第65話
3日後 早朝。
帝国の辺境にあるこの町の医院には、田舎町には似つかわしくない死体安置専用の建物がある。
A国や帝国からの客が多いのだ。彼らは異国の地で死ぬこともある。火葬にしろ土葬にしろ、祖国まで遺体を持って帰るにしろ、その手続きを終えるまで遺体を安置する場所が求められる。
それに身元不明遺体もある。今回のような不審死もある。
だから行政の求めに応じてこの建物を増築した。多少の補助金は出たが、ほとんどは医師の自腹だ。
「この度は」
その部屋で前で医者は老婆、それに付き添う初老の男にそう挨拶した。
その後ろにはVとドーリー。残りの二人は荷物をまとめている。
「我儘を言ってしまい、申し訳ありません」
「ご事情は、お伺いしました。貴族様の我儘は通りませんが、ご家族という事であれば多少の法は道を開けます」
女帝はそれについてはもう何も言わない。
「しかし、その、遺体の状態がお見せするには通常とは異なってまして」
「私がついているよ」
辺境公はそう答えた。
事情を知り、付き添いを申し出た。
いい人たちだ。
「かしこまりました。ではこちらへ」
そう言って医者は扉を開け、4人を部屋に。
部屋の中央に据えられたテーブル。
本来ここでは死体に処置を施したり、死体を検めて身元を探ったりする。
そこに据えられていたのは死体。シーツで体を隠しているが、顔は見える。
緑色に変色した顔。しかし腐敗は全く進んでいない。
医者とVが知識を駆使して顔を整えたので、生きていた時を思い出せる顔になっている。
「この顔は」
「あの地域特有の植物の影響です。こればかりはどうにもならなくて。申し訳ございません」
「いえ、ありがとうございます」
そして涙。
それを見た辺境公は手ぶりでほかの三人に示す。
「私たちは部屋の外で待ってます。時間になったらお呼びしますので」
「私も、書類を作りますので奥の部屋にいます。何かあればお呼びください」
そして二人の貴族と遺体だけ残される。
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