも上で戦闘経験豊富なリリンと打ち合っても勝てるわけがない。
故に目指すは短期決戦。
そして俺はセフィアの合図が終わると同時に地を蹴る。
狙うは唐竹。
ぶっ倒れるまで繰り返した動作によって洗練された自身の中では最高の技。
それをリリンは読んでいたのか見て躱したのかは分からないがバックステップで避ける。
だがそれも想定内。
手首を返して右切り上げを放つ。
しかしそれも躱される。
それでも俺は攻撃を続ける。
三人の中でリリンが一番AGIが高い為、足を使われたらお終いだ。
だから俺は攻撃を続ける。
右切り上げの次は左薙ぎ、袈裟斬り、逆風、逆袈裟、龍巻○擬き。
それをリリンは踊っているかのように躱す。
そして回転しての擬きを放った時、リリンは既に視界の中にはいなかった。
リリンの姿を探し出した直後に首筋に触れる木の感触。
どうやら俺は一分と経たずに負けたようだ。
試合の後に擬きをどういう風に躱したのかリリンに聞いてみると、力が外に向くのを見たから回転斬りが来ると予測し、軽く跳んで背後にまわったとのこと。
そしてその際にAGIについての説明をしてくれた。
AGIが上がれば当然素早さが上がるが、副次効果として速さに対する能力も上がる。
自転車しか乗った事がない人が突然移動は常にF-1カーを使えと言われても事故るのが関の山。だから事故らないように動体視力を上げるみたいなことかな?
もちろんAGIが高くなくても素早い動きに対応できる人はいる。というかたくさん居る。だから重要なのはステータスだけではないと教えてくれた。
リリン先生のステータス講座〜AGI編〜を受けた後は俺とセフィアの試合だ。
片手剣と双剣を模した木剣をそれぞれ構える。
AGIは俺が一番低いからセフィアより上回っているSTRによる一撃必殺のカウンターを……って必殺じゃ駄目じゃん!というかあんま傷つけたくない。
殺さずといえば飛天○剣流だ。
つまり剣心のように神速で…ってAGI低いんだった。どうしよう。
なんて考えていたのがいけなかった。
いつの間にか試合は始まっていて気づいた時にはセフィアからいいのを貰っていた。
防御もせずにボーッとしていた俺を心配するセフィア達に戦い方を考え込んでたとだけ伝える。
嘘は言ってないよ。ちょっと、ほんのちょこっとだけ真実をボカしただけ。
だって○剣流わかんないだろうし。
その後も模擬戦をお昼まで繰り返した。
因みに勝率はセフィアには3割。
リリンは0割……というか全敗だった。
今日のお昼は少し奮発してステーキにした。
出てきたステーキを見てびっくり。なんとステーキの厚さが3cmはあるのだ。
その分サイズが小さいなんて事もなく、スープとパンがついて700リム。
宿のお昼7食分なだけあって肉厚ステーキのガツンとした美味さがたまらない。
あ、宿のお昼も普通に美味しいよ。
午後は多対一の戦闘方法の話し合いや立ち回り方の訓練を二時間程やった後、今日は早めにきりあげる。
そしてやって来ました、武器屋。
アリシアさんから貰った鉄の剣が折れてしまって、あまつさえ柄も無くしては修理のしようもない。
まあ、咄嗟に投げてそのまま見つからなかっただけなんだけどね。
一応予備の剣もあるけど、アリシアさんの剣と比べるとなんか頼りない。
なので危ないからと回収してた刃の方を見せながら武器屋の人に相談すると、どうも前の剣には斬れ味上昇、劣化耐性の効果が付いていたうえに素材自体は普通だが、神業レベルの技術で造られたようだ、との事。
アリシアさん。初心者になんつーもん渡してんですか。……それとヒノキの棒の存在意義って一体。
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