第66話


 建物の外

 屋根も何もないが、座って休めるように安っぽいベンチがおいてある。

 A国の隊商の一人が死んだとき、諸々の処置をしたこの病院に感謝のしるしとして寄付されたものだ。

 

 そこに座る二人。

 口を開くドーリー。


「なんだかね」


 それにこたえるV


「なんですか」

「いや、今回の話さ。偉い人間が顔付き合わせて話し合えば、それで解決する程度の話だったわけだろ」

「まぁ、そうですね」


 実際解決の道筋は立ってる。


「ここの連中にしたってその問題があると。ってほどの大ごとじゃなくて、なんだろうな。目障りだが大問題じゃない」

「ハエみたいな物ですか。顔の周りを飛び回られるといやだがそれで死ぬ事はない」

「そうだな。そういう問題だったわけだよ」


 ドーリーはもう少し考え、口を開く。


「その鬱陶しいハエを払おう、ってこんな辺境の地に冒険者呼んできて、それで、人が一人しんでさ、みんな大ごとになったってあわてふためいて。その結果、問題は解決したわけだろ?」

「そうですね」

「でもさ、人が、そこで眠る男、老婆にとって愛おしい孫がさ、死ぬ必要あったか?最初からお役人が顔付き合わせて話し合ってれば、連中があのダンジョンに行くこともなく、死ぬこともなかったんじゃないか?そう思えてさ」

「死ぬ必要がある人間なんていませんよ」


 Vは答える。


「冒険者はなんだなんだかんだと死ぬ商売です。それを選んだ自分の行いの結果ってことですよ」

「そういうもんかね」

「そうですよ。だから次は私たちがあのテーブルに乗るかもしれない」


 Vも少し考え答えた。


「ある日突然、自分の目の前に死神が現れのがいつかは、誰も知りませんが最後はみんな死ぬものですからね。死ぬ必要がある、という意味ではみんなそうです。それに物語や意味って幻想を見出すのは、生きてる私たちじゃありませんか」


 そして沈黙。



「どうも歳を取ると、家族の話に弱くなるのかな」

「彼は冒険者の中では上等な方ですよ」


 そして二人は黙った。

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