第17話 活発少女は超絶美少女を問い詰める

Side:一ノ瀬明梨


 日裏くんを呼び出した次の日の放課後、私は麗華と一緒に学校から帰っていた。


 普通に学校で話をしていてもこうして一緒に帰り路を歩いていても麗華におかしいところはないし、日裏くんが言っていたことが嘘なんじゃないかと思えてくる。



 私じゃ考えても分からないし、こうなったら直接聞くしかないよね!


「ねー麗華、少し聞きたいことがあるんだけどいい?」


「どうしました?」


「最近何か良いこととかあった?」


「私ですか? 何もありませんよ。どうかしたのですか?」


「いんや? 麗華が男子に自分から関わっているの見たことなかったからさ!」


 うん。私が知っている中では麗華から男子に話しかけたことすら一度もないはず。いや、あったとしてもただの業務連絡だった。


 もしも本を貸すみたいな話になってもただの社交辞令として言うだけで、本当に借りに行く事はないはずなのに。


 それが、私もほとんど話をした事がないし、麗華が話したところを一度も見た事がないはずの男子にいきなり本を借りに行っただなんて、異常を通り越して異様だよ……。


 少なくても本屋で見かけたから話しかけるなんてことを麗華はするはずがないのに、日裏くんは一体何をしたというのさ……。


 今のところ私が持っている手がかりは、日裏くんが言っていた光生様が関係しているかもしれないってことだけなんだよね。


「んー、光生様に関係かぁ……」


「な、何の話ですか!?」


 ……おやぁ? うっかり声に出ちゃったと思ったけれど、これはこれは? まさか本当に関係しているのかなぁ?


「麗華~? 急にうろたえてどうしたのかな? 私には光生様の名前に反応したように見えたんだけどな~?」


「それは……今女子高校生の中でもっとも有名だと聞いて気になっただけです。他意はありません」


「ほうほう、他意はないのか。そうかそうか、って騙されるかー!」


 ついつい叫んだら麗華がビクッとした。動きが可愛い……じゃなくて、だっておかしいじゃん!


「何でかなー?」


「な、何がですか?」


「どうして光生様が今女子高生の中で最も有名だって知っているのかな!? 一昨日まで存在すら知らなかったのに!」


「それは……そうです! ネットニュースで見ました!」


 あれ、おかしいな……麗華ってこんなにポンコツだっけかな……。


「嘘をつくならそうですって言っちゃダメでしょうが! 誰がどう聞いても今考えた言い訳ってわかるわよ!」


「ええ、でも、その……」


「でももそのもないの! まず、光生様について知りたいなら私に聞けばいいのに聞かない時点でおかしい!」


「うぅ……」


「次に、雑誌を見せて光生様のことを教えた時も全く興味を示さなかったのに調べていることがおかしい!」


 麗華は図星なのか軽くうなだれている。しかし、最後に言おうと思っていたことが残っている。いやむしろ今日はこの話をするために居る!


「最後に、日裏くんに何度もあなたは神代光生ですかって聞いている時点で探していることがバレバレ! というか日裏くんに聞くことがおかしい!」


 その言葉を聞いた瞬間うつむいていた麗華は驚いたような表情を浮かべながらバッと顔を上げて言った。


「なんで明梨ちゃんがそのことを知っているのですか!?」


「麗華の様子がおかしかったから日裏くんに直接問い詰め……いや、聞いてきたのよ」


「……私の様子……ですか?」


 あら聞きました? まさかの無自覚ですわよ?


「麗華が自分から男子に関わりに行くなんて初めてでしょうが! しかも今まで会話しているところすら見た事がなかった日裏くんにだし、彼に何かされているのかと思ったわよ……」


「日裏さんはそんなことしません!」


「それは日裏くんに問い詰め……聞いたときに分かったわよ。けれど、その前に私に言う事がない?」


「あの……嘘をついてごめんなさい……」


「うむ。許そう」


 って違う! 麗華に嘘をつかれたのは初めてだけどその理由が可愛すぎるし、正直あのしおらしい姿を見ただけで既に私は許していたよ……。


「ちなみに、日裏くんとはどっちから関わるようになったの?」


「……私です。私が一昨日一緒に帰ろうと誘いました……」


「そっかぁ……。麗華から一緒に帰ろうって誘ったのかぁ……ってはぁ!?」


 いやいやいや、本屋で偶然会ったって言っていたじゃん! ねぇ!? 帰るところから一緒だったのかよ! よく目撃者が存在しなかったね!


「……一昨日の出来事を説明してもらってもいいかな?」


「……はい。一昨日、放課後話をしたいと思って、帰る準備を済ませてから日裏さんを探したらすでに教室を出た後で、急いで追っていったのです」


 ふむ、話をしたいと思ったという時点で疑問を感じるのは私だけなんですかね? あっ、今私しかいなかったよ。てへぺろっ! じゃねぇよ!


「そしたらすでに帰ろうとしていたので一緒に帰ろうと言ったら本屋に行くから無理とは言われたのですが、どうしてもと思って本屋についていってしまいました……」


 麗華……日裏くんが断ったっていう事実自体正直驚きなんだけれど、多分断ったのは厄介ごとを感じたからよ……。


 はぁ……日裏くんは完全に被害者じゃないの。日裏くんには悪いことをしたし、まさか麗華にこんな一面があっただなんて……。

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